病気の飼い猫を輸血で救ったのは2年前に助けた猫だった 目の前で車にはねられた瀕死の子猫を母娘で保護

「危ない」-。

2019年11月、仕事を終えた愛知県在住のビッグママさんが家に帰る道中での出来事だった。車を運転中、思わず叫んでしまった。200メートル先に道路を横切る1匹の猫が見えた、同時に反対車線には走行中の車も。ひかれないで。そんな願いも届かず、猫は車にひかれてしまった。

ショッキングな光景を目の当たりにしたが、車を停車し「どうか無事でいて」と祈りながら近づくと、その猫はまだ子猫だった。頭から血を流しぐったりしていた。ビッグママさんは当時24歳で当日仕事が休みだった次女・かなたさんにすぐに電話をかけ「猫が…車に…」と声を絞り出した。普段から頼りになるというかなたさんは「わかった。今どこ?すぐに行く」と毛布を手に現場にかけつけた。

2人はケガをした子猫を毛布にくるんで、動物病院に駆け込んだ。脳震とうで目の動きはおかしく、けいれんもあった。一命はとりとめたが、左顔面損傷と診断され獣医師からは「事故直後の保護できてなかったら、出血多量でそのまま死んでいた可能性があった。タイミングがよかった」と言われた。

ただ、その日から母娘2人に壮絶な看病が待っていた。栄養失調で視覚も狭く、自分でご飯を食べられない。トイレの場所が認識できないのか、どこでも用を足す。食糞、おしっこをした後の砂や布を食べたりと、目が離せない状況が続いた。毛布にくるむと落ち着くようで、親子2人でできる限り、抱っこしたという。かなたさんは夜も一緒に子猫に寄り添って寝た。ビッグママさんはそんな光景を「娘が(子猫の)お母さんのように見えました」と振り返る。

7カ月が経ったころ、ようやく光明が見えてきた。食糞グセも治り、行動も落ち着いてきた。子猫を「とらまる」と名付けた。トラ柄で保護当時やせ細っていたため「丸々と太りますように」と願いをこめた。家には先住猫・犬がいた。とらまるを加えて4匹の保護猫と2匹の犬と大所帯となった。とらまるは、他の猫や犬とも対面。年長の猫からは毛繕いする方法も教えてもらい、いまでは自分の体以外にも他の猫の毛繕いもするようになった。

保護から1年5カ月後の今年4月、先住猫で同じトラ柄のちゃちゃ(7歳)が病気で重度の貧血に陥り、血液が必要となった。ちゃちゃ一番合う血液がとらまるのものと判明、とらまるの血液を輸血して、ちゃちゃの命はつながった。「結果的に事故に遭ったとらまるを助けたら、今度はそのとらまるがちゃちゃを助けてくれた」(ビッグママさん)。「善因善果」-。交通事故で命の危険もあったとらまるは輸血で仲間を助けるほどに回復、いまでは家の中を元気に走り回っているという。

(まいどなニュース・佐藤 利幸)

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