■不妊手術しないで増えた猫

ニブルスくん（1歳・オス）は、千葉県のとある家の庭でごはんをもらって暮らしていた。えさだけ与えて親猫の不妊手術をしていなかったようで、子猫だけでも5、6匹いたという。なかには成猫になっている猫もいた。このままでは猫がどんどん増えてしまうということで、2020年5月、ボランティアが保護したという。当時、ニブルスくんは生後2カ月半くらいだった。

■同棲カップルには子猫は譲渡できない

東京都に住む尾崎さんは、幼い頃から猫が好きで、いずれ猫を飼いたいと思っていた。

いまの夫と同棲を始めた時に子猫を迎えようということになり、譲渡サイトをチェックしたが、子猫の場合、同棲カップルはNGとか共働きはNGとか譲渡条件が厳しく、なかなか希望の条件に合う子を見つけられなかった。そのため、縁あってブリーダーからブリティッシュショートヘアのミルカちゃんを迎えたという。

その時、夫が「結婚してもし２匹目を迎えるなら、今より譲渡条件をクリアできるようになる。そのこそ保護猫にしよう」と言い、いずれ保護猫を迎えたいと思っていたそうだ。

■幸せな猫が増えてほしい

尾崎さんは、ミルカちゃんを飼い始めて2年後くらいに、友人の家の庭に親猫のいない子猫が2匹住み着いたという相談を受け、夫と一緒に保護しに行った。ひとまず家で預かって里親を探し、無事2匹とも知り合いの家に貰われていった。

「その時はまだ2匹目を飼おうと思っていなかったので里親探しに必死でした。でも、無事に引き渡した後、改めて1匹でも幸せな猫が増えてほしいと感じて、ならば2匹目を迎えようということになり、保護猫サイトでニブルスと出会いました」

■顔が傷だらけの子猫

尾崎さんは、保護猫サイトに掲載されていたニブルスくんの写真を見て、「なんでこんなに顔が傷だらけなんだろう」と思った。子猫の場合すぐに応募者が殺到するが、ニブルスくんには3日間くらい誰も応募しなかった。

「なんだか気になっていました。顔は傷だらけで、紹介文には大きな声で鳴きますと書いてあったんです。夫と、『猫が鳴くのは自然なことだし、問い合わせてみよう』ということになりました」

■甘えん坊、先住猫は「ウザ～」

2020年7月14日、預かりさんの家で尾崎さん夫妻はニブルスくんとお見合いをした。

同じ月齢くらいの子猫よりも、大人の猫と遊びたがる姿を見て、「ミルカにもうまく甘えてくれるのでは」と思った。気になっていた顔の傷は、ケージから出たくて顔をケージに押し付けた時にできたものだと聞いて、「元気で何より！」と思ったのもニブルスくんに決めた理由のひとつなのだという。

家には預かりさんが連れてきてくれた。ニブルスくんは最初から堂々としていて、すぐに甘えてきた。

「本当にベッタリで、眠くなると私の顔のまわりをミャーミャーいいながら、おっぱいを探すようにぺろぺろしていました。ミルカにシャーされてもお構いなしで、今もそれは変わりません(笑)」

ミルカちゃんはおっとりしていてマイペースな性格なので、ニブルスくんからしつこく遊びに誘われて、「ウザ～」と思っているようだという。

猫にしては鼻先が長く、細くて手足や尻尾も長く、色もグレーで、動き回る姿がネズミに似ていたことから、トムとジェリーに出てくるネズミの赤ちゃんのキャラクター「ニブルス」から名前をもらった。

「やんちゃで食欲旺盛なところもそっくりなんです(笑)」

■野良出身はたくましい？

トライアルを経て、2020年7月24日、ニブルスくんは正式に家族になった。

とにかく甘えん坊でやんちゃ。好きなことは食べることとおもちゃで激しく遊ぶこと。何個おもちゃを壊されたか分からないそうだ。

「まだ家に来てそんなにたたない頃、帰宅すると猫のおやつ入れがひっくり返っていて、全て食い散らかされていました。ミルカはそういったいらずらをしたことがなかったので、改めて野良出身のたくましさを感じました」

夫婦の会話の中心は猫になり、家族と喧嘩をしても猫がピリついた空気を溶かしてくれるので、早く仲直りするようになった。泊まりがけで旅行に行くのが好きだったが、猫のいない時間に耐えられず、良くも悪くも出かけることが減ったという。

（まいどなニュース特約・渡辺 陽）