「東京五輪」中国や韓国ではどう報道されているか 盛り上がりの差に両国の「立場の違い」反映

東京五輪が始まり、日本人メダリストが毎日のように誕生している。その盛り上がりもあってか、五輪前の反五輪の声を伝えるメディア報道はかなり少なくなったようだ。今後のコロナ感染拡大の度合いによっては状況が変わる可能性もあるが、パラリンピックの閉会式までこの雰囲気は続くのかもしれない。一方で、日本の隣国・中国と韓国は、東京五輪をどう観ているのだろうか。どちらの国も日本と同じように、開催前の五輪支持率は決して高くなかった。東京を中心とする感染拡大にも懸念の声が根強く「開催されなくてもいい」という国民の声も少なくなかった。ただ、開幕後の報道のされ方は、両国の「立場の違い」を反映して、異なるものになってきているようだ。

中国では中国人選手が出場する競技を中心に、メディアでは毎日のように報道されている。というのも、基本的には中国は東京五輪を支持する立場であるからだ。中国は約半年後の2022年2月に北京冬季五輪を主催するため、五輪への関心が徐々に高まってきている。最近は欧米諸国がウイグル人権問題を理由にボイコットする動きを見せるなか、中国としては「東京五輪熱」を示すことでそのまま北京に繋げたいはずだ。まさに東京五輪を北京五輪の「前哨戦」と捉えているような形だ。

仮に、新型コロナウイルスの感染拡大によって東京五輪が中止ということになれば、安全な大会が開催できるのかとの懸念は北京五輪にも及ぶ可能性があった。すでに北京五輪の会場はほぼ完成しており、中国としては「絶対に東京五輪を開催」してもらって、影響を避けたいと考えていたはずだ。ただ、今回の東京五輪では、中国の指定席であった卓球、男女混合の金メダルを日本が取るなど、競技結果に対してはショックの声が聞かれた。

一方、韓国は五輪を今後ホストする立場でないこともあるのか、中国ほど前向きに報道はしていない。韓国選手が出場する競技を淡々と報道する程度だ。韓国国民も関心も決して高いとは言えず、五輪熱も中国と比較すれば低いといえる。

また、韓国メディアを巡っては、大会の開会式の中継で、ウクライナ選手団が入場する際にチェルノブイリ原発の写真を画面上に流したり、ハイチ選手団が入場する際は最近同国で発生した大統領暗殺に関するテロップを付けたりして紹介したため、問題となった。日本選手が多くのメダルを取っていることや、サッカー男子で日本が3連勝したニュースなども報道されているが、自国の選手の結果がその後の注目度に影響を与えそうな感じだ。ちなみに、韓国がこれまで多くのメダルを取ってきた国技テコンドーでは韓国選手の不振が続いている。

なお、東京五輪を巡っては、お台場近くの東京湾を泳いでいたトライアスロンの選手がゴール後に嘔吐する姿が目撃されたり、大量のお弁当が破棄されたことを五輪委員会が認めたりなど、競技が行われる環境や大会の運営面について内外から批判の声が上がっている。今後は中国や韓国がこういった問題を集中的に取り上げることも予想される。

◆治安太郎(ちあん・たろう) 国際情勢専門家。各国の政治や経済、社会事情に詳しい。各国の防衛、治安当局者と強いパイプを持ち、日々情報交換や情報共有を行い、対外発信として執筆活動を行う。

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