あふれる昭和レトロ感 神戸の「トンネル鉄道」神戸高速線の不思議
阪急、阪神、山陽、神戸電鉄(神鉄)を結ぶ神戸高速線はちょっと不思議で、昭和レトロが楽しめる路線です。そんな神戸高速線にも時代の波が押し寄せようとしています。これから神戸のトンネル鉄道はどのように変わるのでしょうか。
■なかなか複雑…神戸高速線の歴史
現在は阪急神戸高速線(神戸三宮~新開地)、阪神神戸高速線(元町~西代)、神鉄神戸高速線(新開地~湊川)と一般的に呼ばれていますが、なかなか複雑な歴史をたどっています。
1968(昭和43)年に神戸高速鉄道が開業し、神戸の交通は飛躍的に向上しました。当初のは東西線(阪急三宮・元町~西代)、南北線(新開地~湊川)と呼ばれていました。
神戸高速鉄道は開業当初から自前の車両はなく、線路や駅設備を保有する会社です。また神戸高速鉄道線内での運転や車掌業務は以前から阪急、阪神、山陽、神鉄が行っています。
法律では神戸高速鉄道のように線路や駅設備を保有するだけの会社は「第三種鉄道事業者」に分類。なお神戸高速線で運行している阪急、阪神、神鉄は「第二種鉄道事業者」となっています。一方、山陽は2010(平成22)年以降、同線において「第二種鉄道事業」から外れています。
2010(平成22)年まで駅設備や運行の業務管理は神戸高速鉄道が行い、各駅には同社の社員が配属されていました。また駅名板や駅構内放送なども神戸高速鉄道オリジナル仕様でした。
事実、1997年版『JTB時刻表』には「神戸高速鉄道東西線・南北線」と表記されています。こういうこともあり、子どもの頃の筆者は神戸高速鉄道に関しては「阪急や阪神とは別物」という印象を持っていました。
2010(平成22)年に駅設備や運行の業務管理が神戸高速鉄道から阪急、阪神、神鉄へ移管。駅員も3社の社員に変わりました。
また路線名も「阪急神戸高速線」「阪神神戸高速線」「神鉄神戸高速線」と呼ばれるように。駅名板も阪急、阪神、神鉄仕様になり、神戸高速鉄道色はずいぶんと薄まりました。
2021年『JTB時刻表』では「神戸高速 神戸高速線」と表記され、「神戸高速鉄道」は見当たりません。
■昭和レトロが感じられる神戸高速線
難しい話はこれくらいにして、少しだけ神戸高速線を探検してみましょう。神戸高速線は昭和レトロが感じられる路線です。こちらは西元町駅です。広告が少なく、レンガ模様の構内は独特の雰囲気。おそらく開業当初から大きく変わっていないと思います。
新開地駅でレトロ風な沿線案内図を見つけました。こちらの案内図も相当の年数が経過しているものと思われます。近鉄線の追加や「大阪梅田」への修正を経ながら、大切に扱われていることがわかります。
新開地駅~高速神戸駅間は地下街「メトロこうべ」になっています。一部には「メトロこうべ」や神戸市の交通史を伝える壁画があります。神戸高速鉄道開業の熱気が伝わってきます。
神戸高速鉄道開業の陰で廃止されたのが神戸市電です。神戸市電は昭和46(1971)年に廃止されました。
■変わりつつある神戸高速線沿線
このように昭和レトロが感じられる神戸高速線ですが、時代の波を感じられるようになってきました。今年6月、新開地駅構内にあった立ちソバ「高速そば」が閉店しました。40年以上の歴史を持ち、神戸高速鉄道の名物になっていた老舗店の閉店はさびしい限りです。
個人的にはコロッケうどんが好きでした。なお「高速」とありますが、高速でうどんやそばが出るわけではありませんでした。
また7月21日に神戸高速鉄道と阪神は「メトロこうべ」の中間通路をリニューアルすることを発表。コンセプトは「『まち』と『まち』をつなぐ明るく賑わう地下通路」となり、木目を施した天井や柱、床、照明のLED更新により、一新されます。完成予定は2022年3月とのことです。
神戸三宮や元町を訪れた合間に神戸高速線を訪れてみませんか。意外な発見があるかもしれません。
(まいどなニュース特約・新田 浩之)