ボンネットの中から「ニャアニャア」!? 奥の方に逃げ込んだ子猫、消防署員にレスキューされて大切な家族に
■ボンネットの中に子猫が!
ルカちゃん(6歳・オス)は、車のボンネットの中にいたところを保護された。
2015年8月3日、東京都に住む桜井さんは、自宅の周辺でニャアニャアと鳴く子猫の鳴き声に気がついた。気になってあたりを探した時、夫が子猫を見つけたが、逃げてしまってどこにいるのか分からなかった。その後、鳴き声が聞こえなくなったので、母猫のところに帰れたと思っていたという。
しかしその3日後、坂崎さんがジムに向かって車を走らせていると、再びニャアニャア鳴く子猫の声が聞こえてきた。まさかとは思ったが、後部座席を見ても何もない。しかし、再び車を走らせるとにゃあにゃあと子猫の声がした。
「車の速さで猫が追いかけて来るわけがないと思い、車を停めました。するとボンネットから鳴き声が聞こえきたんです。もしかしたらタービン等に巻き込まれて血だらけになっているかもしれないと思い、恐る恐るボンネットを開けると子猫がいました。でも、私の顔を見た途端、奥に入り込んでしまったんです」
■消防署員が来てくれたが・・・
「そこから出ておいで~」と手を伸ばしたり、近くにあった商店で買ったスルメイカで釣ろうとしてみたりして保護しようとしたが、だめだった。車の奥に入ったままで出てこないのでディーラーに助けを求めて電話をしたら、お盆前のため休業。途方に暮れた桜井さんは、119番に電話をした。消防に電話していいのかどうか分からなかったが、「今から向かいます!」という返事。
しばらく待っていると、とても大きな消防車で大きな体の署員5人がかけつけてくれた。
「『野良ちゃ~ん出ておいで~』と猫なで声ならぬ、消防なで声(笑)で呼ぶものの、事態は変わらず、最後にボンネットの中の外せる部品を外してくれて、何とか手が入る状態になったので手を伸ばしたら車の下からルカが飛び出したんです。すぐに、そこにいた署員の方がつかまえてくれました」
消防署員は、「私たちはこの猫を連れて行けるけど、保護センターに連れて行くので命の保証はありません。暑くて水が飲みたいだろうから、水をあげてから野良猫に返してもいい」と言った。桜井さんは子猫を連れて帰らない理由が見つからず、猫を預かった。
帰宅後、牛乳を与えたがまったく飲まず、とにかく全身状態を確認するために動物病院に連れて行った。
「私はそれまで猫や犬を飼ったことがありませんでした。でも、思いがけず飛び込んできた子猫の命を保護センターに託すことはできないと思っていました。また、子供たちが我が家に迎えたいと強く願っていたので飼うことにしたんです」
■ルカちゃん中心の毎日
ルカちゃんは警戒心が強いが、目がくりくりした可愛い猫だった。体重は500gしかなく、トイレットペーパーの芯に入れるくらいだったという。
それでも順調に成長していたが、4年後の2019年12月、ルカちゃんは突然全くごはんを食べなくなり、ずっとうずくまっていた。寒いのかと思ったが、あまりにもごはんを食べないのでかかりつけの病院に連れて行ったが、血液検査をしても異常無し。皮下点滴を受けて帰ったものの翌日も全くごはんを食べなかった。4日経っても状態が変わらなかったので、別の動物病院にルカちゃんを連れて行くと、胆管炎になっていた。
「獣医師が『口から食べないと生きる希望を失う』と、ルカの口の脇から高カロリーの栄養食を塗り込んで…。それをルカはゴクッと飲み込んで食べてくれました。涙が止まりませんでした」
その後、高カロリーの栄養食と治療を続け、ルカちゃんは回復したという。
桜井家は、すっかりルカちゃん中心の生活を送っている。ルカちゃんが心地良く過ごせるように、冬は暖房、夏は冷房をつけて室温管理。愛玩動物飼養管理士の資格も取り、ルカちゃんが長生きできるように心を砕いている。
「今は近くの公園の地域猫達にごはんをあげている人に、ごはんを持って行くお手伝いをしています。ゆくゆくは不幸な猫が一匹でもいなくなるように、保護猫カフェを開けたらいいなと思っています」
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)