売れっ子女優・奈緒に聞いた「“怪演女優”と呼ばれるのはどう思う?」
奈緒(26)の肩書きは、もはや“怪演女優”か。映画『先生、私の隣に座っていただけませんか?』(9月10日公開)では、担当漫画家の夫と不倫する女性編集者を明るく天真爛漫に表現。不倫=ドロドロという概念からはかけ離れた爽やかな立ち振る舞いが逆にホラーテイストだ。テレビドラマ『あなたの番です』(2019年)でのストーカー気質の尾野ちゃん役での怪演が話題となった奈緒が、今度は爽やか不倫相手・千佳ちゃん役で怪演女優の肩書に王手をかける!?でもご本人的に“怪演”と呼ばれることってどうなのだろう。恐る恐るご本人に聞いてみた。
「爽やかであっけらかんとした不倫相手役にピッタリ」との太鼓判を得て、漫画家・佐和子(黒木華)の担当編集者にもかかわらず、その夫・俊夫(柄本佑)と不倫する千佳ちゃん役に抜擢された。「不倫相手にピッタリだと言われたのは初めてですが、面白いなと思いました。不倫を題材にした作品に参加するのは初めてで、どんなドロドロ展開が待ち受けているのかとドキドキしましたが、千佳ちゃんは竹を割ったような性格。物語の登場人物としても不倫相手としても、かなり面白い人だと思いました」と予想外の人物像に驚いた。
たしかに千佳ちゃんは爽やかな人。しかし佐和子が夫の不倫をエッセイ漫画のように描き始めてから、雲行きが怪しくなる。正妻に不貞がバレたと汗だくになる俊夫に反して、千佳ちゃんは佐和子の漫画原稿を目にして「面白い!続きが読みたい!」などと喜色満面。それを奈緒は瞳をキラキラ輝かせてフレッシュに演じるものだから、千佳ちゃんの外道ぶりがより強調される。
「千佳ちゃんには、好きな人への愛ではなく漫画に対する狂気を感じます。彼女の中に眠っている漫画愛を超えた狂気が、佐和子さんの書いた漫画によって表に引きずり出される。不倫をテーマにした作品によくある色恋沙汰の果てにある狂気ではなく、これまであまり触れたことのない得体のしれない狂気。漫画に対して盲目的で狂気的な愛を傾けるところが面白いところであり、千佳ちゃんの怖いところ。私もその狂気に身をゆだねる形で演じました」と怪演を報告する。
■“怪演”と評されることについてどう思う?
それでは聞いてみよう。“怪演”と評されることについてどう思うのか?「たしかに私の名前の横に“怪演”と書かれている記事を目にすることは多いです。自分としては肩書きのように“怪演女優”と言われるのはビックリ。意識して怪演しようと思ったことはありませんし、どんな役を務めるときもドキドキしているだけ。たまたま特異なキャラクターをいただけている、という感覚です」と本人が一番“怪演”呼ばわりに驚いている。
でも怪演と言われるようなキャラクターを演じるのも嫌いではない。「クリエイターの方々が私にそれをやらせたら面白いだろうとか、私を上手く調理してくださった結果、今がある。私は油断すると自分の限界を決めがちなので、特異な役柄をいただけることが、私自身が自分に対して飽きずに挑戦していける理由なのかもしれません」とこれからも受けて立つ構えだ。
特異なキャラクターをリアルに出現させる技量があって初めて成立する“怪演”という称号。奈緒の肩書は、やはり“怪演女優”で決定だ。
(まいどなニュース特約・石井 隼人)