指導していた教師まで「本当はおかしいと思っている」 誰も幸せにしない「ブラック校則」は見直せないの?
最近、テレビやインターネットニュースで取り上げられているブラック校則。今年、日本各地の市議会でこのブラック校則について討議がされています。それだけいま、社会問題となっているブラック校則ですが、この校則は一体誰のためのものなのでしょうか?ブラック校則を守ることを強いられる生徒と守るように指導する教師、どちらもこのブラック校則に悩んでいる現状があるのです。
今回取材を受けてくれたのは関東の高校に通うAさん(高校生)とその母親Kさん(40代)です。Aさんは高校入学したばかりの頃、ブラック校則に対して教師に訴えたことで反省文を書かされそうになったことも赤裸々に話してくれました。
■髪と瞳の色で呼び出し
Aさんは都内の私立高校生です。生まれつき髪や瞳の色が茶色です。小さな頃からよく「茶色」であることを指摘されてきたそうです。中学生のとき教師に髪を染めたのではないかと疑われたこともありました。
Aさんは高校に入学した直後、教師から髪と瞳の色について呼び出しされました。教師はAさんに対して髪を黒く染めることとカラーコンタクトを外すようにと強い口調で指導してきたのです。Aさんは生まれつきだと話しましたが、教師は嘘をつくなら親を呼び出すと言い、母親のKさんが学校に行くまでAさんは帰宅することすら許されませんでした。
■地毛証明書と反省文
Kさんが学校に到着するとAさんは職員室におり、教師から「髪と瞳の色が黒色ではない」ことを理由に呼び出したと説明がありました。Kさんは生まれつき茶色であることを説明しましたが、地毛証明書の提出を求められました。また瞳の色についてはコンタクトが入っていないか確認させてもらうとのことでした。
AさんとKさんが地毛証明書の提出は義務なのかと聞くと、教師は「校則では、髪は黒と決まっているので。黒に染めなくてもいいとしているんだから紙1枚くらい出すのは面倒ではないでしょう」と言いました。
また教師はコンタクトが入っているかどうか確かめると言い、突然Aさんのまぶたを指でぐいっと開き確認をしたのです。このときAさんは、とっさに教師の手を振り払いました。
すると教師は暴力的な行為をしたといい、反省文を書くよう求めてきました。
■教師としての立場
こうした一連の指導方法にAさんは反感を覚え、またKさんも行き過ぎているように感じました。確かにAさんが教師の手を振り払った行動に対して、教師が苛立ちを感じるのはわからなくもありません。
KさんはAさんにどうしたいか聞くと「自分は髪も目も何もしてないのに、話すら聞いてくれなかった。絶対に黒にも染めないし、地毛証明書も反省文も書かない」と言いました。
するとAさんに強い口調で指導していたはずの教師が突然、表情を曇らせこう言ったのです。「私もおかしな校則だと思っています。頭髪検査や靴下の色、革靴での登校。携帯を学校で触れば1週間の携帯没収。どう見ても意味のわからないものが多くあります。しかし、私たちもそう指導するよう指導されているんです…」
■ブラック校則と認識しながらもそのまま…
こうした状況を見ていた教頭先生が話し合いに入ってきました。すると教頭先生は「今回の件はこれで終わりにしましょう。地毛証明書も反省文も提出しなくて大丈夫です。ただし教師がいま言った言葉は誰にも言わないでください」と言いました。教頭もいまの時代にそぐわない校則であることは認識しているが、校則を緩めてしまうと校風が荒れると思っていると話しました。
生徒や保護者はもちろん、指導する側の教師もおかしいと感じているブラック校則。
校則を守るように指導する側の教師も葛藤を抱きながら指導しているという現状があるとKさんは話してくれました。Aさんは嫌な思いはしたものの、教師が葛藤を抱きながら指導しているという場面を目の当たりにして大人の世界を垣間見たようです。
■ブラック校則は誰のためにあるのでしょうか?
学校に通う生徒・指導する側がおかしいと感じるブラック校則を改めるのは、誰の役目なのでしょうか。
声をあげる学生の声を無視して、そのまま突き進むことは時代を逆行しているように感じるのは筆者だけでしょうか。
多様性や人権・個性を重んじる時代に社会問題化しているブラック校則をそのままにせず、いま一度見直す学校が増えてくれることを望むばかりです。
(まいどなニュース特約・長岡 杏果)