多頭飼育崩壊で、トイレの砂を食べるほどの飢えをサバイバル…「強すぎる猫」がずっとのお家を探しています
先住猫との戦いに勝ってしまい、保護主さんに返されてしまった猫さんがいます。大阪府のチョロ松くん、推定3歳です。勝つはずですよ。チョロ松くんはボス猫だったんですから。といっても、野良猫ではありません。多頭飼育崩壊家庭のボス猫だったのです。
チョロ松くんが過ごしていた家は、15匹ほどの猫がいました。お世話はほとんどされておらず、近隣住民の苦情から多頭飼育が発覚します。個人で保護猫活動をしているAさんは、他の保護猫団体と一緒に飼育環境の是正を飼い主に何度もお願いしました。それだけでなくトイレの砂やご飯を差し入れたり、猫たちの避妊手術をしたり。
それなのに、飼い主は自分のやり方が正しいと聞き入れてくれません。ご飯だって、安いせいか缶詰のドッグフードを猫たちに与えていました。トイレは用意されておらず好きなところへ、家の中はボロボロです。
遂に行政が間に入り、猫たちは保護されることになりました。Aさんも立ち会ったのですが、悲惨な現場だったのだそう。猫の白骨死体がゴロゴロしていたといいます。多頭飼育崩壊現場ではよく見る光景です。
さて、保護された猫たち。初めて猫用のご飯と清潔なトイレを用意してもらいました。Aさんは当初、トイレにおから砂を準備していたんです。ところが、保護された猫たちがそれをガツガツ食べ始めた。よほど飢えていたのでしょう。慌てて鉱物系の砂に変えました。
猫たちのグループ分けにもAさんは一工夫。今まで2つのグループが家の中で出来ていたのですが、それを別々に。これにより猫同士のいさかいはほとんどなくなり、静かな猫たちに。美味しいご飯を毎日食べていると、どんどん穏やかな表情になっていきました。
穏やかな猫になると、里親さんが見つかり始めます。チョロ松くんと一緒に保護された猫たちは、どんどん新しい家の子になっていきました。チョロ松くんもそうなるはずでしたが、先述した通り先住猫に勝ってしまったため戻ってきてしまったのです。
食うか食われるかの戦いを続けてきたチョロ松くん。家の中でぬくぬく過ごしてきた猫に勝ってしまうのは当然です。里親さんは先住猫を優先したいと言うのも当然です。仕方がないとAさんは再び里親探しを始めました。
返されてしまったチョロ松くん、さすがにしばらくどんより…。食も細くなり、トイレの失敗も続きます。Aさんの姿を見ると、またどこかにやられると思うのでしょうか、飛んで逃げるようにもなったんです。今まで慰めてくれていた子分の猫たちは、みんな里親さんのところに行ってしまっています。Aさんは心配しました。この子は大丈夫だろうか…。
ところが、女の子の子猫が新たに保護されてくると、急に元気に。なんと、その女の子の前で毛づくろいを始めるようになったのです。今までそんなことしたことなかったのにね。女の子に好かれるには、強いだけじゃダメって気づいた?
元気になると、Aさんへの態度も変わります。Aさんが座っていると、お膝に乗ってきてちゅーるをねだるようになったんです。その姿の可愛いこと。ついAさんもちゅーるをあげてしまうんですよ。強さと愛らしさを兼ね備えた猫は、そうそういません。
といっても、チョロ松くんはボス猫。常に「構ってちゃん」ではありません。気が向いた時だけ人間と遊んでほしい。とても自由気ままです。そのせいかケージは大嫌い。でんぐり返りをするように扉をこじ開け、にゅるんと出てきてしまいます。すごい。
とても強く愛嬌があり賢いチョロ松くん、新しい家族を待っています。今度は先住猫がいないお家が良いかもしれません。保護主のAさんが里親さんに望むことは多くありません。
「チョロ松を飢えさせず大切にしてくれ、最期を看取ってくれる人であれば。一人暮らしの方でも大丈夫です」
常に戦いの中に身を置いてきたチョロ松くん。彼が安心できる家は必ずどこかにあるはずです。その家は、あなたの家かもしれません。
(まいどなニュース特約・ふじかわ 陽子)