フードコートのゴミ箱の後ろで鳴いていた子猫 飼うつもりはなかったが、トライアルで「手放したくない!」
■ゴミ箱の後ろで鳴いていた子猫
ルーシーちゃん(1歳3カ月・メス)は、2020年6月、シンガポールのホーカーセンター(ローカルフードの屋台がたくさん集まった半屋外のフードコート)のゴミ箱の後ろで鳴いていたところを、通りかかった女性に保護された。周辺には親猫や他の兄弟はおらず、1匹だけで鳴いていたという。
親猫に見捨てられたのか、迷子になってしまったのか、もしくは人間に捨てられたのか、なぜそんなところに1匹だけいたのか理由は分からない。
保護主の女性は日頃から猫のボランティア活動をしていて、自身も保護猫を飼っていた。ルーシーちゃんも、最初は彼女が飼うつもりだったという。しかし、どうしても先住猫が受け入れてくれず、新しい家を探すことになった。
■とにかくトライアルしてみよう
責任を持ってお世話をしてくれそうな家を探しているうちに、保護主の友人だったKさんに声がかかった。
「実は、最初はお断りしようと思いました。我が家は駐在の身、駐在先でペットを飼おうとはまったく思っていなかったし、これから10年、20年という長い間、責任を持てるのか、何度も家族で話し合いました」
Kさんは保護した経緯を聞き、また、小さい子猫が先住猫に威嚇されてシュンとなる動画を見て、不憫でならなかった。
「考えに考え、まずは一緒に過ごしてみないとわからないということになり、まずトライアルをすることに決めました」
■家族に迎える運命の猫だった
2020年7月、トライアルが始まる日に、保護主がルーシーちゃんを家に連れてきてくれた。まだ月齢3カ月くらいの子猫だったせいか、すぐに家の中をクンクン嗅ぎまわり、物怖じもせず新しいおもちゃにじゃれたり、走り回ったりして遊んでいた。先住猫もいないので、特に問題なくあっという間に慣れてくれたという。
保護主がルーシーと名付けたのだが、「ルーシー」は「光」という意味で、素敵な名前だったので、そのままルーシーと呼ぶことにしたそうだ。
Kさんは、猫は静かに日向ぼっこしているイメージを抱いていたが、そのイメージはガラッと変わった。
「ルーシーは、とにかく激しく動き回る小さな猛獣でした。エネルギーを使い果たしたら、パタッとその辺で寝てしまう。私たち家族は、猫の可愛さにすっかり魅了され、手放したくなくなりました。今思えば、ルーシーを家族に迎える運命だったのだと思います」
■好奇心旺盛なおてんば娘
ルーシーちゃんは、ちょっとビビリだが、好奇心旺盛なおてんば娘。新しいものは真っ先ににおいを嗅がないと気が済まないし、エネルギッシュで遊ぶのが大好きなんだという。膝の上でじっとしていることはあまりない。
やんちゃ盛りの子猫時代は、人間の食事にも興味を示し、卵焼きをくわえて逃げようとしたこともある。その後、食事中はルーシーちゃんを別の部屋に移すことにした。最近は、1歳を過ぎてずいぶんおとなしくなったので、人間の食べ物を取ることはなくなったという。
■猫のために、たくさん遊んであげたい
ルーシーちゃんを迎えてKさんの生活はガラッと変わった。
「猫は見た目が可愛いので何をやっても許されるところがあると思いますが、我が家も例外ではありません。早朝に鳴いて起こされたり、気に入らないことがあって噛んできたり、気分屋でわがままでも、受け入れています(笑)」
今まではできるだけ物を増やさないよう心がけてきたが、猫が快適に過ごせることを第一に考え、爪研ぎやキャットタワー、猫トイレ、給水器などなど猫用のものがどんどん増えたという。
「よく、猫は犬より手がかからないと言われていますが、猫も立派に手がかかると思います。特にルーシーはアクティブなので、毎日狩りごっこを数回やってあげないとエネルギーがあり余って、おそらく鳴きすぎる、人を噛む、異物を食べるなどの問題行動を起こすと思います。たくさん遊んであげるよう心掛けています」
Kさんは、ただ可愛いだけじゃないこともしっかり考慮して、猫を迎え入れてほしいと言う。
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)