やせ細った「地域のアイドル猫」を保護してみると…重い病気でしかも“面食い”だった 幸せになれるかニャ?
兵庫県尼崎市にあるとある公園、10年以上そこのアイドル猫だったトコちゃん。茶トラの体の大きなオス猫で、人間が大好き。誰にでもスリスリしちゃいます。スリスリしてもらうと人間も嬉しいものですから、ご飯やおやつを持ってくる人が多くいました。
しかし、毎日ご飯を持ってきてくれていたお婆さんが病気になり公園に来られなくなると、急速に痩せ脱水症状にも陥ってしまいました。見かねた人が捕獲しようにも、病院に行くと分かるのでしょう。なかなか保護されてくれません。トコちゃんのお世話をしていたサポーターのUさんが「保護猫シェルターふみふみ」代表のNさんに依頼をし、一緒に保護。トコちゃんはUさんとNさんに連れられ動物病院へ。
動物病院で分かったのは、重い腎臓病。しかも、猫エイズキャリアです。保護してから毎日、トコちゃんは病院に点滴を打ちに通うことになりました。今まで自由に過ごしていたトコちゃんは、これが不満です。動物病院で大暴れ。ところが、若い美しい獣看護師さんが優しく、
「トコちゃん、頑張ろうね」
と言うとデレデレに。おとなしく点滴をさせてくれるようになりました。男性や中年以上の女性ではダメなんですよ。現金なものです。
さて、トコちゃんがいなくなった公園は寂しくなりました。トコちゃんの寝床に「茶トラ君は体調不良のため蓬川町にある保護施設で暮らすことになりました」と張り紙をすると、トコちゃんサポーターの皆さんが「保護猫シェルターふみふみ」に差し入れをしてくれるようになったんです。中にはお金を置いていく方も。
トコちゃんがどれだけ地域の人に愛されていたかが分かります。メールでの応援もたくさんありました。
その中で一通、別の保護団体からの問い合わせが。大阪府東部のHさんが、トコちゃんを探しているとのこと。この女性は、トコちゃんの妹猫と暮らしているらしいのです。
すぐNさんは連絡を取り、「保護猫シェルターふみふみ」にHさんを招待します。聞くところによると、Hさんの家は大阪府東部なものの職場が公園の近くなのだそう。数年前にトコちゃんの妹猫の体調が先に悪くなったため保護をし、それから一緒に暮らしているんですって。
この女性をトコちゃんが日々を過ごす隔離部屋に案内します。Hさんがトコちゃんに声をかけました。
「ジジちゃん!」
トコちゃん、ジジちゃんとも呼ばれていたそうです。トコちゃんは嬉しそうに自分からHさんへ駆け寄り、スリスリ。とても幸せそうな表情でした。
感動の再会だけで終わると思いきや、Hさんはトコちゃんを引き取りたいと言ってくれたのです。これにはNさんもビックリです。高齢で猫エイズ、しかも腎臓病で今も週に2回は点滴を打ちに動物病院へ行かねばならない猫。そんな子を引き取ってくれる人がいるだなんて!
Hさんはいつか保護しようと思っていたものの、みんなのアイドルを勝手に保護して良いものか迷っていたとのこと。病気だと聞き、矢も楯もたまらず飛んできたのだそう。今ではトコちゃん、「ジジちゃん」と呼ばれ大阪府東部で妹猫と一緒に暮らしています。ちなみにこのHさん、とても綺麗な方なんですって。トコちゃんは面食いです。
Nさんは長年保護猫活動に携わってきましたが、こんな譲渡は初めて。トコちゃんが引き取られたことで、猫エイズでも高齢でも可愛がってくれる人がいるのだと分かり、活動の励みになったと言います。
子猫だけに目を向けないでほしい。高齢猫でも猫エイズでも幸せになってもらいたい。トコちゃんに続く猫が出てくることを、Nさんは切に祈っています。
(まいどなニュース特約・ふじかわ 陽子)