「つらい思いをした分、快適に過ごして」ブリーダーに遺棄された兄弟猫 ずっとのお家は「猫仕様の注文住宅」

ブリーダーの夜逃げは、残念なことに少なくありません。大阪府の謙信くんと信玄くんもケージの中に入れられたまま遺棄されました。暗くて狭くて寂しくて、空腹で…。声の限り叫んでいたそうです。ストレスと病気で毛は抜け落ちました。

そこに救いの手を差し伸べたのが、大阪市淀川区十三本町にある保護猫カフェ「ねこの木」の店長、長谷川さん。謙信くんと信玄くんは、「ねこの木」でずっとの家を探すことになりました。

しかし、信玄くんは猫も人間も大嫌い。猫がそばを通っただけで「シャー!」と言い、パンチをくらわせるような子。加えて目つきも悪い。一方、お兄ちゃんの謙信くんは社交的。お客さんが来るとお膝にちょこんと乗って、「ボクって可愛いでしょ」アピールです。

この謙信くんの「可愛いでしょ」アピールにメロメロになった女性がいます。大阪府の女性Mさんです。初めて訪れた「ねこの木」で謙信くんにお膝へ乗ってもらい、ゴロゴロスリスリしてもらいました。のかせようとしても、ずっとお膝にいてくれるのです。

「この子、エントリーします!」

すぐ長谷川さんにお願いをしました。しかし、ねこの木の決まりで譲渡には、3回はお店に通ってもらい、その後に面談が必要。それならばと、Mさんは次の週もその次の週もねこの木を訪れ、謙信くんとの逢瀬を重ねます。何度訪れても、お出迎えをしてくれお膝に乗ってくれる謙信くんに運命を感じていました。

そのことを長谷川さんにも話します。すると、実は兄弟で引き取ってもらえると嬉しいと聞かされました。保護した時から、2匹一緒にと考えていたのだそう。お兄ちゃんだけ引き取られると、弟の信玄くんのお世話をする猫がいなくなってしまう。この時、レスキューされた際の写真も見せてもらいました。酷い状態でした。

即決できないMさんは帰宅し、家族会議を開きます。謙信くんと信玄くんの現在、過去、この子たちの未来をどうすれば良いのか。すると、16歳の次男が言ったのです。

「兄弟で引き取ってあげるのがええやん!」

仲の良い2匹を引き離すなんてことはできないと力説します。普段、口数が少なくおとなしい次男がここまで言うならばと、Mさんの夫も一緒に引き取る方向で心が動かされました。でも、引き取るなら家が建ってからということになりました。

そう、M家は家を建てる予定なのです。最初は建売を購入する予定でしたが、謙信くんと信玄くんを引き取ると決まってから注文住宅に変更。猫仕様です。つらい思いをした分、快適に過ごして欲しいというM家の人たちの思いが詰まっています。

家を建てていましたから、引き取るまでの時間は少しかかりました。11月に出会って、1月にお迎えです。その間、Mさんは忘れられないように、何度も何度も謙信くんと信玄くんに会いに行きました。3回目で謙信くんから信玄くんを紹介された時は、本当に嬉しかったんですって。

いよいよ家にお迎えです。信玄くんは案の定、ケージの中で引きこもり。ご飯も食べません。その横で、謙信くんが「美味しいよ」と言っているかのようにご飯を食べる。それを見て信玄くんが、恐る恐るご飯を食べ始めるという感じ。この様子を見て、M家の人たちは2匹一緒に引き取って良かったと心から思ったのだそう。

広い家の中、謙信くんと信玄くんは自由に行き来しています。暗くて狭いケージに閉じ込められていたなんて嘘のよう。それもこれも、Mさんが引き取ってくれたから。

感謝の気持ちを2匹は、サイレントニャーでMさんに伝えます。声を出さずに「ニャー」と言う、子猫が母猫にする愛情表現です。大声は散々上げてきた2匹の、心からの感謝の言葉。

「ありがとう」

謙信くんと信玄くん、2匹の本当の猫生は今始まったばかりです。

(まいどなニュース特約・ふじかわ 陽子)

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