暑い家には“日射遮蔽”が効く! 窓の外から日差しを防ぎ、ローコストで涼しい部屋に
コロナ禍が続くなか、リモートでの仕事が一般化し、家で過ごす時間は今なお長い。お盆も終わって盛夏から残暑に向かうこの時期、改めて“住まいの暑さをなんとかしたい”と考える人は少なくないだろう。最新のエアコンを買いそびれても諦めるのは早い。まだ手はある。そのひとつが、窓まわりにひと手間かける工夫だ。
■暑さは窓からやってくる 外側から日差しを防ぐ“外部遮蔽”がキモ
室内に暑さをもたらす太陽光と熱は70%以上が窓から入ってくる。窓に日が射すとエアコンをかけても暑いのはそのせいだ。言い換えればこの穴を上手にふさぐことで、ある程度の涼しさが手に入る。
二重ガラスや、特殊な膜を仕込んだLow-Eガラスに交換して性能を上げる“窓のエコリフォーム”と呼ばれるやり方もあるが、ここではもっと気軽かつローコストに、窓はいじらず熱い日差しそのものを効果的に遮る方法を紹介しよう。
日差しを遮る=日射遮蔽のツールといえばブラインドやカーテン、スダレなどいろいろ思いつくが、これらは窓をはさんで外側にあるか内側にあるかで2組に分かれる。
日射遮蔽で軍配があがるのは、スダレやオーニング、ヨシズ、グリーンカーテンといった“外側”組だ。
窓自体に日差しが来ないため(1)室内に日が入って壁や床が熱くならない(2)窓ガラスの温度が上がらない この2点が主な理由である。
直射日光が当たれば窓ガラスは蓄熱し、そこからは熱が放出される。電気ストーブと同じ原理で、熱いモノから周辺にその熱が伝わる『放射』が起こってしまうのだ。
外側組ツールは窓の手前で日差しを遮ることで、ガラスの温度上昇を防いでくれる。
一方、室内ブラインドやカーテンなどの“内側”組では、こうはいかない。
窓に当たる日差しはブラインドも熱し、色や材質にもよるがその表面は高い時は40℃近くになることも。日差しは防げてもブラインド自体が蓄熱すれば、やはり放射で部屋は暑くなってしまう。
つまりは家の中に直射日光を入り込ませないのが肝要。
外側組を使った外部遮蔽は、パッシブに住まいを涼しくするセオリーの筆頭といえるだろう。
■おすすめはスダレや緑のカーテン 自然素材には理由がある
外側組のラインナップは多彩だ。伝統的なヨシズやスダレ、おしゃれなオーニングやスクリーン、すっかりおなじみになったグリーンカーテン。雨戸やシャッターも使い方次第でこれに入る。
では、この中でもとくに効果的なのはどれだろう?
2013年に発表された日本大学生物資源科学部佐瀬勘紀氏ほかの研究論文では、ヨシズ・寒冷紗・ゴーヤのグリーンカーテンの3種類の外部遮蔽による窓ガラスの冷却効果を比較実験している。
8月の晴天日においてガラス表面の温度をもっとも低く抑えたのは、グリーンカーテンだった。
グリーンカーテンつまり植物による日射遮蔽が強力なのは、葉の裏から水分を放出して葉っぱの温度が上がらない“蒸散作用”のおかげで、熱放射が発生しづらいからだ。寒冷紗やオーニングは日が当たっただけ熱くなり、やはり窓ガラスへの放射が起こる。
炎天下の道を歩いていて、建物の影よりも木陰が涼しいと感じるのも理由は同じ。グリーンカーテンの実力は、見た目の涼しさ爽やかさに限らない。
そう言われても「今からゴーヤやキュウリなんて育てられないよ!」…という声も、ごもっとも。ここで、ホームセンターなどで気軽に手に入るスダレやヨシズに登場してもらおう。ビニールやプラスチック製より昔ながらの葦(ヨシ)がいい。
葦は断面が丸く中身が空洞の茎を持つ植物で、日射遮蔽にうってつけの材料だ。
並べて編み上げると立体的に厚みが出、寒冷紗やスクリーンより表面積も大きく、日差しをよく遮ってくれる。加えて茎の一本一本に空気が入っていて断熱材の働きをする。さらに水をかけて蒸発させればグリーンカーテン並みの実力も発揮。葦はもともと川や池に生えるから水に強いのだ。まったく昔の人の知恵にはかなわない。
しかし現代の住宅事情を見れば「洋風デザインの家だからヨシズもスダレも合わない」「窓まわりに何か掛けたり置いたりできない」といった場合も多々あるに違いない。
大事なのは窓に直射日光を当てないことだ。オーニングやシェードでも、外部遮蔽ができればもちろん効果はある。建物のデザインに合わせ、素材も検討しつつ装飾を兼ねた日射遮蔽を試してみてはどうだろう。
それでも「うちはどうしても内側組しか使えない!」なら、断熱力の高い室内スクリーンを使う手もある。
おすすめは“ハニカムスクリーン”と呼ばれる、蜂の巣を並べたような姿で内側に空気を抱くものだ。日差しを受けて蓄熱した窓ガラスが発する熱放射を、分厚い空気層でせき止めて室内への伝わりを防ぐ。
もとは冬の冷たい空気を遮断する目的で開発されたが、外気の入り込みを防ぐ点では夏の熱気にも同様の効果がある。加えてエアコンで冷やした室内の空気は外に漏らさないというおまけつき。メーカーごとに素材もいろいろあり、一考の余地はありそうだ。
温暖化の影響で最高気温は上がり続け、暑さを感じる時期も長くなった。エアコンだけに頼りすぎず、自然の摂理や素材の性質を活用した省エネ&パッシブな外部遮蔽での涼しい家づくりは、地球環境保全に向けた小さな貢献にもなる。試してみてはいかがだろうか。
(まいどなニュース特約・二階 さちえ)