カレーで絵が描けるペンに大反響!大根おろしの再現には5年以上の歳月が…“変わり種”チューブ調味料の世界
面倒な下ごしらえなしに料理の幅を広げる「チューブ調味料」。大手食品メーカー、ハウス食品(本社、東京都千代田区)はこの夏、立て続けに“変わり種”の商品を発売しました。いずれも開発に3~5年以上かかったという自信作。開発秘話を聞きました。
■「想定以上の反響」で在庫切れに
9月1日発売の子ども向け商品「おえかきカレーペン」はチューブ入りのカレーソースです。
3~7歳くらいの子どもが使うことを想定。カレーペンを使ってお皿や料理に絵を描くことで、夕食が出来上がるまでの時間を「楽しいおえかきタイム」にすることが狙い。「夕食準備中に、お子さまが『お腹空いた』『かまってほしい』とぐずった時におすすめの製品です」(同社)。
同社といえば、1973~85年に放映された西城秀樹さん出演のCM「ハウスバーモントカレーだよ~♪」が有名。リンゴとはちみつで仕上げたマイルドな味のカレーには定評があります。子ども用のお絵かきペンといえども味への期待がふくらみます。
同商品のプロジェクトリーダー富田さんに聞くと、「お子さま向けの製品なので『お子さまがよろこんでくれる味』にするのは当然なのですが、『大人が食べてもおいしい味』という点にこだわっています」。社内ののべ53人の社員と一般の消費者99人、子どもたちにヒアリングやアイデア評価、試作品の評価をくり返すこと約3年。富田さんの自宅ではこんな出来事もありました。
「自分の子どもに試作品で実際に描いてもらいました。『お父さんの分も』『お母さんの分も』といっぱい描いてくれましたし、『またやりたい!』と言ってくれたので非常に手応えを感じたのですが、『これは親も結構な頻度で食べることになるぞ…』と気が付きました(笑)」
「そこから『親が食べても満足できる味にしたい!』という思いが強くなり、現在の味を目指しました。せっかくお子さまが楽しんでくださっても、親御さんにも喜んで食べていただけなければ、家族がハッピーという状態にならないと考えたからです。ただ甘くてお子さまが食べやすいだけでなく、カレーとしてのスパイスの風味や、甘い中にも複雑なおいしさを感じられ、大人も満足できる味を目指しました」
発売後、筆者も知人家族にお願いし、商品を使ってもらいました。幼稚園児はご飯を顔に見立てて目鼻を付けたり、完成したオムライスの上に自由に絵を描いたり。できたてホカホカの料理の上に描くと、熱で絵が流れてしまい「ああ、顔が~」と残念がっていましたが、いざ食べ始めると「カレーおいしい。もっといろいろ描きたい!」。普段とはちょっと違った“夕食までの待ち時間”を味わえたようです。
発売後数日で在庫切れになり、急きょ追加補充を行ったほど。「想定以上の反響がありました」(同社広報担当者)。通販サイト「LOHACO(ロハコ)」にて数量限定で販売中。税込み198円。
■「さっぱりとしたみずみずしい風味」再現した“力作”
完成までに5年以上の歳月を費やした“力作”が8月9日発売の「大根おろし」です。
少量の大根おろしを作るのが面倒な1人暮らしの人、忙しくておろす時間もない人など、「大根おろしが食べたいけれどあきらめてしまっている人」がターゲット。「作り置きができず、準備に手間がかかる大根おろしを、いつでも手軽に用意できます。シャキシャキとした食感とすだちの風味が特徴です」(同社)。
「常温流通でおいしい味や品質を保つことがとても難しい課題でした」という同商品の担当者に話を聞きました。
ーー開発に5年以上かかったと。
「大根おろしのおいしさは『さっぱりとしたみずみずしい風味』です。大根おろしのこのおいしさをいつでも味わっていただけるようにするための品質保持が難しく、5年以上に渡る長期の開発期間をかけてようやく実現することができました」
ーー「シャキシャキ食感」の再現も難しかったのでは。
「大根おろしのもう1つのおいしさは『シャキシャキとした食感』です。これを実現するために開発をしておりましたが、シャキシャキした食感を強めようと大根を粗くすると、大根の風味が感じにくくなってしまうという課題がありました。大根の食感と風味を両立することが難しかったポイントです」
同社では同商品の開発で培った「さっぱりとしたみずみずしい風味」を保持するための技術を特許出願中。どんな技術なのか公開が待たれます。税別参考小売価格125円。
■ハウス食品担当者の「おすすめベスト5」は?
ハウス食品のチューブ入り調味料シリーズは全34品にも上ります(2021年9月7日時点)。その中から、同社担当者に「おすすめベスト5」を教えてもらいました。
1位:レモンペースト
2位:大根おろし
3位:かぼす&すだちペースト
4位:のっけてラー油ペースト
5位:焦がしにんにく
(まいどなニュース・金井 かおる)