深夜のテントでガサゴソ…侵入者はまさかの天然記念物!お別れ後の奇跡的な再会に「お礼にきたのかな?」
キャンプ場のテントに忍び込んできた、かわいすぎる侵入者がツイッターで話題を集めています。
投稿したのは、「LTBuilder」さん。8月下旬に友人と2人で登山に出かけ、下山後に尾瀬沼ふもとのキャンプ場でテントを設置し眠っていたところ、深夜0時過ぎにガサゴソと荷物をあさる音で目が覚めたといいます。
思わずドキッとしてしまう深夜の侵入者…。ライトをつけて確認してみると、そこにはなんと、天然記念物である「ニホンヤマネ」の姿がありました。
ヤマネは、体長8㎝ほどのとても小さな野生動物。夜行性で、主に高い樹上で生活しているため、人が遭遇する機会はとても少ない生き物です。
しかしこのヤマネ、しばらく荷物をあさったあと、なんとザックの下ですやすやと眠り始めてしまったのだとか。
「天然記念物ゆえに、うかつに手を出せない」と考えたLTBuilderさんは、仕方なくヤマネをそのまま寝かせ、共に眠ることに。そして起床後、自然に帰すべく近くの茂みに放し、一夜の友に別れを告げました。
ところが…
そこから2時間ほど近くを散策してテントに戻ってくると、朝逃がしたはずのヤマネがテントの隅でまたもやすやすや眠っていたのです。
この、まさかの再会にリプ欄には「安心したんでしょうなぁ」「絶対に好かれてる」「あったかい寝床を提供してもらったお礼に来たのかな?」とほっこりコメントが続出。また、「かわいい」「丸々してる!」「会いに行きたくなりました」など、ヤマネのかわいいビジュアルへのコメントも多数寄せられ、13.7万もの「いいね」が押されました。LTBuilderさんに、まさかのヤマネとの出会い、そしてその後の別れについて伺いました。
■無事に生きていてくれたら
--ひと目でヤマネだと気づかれたのですか?
実物を目にするのは初めてでしたが、存在自体は知っていたのですぐにわかりました。テントが結露しないよう入り口を少し開けていたので、そこから侵入したのだと思います。目撃例が少ない野生動物なので、まさか遭遇するとは驚きでした。
--警戒している様子などはなかったのですか?
10分ほど荷物をあさって、その後眠り始めたのですが、ライトをつけて撮影していても特にこちらを警戒する様子はなかったです。
--朝まで一緒に眠られたのですよね。
天然記念物なのでうかつに手も出せず、とりあえず一緒に寝ましたが、隣にあのヤマネがいると思うとなんだか不思議な気持ちでした。朝起きたらまだ寝ていたので、そっと近くの茂みに移動させました。
--ところが、散策後に戻ってきたらヤマネも戻っていた?
はい。テントの片づけをしているときに片隅で寝ていて驚きました。ギリギリまで気づかなかったので危うく踏みつぶすところでした…。ひとまず片付けが終わるまでその場で寝かせ、また同じ茂みに移動させたのですが、なかなか手から離れようとせず苦労しました。
--ヤマネも名残惜しかったのでしょうか。別れを告げたヤマネには、どんな気持ちを抱かれていますか?
達者でな!という気持ちです。無事に生きていてくれたらいいなと思います。
■「生きた化石」とも呼ばれるヤマネ
二ホンヤマネを飼育する「盛岡市動物公園ZOOMO」の二ホンヤマネ担当・河野晴香さんによると、ヤマネは本来、警戒心の強い動物なのだとか。そんなヤマネが、今回のように人間と同じ空間で眠ったことについて、「ヤマネにはフクロウやヘビなどの天敵が多くいるので、より安心して眠れる場所を探していたのかもしれません」と話します。一方で、もともとヤマネのテリトリーだった場所にテントが建てられたと、いう可能性も考えられるのだとか。
「ヤマネは特定の休息場所をいくつか持っており、それらの場所を転々とする習性があるので、再度テリトリーである場所に戻ってきたのかもしれません。とはいえ、主に人気のない森の中の高い樹上で生活する動物ですから、同じ空間で眠るというのはなかなかできない体験かと思います」。
起源は5000万年以上前とされ、現在の形態も当時の化石と類似しているため、「生きた化石」とも呼ばれるヤマネ。しかし、生息地である森の減少などにより準絶滅危惧種に指定している県も多く、各地で保護活動が行われています。そんなヤマネと運よく遭遇できたときの注意点として、河野さんはこう話します。
「愛くるしい姿をしていますが、人の食べ物は与えないようお願いいたします。動物の体によくないものもありますし、人の食べ物に依存してしまったり、人を恐れなくなることが、その動物の命を危険にさらすこともあるからです。見かけたときにはどうかそっと見守っていただき、彼らの暮らしに想いを馳せていただけたらと思います」。
LTBuilderさんも話されていたように、ヤマネは国の天然記念物に指定されている動物なので、許可なく捕獲することはできません。愛くるしい姿を見たくなったら、ぜひ、ヤマネを飼育している動物園へ。ちなみに「盛岡市動物公園ZOOMO」では5頭のヤマネが飼育されており、そのうち1頭は動物資料館(屋内)の「夜行性の日本産動物エリア」で会うことができます。
(まいどなニュース特約・鶴野 ひろみ)