こんなに違う関東・関西の鉄道事情「有料特急のバラエティー」「車両の加速度」-“勝ち”はどっち?
時々、世間話で話題になるのが関東・関西の鉄道事情です。同じ日本でありながら「ここまで違うのか!」ということばかりで驚かれることも多いと思います。東西どちらが便利で優れているといえるでしょうか。いくつか興味深い事例をあげ、勝敗を考えてみましょう。
■有料特急のバラエティーの豊富さは関東、関西どっち?
関東、関西には数多くの私鉄があります。大手私鉄では特別料金が必要な有料特急列車を走らせています。関東大手私鉄ですと京成、西武、東武、小田急、関西大手私鉄では近鉄と南海が運行しています。
スピードで勝るのは最高時速160キロを出す京成「スカイライナー」でしょう。成田スカイアクセス線を経由し、京成上野~成田空港間を約45分で結んでいます。スタイリッシュなデザインのAE形電車(2代目)は京成のイメージをガラリと変えました。
「目立つ」という観点から考えると西武の「Laview(ラビュー)」は外せないでしょう。運転席の球面ガラスやゆったりとした黄色い座席は人気を博しています。従来、西武の特急列車は「レッドアロー」「ニューレッドアロー」が活躍し、イメージを一新したことでも話題になりました。
会社数でも列車のバラエティさでも負けそうな関西ですが、そこは民鉄最長の路線網を誇る近鉄が反撃に。観光特急「しまかぜ」や「青の交響曲(シンフォニー)」は同一会社の車両とは思えないほど、雰囲気は大違い。前者はリゾートへ向かう明るい雰囲気なのに対し、後者はシックな大人の雰囲気に仕上がっています。
また2020年デビューの名阪特急「ひのとり」もお忘れなく。南海では1994年デビューの空港特急「ラピート」の存在感は今でも抜群です。
会社数の観点から見ると関東の勝利に間違いありません。しかし、バラエティの豊かさから考えると、勝敗はなかなか難しい…というのが正直な感想です。
■短距離競争に勝つのは関東、関西どっち?
東京オリンピックでも見ごたえ十分であった陸上短距離。関東、関西の鉄道ではどのような結果になるのでしょうか。鉄道において陸上短距離にあたるのは加速度だと思います。
関西の代表選手は阪神本線の普通列車を担当する「ジェットカー」。昭和生まれ、5001形の加速度は4.5キロ毎時毎秒。つまり1秒ごとに時速4.5キロずつ上がるということです。
一方、関東ではもともと路面電車であった京王がエントリーしました。京王も阪神と負けず劣らず、駅数が多いことで知られています。主力車両、8000系の加速度は3.3キロ毎時毎秒です。
加速度・短距離走の勝負は関西に軍配が上がりそうです。平成生まれの「ジェットカー」は昭和生まれの5001形よりも加速度は劣りますが、それでも京王電車よりも上回ります。
関東の朝ラッシュ時の混雑率は180%~190%(2019年度)。あまりにも加速が良いと返って危険なのかもしれません。
◇ ◇
関東、関西の鉄道事情比較。「もっと知りたい!」という方は今月出版した拙著『勝ちはどっち? 関西の鉄道 関東の鉄道』がおすすめです。あらゆる観点から関東、関西の鉄道を比較しているため、「あっ」と驚く点が見つかることでしょう。ステイホームのお供に、関東・関西の鉄道デッドヒートをお楽しみください。
▽KAWADE夢文庫 K1171『関西の鉄道 関東の鉄道 勝ちはどっち?』
出版社:河出書房新社
定価:792円(本体720円)
(まいどなニュース特約・新田 浩之)