LGBTの結婚式ができる神社「願いの宮」 男女を前提としない“全ての人”が幸せになれる式の形
「自分も、愛する人と結婚式を挙げたい」
現行法で婚姻関係が認められていないLGBTカップルの中には、そんな思いを持つ人がたくさんいる。そんな人たちが、結婚式を挙げられる場所がある。大阪市中央区の神社「願いの宮」だ。
「願いの宮神前式 for LGBT」は、宮司の桃山きよ志さん、そしてLGBTブライダルプランナーの桜井秀人さんによって始められたものだ。桜井さんは、バイセクシュアルの当事者でもある。自身が悩んだ経験を踏まえ、各地で講演活動を行ったり、性の多様性を謳うイベント「レインボーフェスタ!」を運営したりしている。
「誰でも、結婚式は、できる」
桜井さんは、ブライダルプランナーとしてこんなキャッチフレーズを掲げている。「異性婚以外はできないという概念を崩したい。そんな一心で、レインボーフェスタ!のステージ上で結婚式を企画したりもしました」(桜井さん)
LGBTの人々が結婚式を挙げようとすると、「開催できる式場がない」「LGBTの知識を持つプランナーがいない」「『男女』を想定した結婚式ばかり提案される」など、さまざまな課題が立ちはだかる。そんな心配をひとつずつ解消しながら、LGBTをはじめとするすべてのセクシュアリティの人が安心して結婚式を行えるよう提案をしていくのが桜井さんの仕事だ。
「異性同士の結婚式では当たり前の慣習ってありますよね。それを取っ払うようにしています。例えば、“新郎・新婦”と呼ばず、それぞれのお名前を呼ぶ。男性ファーストの順番にしない。男が右、女が左、といった立ち位置もやめ、カップルごとに決める。会場内にはセクシュアルフリーのトイレを設ける…などの手筈を整えつつ、“更地”からプランを練っていきます」
「本来のターゲットとは違う」などの理由から、LGBTの結婚式を受け入れない式場は少なくない。そんな中、桜井さんが願いの宮の桃山さんと出会えたのは、幸運なことだったという。
桃山さんは、桜井さんの企画した「レインボーフェスタ!」のステージ上での神前式で、神主を務めたこともあるそうだ。
「神前式は屋内で行われるのが一般的。それにもかかわらず、野外のステージで行うという企画は、桃山さんの懐の深さがあって実現できたんです」
桃山さん自身、普段多くの悩み相談を受ける中で、自分のセクシャリティについて悩む人をたくさん見てきたという。
「誰にも打ち明けられない、家族にすら言えない、自分が当事者だと認めたくない…そんな方々の話をたくさん聞きました。異性婚やLGBTなどにとらわれず、すべての人が満足できる結婚式を行ってほしい。そんな思いで神前式に取り組んでいます」(桃山さん)
2015年の東京都世田谷区、渋谷区を皮切りに、現在続々と「同性パートナーシップ制度」を設ける自治体が増えている。異性間の婚姻制度のような法的効力はないが、「誰かに認められる」というだけでパートナーの強みになることに違いはないだろう。
「ここ数年で、LGBTの知識が広く認知されてきましたね。LGBTを受け入れる結婚式場も増えてきました。僕は、別にLGBTを特別視してほしいわけではありません。マジョリティの人たちと同じように考えてほしいだけ。それに、LGBTに限らずどんな人でもあらゆる側面でマイノリティになり得るのです。どんな価値観にも一人ひとりが『それいいね』『おもしろいね』というだけで、優しい世界が生まれると思います」(桜井さん)
(まいどなニュース特約・桑田 萌)