多頭飼育崩壊の現場からレスキューされた人見知りの子猫 兄弟と離れて鳴き続ける姿に、涙があふれた
くらまちゃん(1歳・オス)は、2020年7月、岐阜県の多頭飼育崩壊の現場から、兄弟と一緒にボランティアにレスキューされた。飼育環境が悪かったため真菌に感染していた。
岐阜県に住む山村さんは、もともと動物が大好きで、保護猫や保護犬のことを知っていた。猫を飼うと決めた時、できることならペットショップではなく譲渡会で探したいと思っていたが、11月22日、たまたま行った譲渡会でくらまちゃんを出会ったという。
「三兄弟でひとつのケージにいましたが、2匹の兄弟とは違い、くらまはひとりじっとハンモックに隠れていました。人見知りなんだろうなぁ、なついてくれるかな?と思いましたが、保護団体の方が、慣れると大丈夫ですしとっても良い子ですよと教えて下さったんです」
譲渡会場で、不安そうだが優しそうな目で山村さんをじっと見つめてきたくらまちゃんに山村さんはひとめぼれした。その表情は今でもはっきり覚えているという。
■夜通し鳴く子猫
後日、山村さんは預かりボランティアの家に行き、くらまちゃんと再会して、「やっぱりこの子だ」と改めて確信した。
くらまちゃんという名前は保護主がつけてものだった。「鞍馬の火祭」という秋の季語にちなんでいる。
山村さんが新居に引っ越しをした後、12月19日からトライアルが始まったが、案の定くらまちゃんは人見知りをした。兄弟と離れて初めてひとりぼっちになったということもあり、ケージの中でじっと家族の様子を伺い、夜になるとずっと鳴いていた。山村さんは兄弟と引き離した罪悪感も手伝って涙があふれてきたという。
「トイレもせず、ごはんもおやつも食べませんでした。でも、翌日には食べるようになり、排泄もして、おもちゃで遊ぶようになり、本当に嬉しかったのを覚えています。2日目までは夜通し鳴いていましたが、それも収まりました」
■くらまのいない生活は考えられない
くらまちゃんは、おっとりマイペースで温厚な性格。いたずらもしないお利口さんだという。よく喋る子で、歩きながらいつも喋っている。
「あんなに人見知りしていたのに、眠たくなるとベタベタすりすりしてくれるんです。本当に可愛いです」
外を眺めたり、かくれんぼや追いかけっこをしたり、おもちゃで遊んだりすることが大好き。追いかけっこの最中、角で待ち構えている山村さんをわざとびっくりさせることもあるという。
「くらまのいない生活は考えられない」という山村さん。夫婦ともにどちらかというと犬派だったが、いまでは猫にメロメロ。初めて猫を飼育したので分からないことが多く最初は戸惑ったが、とにかく可愛くて仕方がないのだという。
「私ひとりが里親になっても何も変わらないかもしれません。でも、少しでも多くの方に、現状を知っていただき、罪のない命を消さない選択について考えてもらえるといいなと思います。動物達の殺処分がなくなることを心から願っています」
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)