保護したのは飼い猫!?返したものの再び戻ってきた猫 最愛のお父さんの棺に入ろうとした
■可愛い4匹の子猫を連れた母猫
茶目子ちゃん(8歳・メス)は、野良猫が産んだ子猫だった。しかし、後日、母猫は野良ではないことが分かった。
神奈川県に住む中村さんは、庭に現れるようになった野良猫の子猫、うにちゃんを保護したが、うにちゃんには外の親友、くりちゃんがいた。中村さんは、うにちゃんを保護した後、くりちゃんのお腹が大きいことに気が付いた。
くりちゃんは警戒心が強く、攻撃的な一面もあり、もうだいぶお腹も大きかったので捕獲はせず、そのまま見守ることにしたという。
半年後、2013年9月に、くりちゃんが可愛い4匹の子猫を連れて、久しぶりに庭に現れた。子猫のうち1匹が茶目子ちゃんだった。
茶目子ちゃんたち兄弟は、その後も頻繁に遊びに来るようになり、なかでも茶目子ちゃんはなぜか中村さんのお父さんに懐いた。お父さんも美人の茶目子ちゃんにメロメロになり、お母さんに懇願して茶目子ちゃんをうちの子にすることにしたという。
■実は、飼い猫だった
家に入れるにあたり、初期医療を済ませようと病院に連れて行ったら、獣医師から「この子もう避妊手術してあるね」と衝撃の事実を告げられた。かなりの確率で飼い猫と考えられ、探している人がいるかもしれなかった。中村さんは慌てて近所で迷い猫などの情報が出ていないか確認した。
そして、一軒の民家の前で、茶目子ちゃんと一緒に遊びに来ていた兄弟猫を見つけたという。
中村さんは、「きっとこのお宅の子に違いない!」と思い、そこにいたおばあちゃんに声をかけた。
「案の定そちらのお宅で飼われていて、ちょうど行方を捜していたところだということが分かりました。事情を話すと、おばあちゃんが、『うちも4匹も生まれて困っていたから、可愛がって下さるならどうぞよろしくお願いします』と言って下さったので、生涯大切にしますと言って、茶目子を連れて帰ったんです」
■「猫泥棒!うちの猫を返せ」
ところが、翌日このお婆ちゃんの娘さんという方が現れ、「猫泥棒!うちの猫を返せ!」と怒鳴り込んできた。中村さんはびっくりしていきさつを説明したが全く意に介さない様子だった。
「それでは、またうちに遊びに来られても困りますので、せめて室内飼いにしていただけませんか?」とお願いしたが、「猫は自由に外に出すもんだ」と言って譲らない。全く話にならなかったが、中村さんはやむなく茶目子ちゃんを返すことにしたという。
しかし、その人が茶目子ちゃんを連れ帰ってからものの10分も経たないうちに、茶目子ちゃんはまた中村さん宅へ戻ってきてしまった。それでもその日はどんなに鳴かれても家には入れず、元の家に帰ることを祈るばかりだった。
茶目子ちゃんは結局元の家には戻らず、夜中になってもお父さんの部屋の外で鳴き続けた。そのうち雨が降ってきたが、茶目子ちゃんはお父さんの部屋のそばで窓を開けてくれるのをじっと待っていた。
中村さんと両親は、「もう入れてあげよう、これでは茶目子がかわいそうだ、文句があればまた言いに来るだろう」と話し、茶目子ちゃんをお父さんの部屋に入れた。それきりその近所の人は何も言いに来なかったという。
■独占欲が強く、嫉妬深い猫に
初めはむぎわら猫だったので「むぎ子」という名前で呼んでいたが、うちの子にするとなった時、「猫は母音しか聞き分けられない」という話を聞いたことを思い出し、先住猫と母音が同じだと聞き分けられないかもしれないと思い改名することにした。茶色かったことと、中村さんが大好きな漫画・藤原カムイの「茶目子」にちなんでいるという。
茶目子ちゃんの性格は「はっきり言って良くはない」と中村さんは笑う。
「独占欲が強く、嫉妬深い。他の子を可愛がったり遊んだりしていると必ず強引に入ってきて追い出してしまうんです。とにかく自分が一番じゃないと気が済みません。自分が可愛いことを知っていてあざとい。とにかく猫が嫌いで、自分を完全に人間だと思っています。正直人間だったら友達になれないタイプです」
人間に対してはとてもフレンドリーで甘え上手で可愛い茶目子ちゃん。中村家の接客係でもある。
「つくづく茶目子が猫で良かったなーと思う毎日です」
■大好きだったお父さんが亡くなって
その後、大好きだったお父さんが亡くなった。数日間、棺に入って自宅に居たが、茶目子ちゃんはたびたび棺の上に乗っては小窓からお父さんの顔をのぞき込んでいた。出棺の日の朝はずっと棺の上から離れず、お花を入れるために最後にふたを開けた時には、棺の中に一緒に入ろうとして、最後までお父さんのそばにいようとした。
「その姿がなんともいじらしく、父もさぞかし喜んで旅立ったことと思います」
引っ越しもして、猫の仲間も増えるなど色々なことを経験した茶目子ちゃん。もう8歳になるが、少し性格が変わってきたという。
「基本的な性格は変わりませんが、人間に甘やかされながら、猫ともうまく距離を取って暮らしてくれています」
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)