なりたい職業ランキング上位の看護師…しかし、看護師は本当に「あこがれの職業」にふさわしいのか?

毎年子どもが「なりたい職業」ランキングでも、親が「つかせたい職業」ランキングでも上位に位置する「看護師」という職業。「資格を持てる」「人の役にたつことができる」などという部分で、魅力を感じている人が多いようです。しかし、実際のところどうなのでしょうか。気がつけばベテランといわれる世代にきた筆者が、リアルな声をお伝えしたいと思います。

■看護師の資格はおとく?

まずは資格を持つということが強みになるかどうかですが…ズバリ、「なります」!これは声を大にしていえる部分ですね。高齢化のすすむ今、病院がなくなることはまずないでしょう。贅沢をいわなければ仕事には困らないというメリットがあります。

ここで注意してほしいのが、「贅沢をいわなければ」というところです。病院も会社なので、給料も条件もいろいろ。給料がよくて、休みがとれてなど条件がふえると就職先がみつかりにくいことは他の職種とかわりません。条件のいい職場を選ぼうと思えば、もちろん年齢制限という壁もでてきます。安定性をもとめるなら条件のよい職場を探し、長く務めることがいちばんの近道。反面、資格があるため国内であれば、自分のライフワークにあわせて働き方を変える不安は少ないかもしれません。場所をかえても仕事がみつかるという、転職のしやすさもメリット。

■給料は高い?ひくい?

看護師以外の友人から、嫌になるほど言われてきた「給料高くていいね」。世間の風潮がどうしてそうなのかいつも疑問に感じていました。額面でいうと高く感じるかもしれませんが、夜勤手当あってのものです。

厚生労働省がまとめた2020(令和2)年の「賃金構造基本統計調査」によると、看護師の平均年収は約492万円。月収は約34万円、ボーナスは年間で約86万円となっています。同じ調査で全職種の平均年収は約487万円ですので、やや高く見えますね。また、女性に限定すると、看護師の平均年収は約490万円になる一方で、女性の全職種平均は約382万円となっており、その部分だけ切り取ると「高い給料」をもらっているように感じられるかもしれません。

しかし、看護師の年収には夜勤の手当が大きくかかわっており、施設により幅はありますが年間30~60万程度と言われています。産休後の日勤だけの勤務や、施設やデイサービスなど病院以外で働いた場合は、夜勤がない分収入は大きく下がることになります。

そもそも医療の現場で働く看護師の仕事は「命をあつかうプレッシャー」を常に抱えなければいけません。さらに、特にコロナ禍の今。面会ができなくなっている家族の対応や、ワクチン接種にまつわる業務など、コロナ患者をうけいれている施設以外でも業務負担が大きくなっています。

残業代もときに自分の能力不足とみられることもあり、すべてもらえるわけでもなくサービス残業になる部分も多いのが実際。そういう部分を考えると、気力体力をフルに使えば給料は高くなるけれど、仕事内容に見合わない場合もありえると言えるでしょう。

■鋼の精神が鍛えられて…

看護師は優しいというイメージがあるのではないでしょうか。どんなことにも笑顔をたやさず、患者さまによりそうことがもとめられるためコミュニケーション能力は高めです。

病院というところは不安がうずまく場所。多くの患者さまはいろいろな思いを抱えています。不安が怒りやイライラにかわってしまうこともあります。自分に身に覚えのないことで突然怒鳴られ「なんのことー!」と思っても謝罪し解決し、最終的には笑顔をもって終わらせる。その優しい笑顔の裏で、しらずしらず鋼の精神が鍛えられているのです。

そのため気が強くなるという副産物が。私も新人時代は先輩たちをみて、「あんなきつい人にはならない」と思っていましたが、今では立派な気の強い人になりました。(すべての人に当てはまるわけではありません)

■「やりがいのある職業」

看護師は患者さまのことをバックグラウンドもふくめ、全体的にみる職業です。働く場所もさまざまで、病院だけでなく保育園や大学、製薬会社などの企業や在宅をみる訪問看護。自分が目指す看護の在り方で、いろいろな可能性がひろがっています。このごろは海外を目指す看護師も。

それらの根本にあるのは、患者さまのためにという気持ちです。自分の行動がだれかの役にたつ、だれかに貢献できる。という思いを持った看護師が多いです。

自分の学びや行動が、だれかのためになる。そういう意味では、とてもやりがいのある職業といえます。

   ◇   ◇

「なりたい職業」ランキング上位に位置する、「看護師」という仕事。看護師になるには、少しの忍耐力とコミュニケーション能力、そして「人の役にたちたい」という気持ちを持っていればやっていけるはず…。これから看護師を目指す人、そして「子どもに資格をとってほしい」と思っている方々に少しでも参考になればと思います。

(看護師ライター・mie)

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