「たすけて」と見上げてくる、公園で出会った「クロネコ」 運んできたのは“家族の笑顔”だった

愛猫のわかぽんくんがリンパ腫になり、余命宣告…。千葉県のHさんは目の前が真っ暗になりました。しかし、獣医師の懸命の治療により一命を取り留め、余命宣告は撤回となります。ホッとしたのは良いものの、不安は残ります。わかぽんくんは体重が5キロあったのに、一時期はその半分ほどに。

不安をどう処理すれば良いか分からなくなったHさんは、一人ドライブに出かけました。今から3年前のことです。家からさほど離れていない公園ですが、気分転換になるかと思ったのです。

駐車場に車を停め、ぼーっと景色を眺めていると茂みの中から黒い毛玉のようなものが出てきました。よく見ると子猫です。足元にまとわりついてくるではありませんか。

「たすけて」

そう言っているかのように、こちらを見上げてきます。Hさんは心がぐらつきました。もしここでこの子を助けたら、わかぽんくんの容態がまた悪くなるかも知れない…。私じゃなくても構わないはず。こんなに可愛いのだから、他の誰かが助けてくれるだろう。

Hさんは子猫から離れ、再び景色を眺めます。それでも子猫はよちよちと歩いてHさんの元へ。そしてまた見上げるのです。「たすけて」と。他の誰も助ける様子はないため、思い切ってHさんは子猫を保護することにしました。

公園からそのまま動物病院へ車を走らせ、検査をしてもらいます。獣医師によると、生後2カ月で後ろ足が3カ所骨折していると。よちよち歩いているのは、子猫だからじゃなかったようです。そのまま入院となります。

入院させている間、Hさんはわかぽんくんとお話しました。

「お母さんは子猫を拾ったよ。この子をうちに連れてきても良いかしら?」

わかぽんくんは怒ることもなく、ふんふんと耳を傾けていました。

さあ、いよいよ退院です。体が小さいため手術はせず、自然治癒に任せるという形になった子猫。よくよく調べると生後1カ月半ぐらいだったようです。目はまだキトゥンブルーで可愛い盛り。名前は「トト」となりました。

H家に迎えられたトトちゃん、お父さんとわかぽんくんは初めましてです。最初はトトちゃん、寝室の中だけで生活をします。少しずつわかぽんくんと対面をし、わかぽんくんに教育的指導を受けながら仲良くなっていきました。

骨折が治ったら、トトちゃんは元気いっぱい!カーテンは当然登るもの、ソファーは当然爪を研ぐもの。今までわかぽんくんがやらなかったことをどんどんやって、お父さんもお母さんも新鮮な気持ちになりました。家具をボロボロにされても、ビンテージ加工を思えば趣があります。

トトちゃんは物を運ぶのも大好き。スリッパを運んだり、お気に入りのエビの蹴りぐるみを運んだり。お母さんがなくしたと思ったイヤリングも運んで、キャットタワーの中に入れていたこともあるんですよ。「クロネコ」だから、運ぶのが得意なのかも知れません。

心配されたわかぽんくんの病状悪化は、問題なし。むしろ元気になってきているんですよ。トトちゃんに刺激を受けて、再びよく遊ぶようにもなったんです。14歳の今でもご飯をいっぱい食べ、体重は4キロまで回復しました。

わかぽんくんの病気が発覚した時は、穏やかに余生を過ごしてもらうことばかり考えていたHさん。まさかトトちゃんが来ることで、こんなに賑やかで明るい家になるとは思ってもみませんでした。わかぽんくんも再び元気になるなんて、嬉しい誤算です。

物を運ぶのが得意なトトちゃん、彼女が最初に運んできたのは家族の「笑顔」のようです。

(まいどなニュース特約・ふじかわ 陽子)

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