工場の壁の中に子猫が!壁を壊してレスキューされるも誰も連れて帰らず…「このまま一緒に暮らそうか」
■工場の壁の中に入ってしまった子猫
ムーちゃん(6歳・オス)は、2015年6月、埼玉県に住む浅利さんが勤めている会社の工場で保護された。工場の中に入ってきたのを現場の人が見つけて、捕まえようとしたが逃げて、壁の中に入ってしまったという。
外に出てくる様子はなく、男性従業員が壁に穴を開けて保護したそうだ。
保護したものの、誰も猫を飼うという人はいなかった。
「猫アレルギーだからだめとか、犬飼っているからだめとか、子供がいるから無理とか、なかなか行き先が決まらず、私も猫を2匹飼っていたので経済的に3匹は難しいと思ったのですが、ひとまず連れて帰りました」
■世話をしていたら情がわく
ムーちゃんは小さくて、凄く汚れていたが元気だった。ムーちゃんも怖がっていたが、先住猫たちも急に知らない子猫がやってきたので、どこか落ち着かない雰囲気だったという。
浅利さんは、ムーちゃんの里親さんを探すことにしたが、なかなか見つからなかった。一週間が経ち、なんとか保護施設を見つけて、里親を探してくれるというので一度預けた。
「でも、家でずっと見ていたら可愛くて、情がうつってしまったんです。家族と相談して、うちで飼うことにしました」
額に「M」の模様があったので、夫がムーちゃんと名付けた。
ムーちゃんは浅利さんにしか甘えない。浅利さんのことが大好きで、いつも一緒に寝るという。性格は怖がり。おやつを食べるのが大好きなのだという。
■ムーちゃん、家出する?
ムーちゃんは一度ベランダから庭に落ちたことがある。浅利さんは、夕方、ムーちゃんがいなくなったことに気づいた。庭を見に行くと姿が見えたが、抱っこしようとしたら逃げてしまったという。その後、キャリーバッグを持って家の周辺を夫と1時間ほど歩いて探した。
「首輪をつけていたので、鈴の音が近くで鳴っているのが聞こえて、すぐ近くにいることは分かりました。その後家の窓を開けて帰ってくるのを待っていたのですが、21時くらいに家の前の草むらにいるのを見つけました。その時、先住猫のジジが家の外にいて、ムーの近くに一緒に座っていたんです。まるでムーのことを安心させてくれているようでした」
ジジちゃんは、ムーちゃんがいなくなって浅利さんたちが悲しんでいる様子を見て、何か感じ取ったのかもしれない。
「ムー!」と名前を呼んだり、窓辺にえさを置いたりして刺激しないようにじっと待っていたところ、ムーちゃんは自ら家の中に入ってきた。何事もなかったように毛繕いをしたり、えさを食べたりして、何も気にしていないようだった。ケガもしておらず、浅利さんはホッとした。
猫たちと暮らして、浅利さんは毎日癒されているという。
「幸せをたくさんもらっています。ただ、ムーを保護施設に連れて行った時のショックは今でも鮮明に覚えています。そこには80匹もの猫がいたんです。そんなに多くの猫の里親さんが決まっていないことは、言葉に表せないほどの衝撃でした。1匹でも多く幸せになってもらいたいと思います」
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)