愛犬の死に打ちひしがれていた女性が出会った運命の子猫 超“塩対応”も「あの子が待つ家に帰るのが、幸せ」
■もう生き物を飼うのはあきらめよう
しおちゃん(1歳・メス)は、兵庫県西宮市内に母猫や兄弟4匹でいたのだが、ボランティアが捕獲機をしかけて保護した。生後2カ月くらいだった。いったん先住猫がいる家庭の里子になったが1か月ほどで返され、その後人に慣れることはなかったという。
兵庫県に住む大淵さんは、子供の頃からずっと犬か猫と育ち、結婚してからもいつも動物を飼っていた。しかし、2020年2月、溺愛していた犬が亡くなり、ひといペットロスになっていた。
「自分の年齢を考えると、もう何か生き物を飼うのはあきらめようと思っていました。でも、翌年のお正月、家族が集まると、家中に貼られた亡き犬の写真と納骨できないままでいる遺骨を見た長男の嫁が、『お母さん、どうぞ犬か猫かお好きな生き物を飼って下さい。お母さんがもし飼えなくなったら私が飼います』と言ってくれたんです」
大淵さんは、毎日一人暮らしの家に帰るたびに全く動かない空気に息苦しさを感じていたので、その提案を受け入れることにした。
■ひと目見て、「この子だ!」
大淵さんはラジオのパーソナリティをしているのだが、番組のゲストに来てもらった保護猫ボランティアの方が開いている譲渡会の取材に行った時、しおちゃんに出会った。
「仕事で行ったのに、ひと目でこの子だ!と思いました」
ボランティアは、「この子は抱っこできませんよ」、「猫エイズキャリアです」と言ったが、大淵さんは「じゃあ私が!」と譲らなかった。
前のわんこに思い入れすぎたため、少し距離のある子の方がいいかもという気持ちもあったという。
■初日は大暴れ
譲渡会の2週間後、ボランティアがしおちゃんを連れてきてくれた。まずケージの中で1週間ほど様子を見るようにと言われたので、その日は就寝したが、夜中3時頃「ミャーミャーミャー」と悲しげな声がした。1月の末のことだったので、寒いのかと思い暖房を入れ、ケージと扉を開け撫でようとしたらいきなり脱出!!しおちゃんは部屋中を飛び回り棚のものを全部落として大暴れした。
「そのうち静かになったので私は寝たんですが、朝になると姿が見えず、2~3時間してからやっと壁と棚のあいだに挟まっているのを見つけて救出しました。大騒ぎの1日目でした」
■塩対応のしおちゃん
しおちゃんは、ボランティアさんが言われた通り、触ろうとすると逃げた。話しかけると目をそらす。そんな日が何カ月も続き、いまも変わらない。最初はソルティドッグという名前が候補にあがっていたが、すっかり塩対応のしおちゃんという名前が定着した。
しおちゃんはビビりなのに気が強い。一度嫌な思いをすると、二度と同じことはしないし、させない。
「プライドが高くて、本当は甘えたいのに、どうしたらいいのか分からないんじゃないかと思います。一番嬉しかったのは、うちに来て1カ月ぐらいの時、唯一触らせてくれるソファの横でなでていたら、初めて小さく『ゴロゴロ』言ってくれたことです」
大淵さんは、仕事が終わって帰る時、「あ、しおちゃんが待っている!」と思うと、「めちゃ幸せ」な気持ちになるという。距離をとって一緒に暮らそうと思って受け入れた子なのに、また溺愛しはじめている。
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)