道路沿いの歩道で助けを求めていた子猫を高校生が保護 学校には遅刻したが、新しい家族が増えてにぎやかな毎日に

■道路沿いの歩道にいた子猫

麦ちゃん(生後2カ月・オス)は、2021年6月22日、徳島市内の国道沿いで保護された。

近くに住む佐々木さんの高校生の長女は、朝、自転車で登校中、猫の鳴き声が聞こえたため一旦停止した。しかし、国道沿いで交通量が多いので、聞き間違えたのかと思い再び走りだそうとした。ところが今度ははっきりと猫の鳴き声が聞こえたため、あらためて周囲をよく見渡すと、車道ギリギリの歩道の電灯の下にキジトラの子猫が1匹うずくまっていた。車道のすぐそばなので危険だったことと、周囲に親猫らしき猫もいなかったため、保護して自宅に連れて帰った。

■飼い猫だが、みー助が怖い

学校に行ったと思っていた長女が、突然顔を真っ赤にして帰宅したので佐々木さんは驚いた。「この中に猫がいるの!」。長女のバッグを開けると、警戒して丸くなりながら、佐々木さんを凝視する子猫がいた。長女は「遅刻する!」と言い残し、詳しいいきさつはほとんど語らないまま再び家を飛び出した。佐々木さんはとりあえず子猫を病院へ連れて行くためにタオルでくるみ、洗面所の床に置いた。先住猫が子猫だった時に比べて、はっきりした顔立ちの美猫だった。

先住のみー助(3才・オス)が、物陰からぬるんと現れて、子猫を見るなり今までに聞いたこともないような声でホロホロと唸り始めた。長い尻尾をピンとまっすぐに立て、毛を逆立ててこちらを明らかに威嚇している。佐々木さんは、そんな姿のみー助を見たことがなかったので動揺した。

「みー助、怖くないから。こんなに小さいんだよ」と声をかけて近寄ると、みー助はシャーッ!!と口を開け、牙をむいた。

「私はその時、初めて『みー助もネコ科動物なんだな、祖先はライオンとかと同じ種族なんだよな』と感心すると同時に、怖いと思いました」

■意外と落ち着いていたチワワのチワ兄

そうこうしているうちに、朝の散歩から夫とチワワ(8歳・オス)が戻ってきた。何も知らない夫は子猫を見るなり「うわっ!」と仰天し、更にホロホロ唸るみー助にも驚いていた。

しかしチワワのチワ兄は、以前子猫だったみー助を迎え入れた経験があるせいか、うずくまりながらも力を振り絞って精一杯威嚇しようとする子猫のニオイをクンクンとかぎ始め、るんるんと尻尾を振っていた。

「チワ兄は、シャーシャーホロホロ威嚇するみー助にも『まあまあ落ち着けよ』とでも言うように鼻を近づけたんです。我が家で一番落ち着いているのはチワ兄だなと思いました」

■麦は踏んで強くなる

長女は子猫を保護した朝、もちろん学校に遅刻した。遅刻の理由が「猫の救護」ということで、職員室でもひとしきり話題になったという。長女が学校の先生に猫の名前は何がいいかと聞いたところ、現代国語の先生が、「麦は踏んで強くなる。麦がいいのではないか」と提案してくれたので、麦ちゃんと命名した。

麦ちゃんはとにかく積極的で甘え上手。嫌がられても怒られても先住のみー助に果敢にアタックして抱きつきにいく。なんでもみー助の真似をして、高いキャットタワーも一生懸命上り下りする。お昼寝する時もみー助と一緒だ。

■種族が違っても通じ合う

佐々木さんはこれまで、みー助とチワ兄ちゃんの2匹だけでも十分幸せだったが、麦ちゃんを迎えて、家の中がさらに賑やかになったという。

チワ兄ちゃんは、種族の違いなのかプライドなのか、麦ちゃんが家に慣れてきて縦横無尽に駆け回り、チワ兄ちゃんのハウスに侵入しようとすると、ものすごい勢いで小さな麦ちゃんを威嚇する。

佐々木さんは時々冷や冷やするが、そこは動物同士の世界、ぐっとこらえて危険でない限りは見守っている。すると、必ずどこからともなくみー助が現れて、ゆっくりとチワ兄の前に歩を進めて香箱座り。するとチワ兄も元いた場所へ、麦も別の場所で再び遊び始めるという。

「3匹のやりとりを見ていると本当に楽しくて、チワ兄は種族が違っても3匹の長兄には違いないし、末っ子だったおっとりみー助の成長も見ることができて、本当に麦を迎えてよかったなと思っています」

(まいどなニュース特約・渡辺 陽)

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