「土を食べるパフォーマンスを広めないで」それは北海道ではありえない行為…農家の注意喚起が話題に

北海道で土や川の水を口にしないで欲しいという注意喚起がTwitter上で大きな注目を集めている。

「北海道で自然農実践する者からのお願い」として

「土を食べるパフォーマンスを広めないで下さい。せめて北海道ではしないように注意喚起して下さい。先日、道外出身で自然農を志す友人がキャッチーなパフォーマンスを真似して土を食べてしまいました。北海道では川の水を飲むの・土を食べるはありえない行為です」

と呼び掛けたのは北海道十勝地方で「harmonic farm」を営む農家の柳谷祐輔さん( @harmonic_farm )。

土壌の質を判断するためとして土を食べるパフォーマンスは漫画や映像作品で散見される。しかし、北海道の土や川の水はネズミ、キツネなどを媒介とする寄生虫・エキノコックスの卵が混入している可能性があり、感染すると内臓に重篤な疾患をもたらすおそれがあるのだ。

柳谷さんの呼び掛けに対し、SNSユーザー達からは

「農家出身です。北海道じゃなくても土ついたまま食べません。採れたてが美味しいってそういう意味じゃない…」

「私が北海道を旅した時(80年代)はエキノコックスは道東だけでしたが、いまや全道、本州にも広がっていますね」

「キツネ、札幌市内 住宅地の公園にも普通にチョロチョロしてますからね!」

「子どもたちには雪も絶対に食べてはいけないと言い続けてきました」

など数々のコメントが寄せられている。

柳谷さんにお話をうかがってみた。

中将タカノリ(以下「中将」):ご友人が土を食べてしまった時のご感想をお聞かせください。

柳谷:まず背景として、Twitter上では日々、無農薬派と慣行派(農薬を使う農法)での争いが絶えません。 無農薬派を無農薬信者、慣行の野菜を薬まみれなどと表現してたりします。

僕自身は無農薬で野菜を育てていますが、そういったやりとりが不毛だと思うし、有機と慣行はやり方が違うだけで、争う必要はないと思っているのでいつも冷ややかな目で見ています。

土を食べるという行為は農薬を使ってない良い土だという意味合いで無農薬派がしばしばやっているパフォーマンスです。 それすら僕はやめてほしいと思っていたのに、まさか身近な人がそういった行為を真似するとは思いもしませんでした。Twitterで見られる争いや、キャッチーなパフォーマンスによる間違った知識の被害者だと思いました。しかもエキノコックスという北海道ならではのリスクがある場所だったのでツイートするに至りました。

そもそもエキノコックスへの注意喚起だけではなくそういった行為への皮肉の方が強めのツイートでした。伝わる人には伝わるだろうと言った感じですね。

中将:川の水、土を口にしないことは北海道では常識なのでしょうか?

柳谷:完全なるご法度です。幼い頃から口を酸っぱくして注意されます。

中将: 一部の漫画や映像コンテンツなどで見られる土を食べるパフォーマンスについてどのように思われますか?

柳谷:エキノコックスという寄生虫はいわゆる外来種なので、作品の時代背景によっては問題ないこともあるかと思います。ただ、現代の設定であれば止めて欲しいです。

また観光で北海道の山野を訪れた方にも、沢の水などは飲まないようにして欲しいです。キタキツネなどの野生動物にエサを与える行為も同様です。

中将:SNSの反応についてご感想をお聞かせください。

柳谷:先にお伝えしていた通り皮肉の要素が強い投稿なので、最初にリアクションしたのはそれを理解する方たちでした。しかし、次第にエキノコックス感染への注意喚起として評価していただける人が増えた印象です。

賛否両方ありましたが、友人に対して「食べるやつが悪い」などと言われるは正直つらかったです。友人はあくまでも情報の被害者という認識なので…。

また「パフォーマンス」というワードを風刺という意味ではなく、そういうパフォーマーの方がいると受け取る方がいたのは予想外でした。

嬉しかったのは北海道外の方でもエキノコックスの危険性を理解している方がたくさんいらっしゃって、やめた方が良いよと拡散してくれたことです。

   ◇   ◇

現在、エキノコックスの生息域は本州以南にも拡大している。またいくら管理されていても土の中にはどのような危険物質が含まれているかわからない。地域や状態に関わらず、土を口にすることは避けたほうが無難だと言えるだろう。

なお柳谷さんは現在、本来自給自足向けの自然農での営農を目指し活動中。さまざまな試みの映像をYouTubeで「vlog」という形で配信しているので、ご興味のある方はぜひチェックしていただきたい。

   ◇   ◇

【柳谷祐輔さんプロフィール】

北海道出身。非農家に生まれるが幼い頃から農に憧れを持って育つ。はじめ趣味の範疇で「半農半X」の生活を楽しんでいたが、コロナ禍の自粛期間に毎日畑に通うようになったことを機会に2021年から農業に専念をすることを決意する。

(まいどなニュース特約・中将 タカノリ)

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