旭川女子中学生凍死事件 衆院選出馬表明の旭川市長に対し、小川泰平氏が「責任放棄」と苦言
今年3月23日、北海道旭川市内に住む当時14歳の中学2年生だった廣瀬爽彩(さあや)さんが同市内の公園で凍死した姿で発見され、2年以上前からせい惨なイジメに遭っていたことが報じられた。この事件を追っている元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は27日、当サイトの取材に対し、事件発生時の行政のトップだった旭川市の西川将人市長が年内に行われる衆議院議員総選挙に出馬することについて「責任放棄」と苦言を呈した。
小川氏は6月と7月に各3日間ずつ現地取材し、自身のYouTubeチャンネル「小川泰平の事件考察室」で計10回リポート。8月も視聴者からの質問に回答する形式で複数回、この事件を特集している。その中でも、小川氏は西川市長の責任を問うた。
西川氏は旭川市出身。2006年に旭川市長に当選し、現在4期目。今年7月の時点で、8月中に旭川市長を辞職し、年内の衆院選に立憲民主党公認で北海道6区から出馬することを表明。8月10日には同月31日付で辞職する届け出を市議会議長に提出している。
その8日後の18日、爽彩さんの遺族代理人が遺族の手記を公開し、旭川女子中学生凍死事件はその背景と共に全国的に知られるニュースとなった。西川市長は20日、市の教育長に調査の進捗を遺族に伝えるように要請し、市教委に対して「今まで以上にご遺族に寄り添ったかたちで進めてほしい」と伝えた。
また、西川市長は、爽彩さんが今年3月に公園で亡くなったことで事件が顕在化したことを受けて、4月22日に市教委との会議後に記者会見し、第三者委員会による調査開始について「イジメということになれば、これまでの対応に問題があったことになる」と学校側や市教委の在り方を改めて問うていた。
このように、西川市長は事件を受け止めて対応してきたが、依然として真相解明には至っていない。現時点で第三者委員会から具体的な見解は示されておらず、学校側や市教委の責任もうやむやな状態。当初からの既定路線だったとはいえ、問題が未解決なままでの市長辞職と衆院選出馬という動きに対して、同市長に対する批判的な声もネットなどでは一部で起きている。
小川氏は「行政のトップが在任中に、14歳の女の子がイジメを超えた犯罪によって苦しい思いをしながら亡くなった。そんな取り返しのつかない大変な事件が起きていているのに、まだ第三者委員会の結果が出ないうちに市長を辞めて国政選挙に出るとはどういうことだ。それは責任放棄です。本来なら、この事件を受けて、今回の衆院選出馬はとりやめるべきだった。真相が究明されるまで、市長の座に残って対策を講じることが行政トップのあるべき姿でないのか」と訴えた。
一方で、小川氏は「ただ、今回の事件が起きる前から、西川市長が衆院選に出ることは決まっていたのかもしれない」と理解を示しつつ、「大人の事情でどうしても国政に出なければならないのなら、きちんと残務整理をして、後任の市長にも引き継いで、しっかり対応していくべき。当選すれば旭川市にも顔を出せるとは思うが、残念な結果になった場合は他人任せなのか?」と指摘した。
その上で、小川氏は「西川氏が市長を辞職して国政に出るという会見では、この地元で起きた事件については全く触れていなかったことに憤りを感じている」と改めて批判した。