新聞紙の中で失われそうだった3つの命を保護 築150年の古民家ではぐくむ、穏やかな「猫との暮らし」
築150年の歴史を持つ、茅葺き屋根の古民家。ここで、伸び伸びと暮らしているのは3匹の保護猫たち。ゴロくん(黒猫)、トラコちゃん(キジトラ)、ムーくん(キジトラ)は飼い主のanninn30さんと共に、「今」を楽しみながら生きています。
■新聞紙の中で尽きそうだった小さな命
ゴロくんとトラコちゃんは、沼釣りに行った飼い主さんの家族が発見した子たち。「近くでミャーと鳴き声が聞こえたので確認してみると、新聞紙に包まれて3匹の子猫が捨てられていたそうです」
猫たちはまだ目も開いておらず、頭のサイズはピンポン玉ほど。耳の位置が真横だったことからも、生まれて間もないことがうかがえました。
小さな体を震わせながら寄り添っていた3匹は、そのまま飼い主さん宅へ。まだ離乳していない3匹に飼い主さん家族は「ゴロ」「トラコ」「チャメ」という名前を授け、24時間体制でお世話。スポイトを使ってミルクを飲ませたり、排便を促すためにおしりを刺激したりし、必死に命を紡ごうとしました。
中でも一番心配だったのが、のんびりとした性格で慎重派のトラコちゃん。
なかなかミルクを飲んでくれず、動きがゆっくりであるがゆえにゴロくんにご飯を食べられてしまうことがあったため、飼い主さんは「ちゃんと大きくなれるのだろうか」と思っていたそう。
しかし、そんな不安を跳ね返すかのようにトラコちゃんはスクスクと成長。3匹のきょうだい猫たちは、愛くるしい姿をたくさん見せてくれるようになりました。
残念ながら、チャメちゃんは大人になってから病気を患い、命を落としてしまいましたが、新聞紙の中ではなく最期まで愛され、大切に思われながらニャン生を終えることができたのはチャメちゃんにとって、とても意味があることだったように感じられます。
■やんちゃな新入り猫が家族に仲間入り
チャメちゃん亡き後、家族の仲間入りを果たしたのが、やんちゃな性格のムーくん。
親分肌のゴロくんはすぐにムーくんを受け入れ、面倒を見るようになりました。
そして、平和を愛するトラコちゃんもムーくんを家族として認定。現在、ムーくんはゴロくんを師匠とし、猫としての在り方や社会性を勉強しています。
3匹の猫たちは都会の喧騒から離れた、自然豊かな土地で自由気ままな生活を満喫中。「トラコちゃんはおうちが大好きなので、ほぼ家にいます。ムーくんも家の敷地から出ることはありませんが、お庭にいる犬のランディーちゃんのところへ遊びにいったり、木登りを楽しんだりと活動的に過ごしています」
一方、ゴロくんは畑仕事についていき、一輪車に乗りたがったり、作業を観察していたりするのだとか。「お庭を散歩し、岩の上でくつろいでいることもよくあります。隣の家の猫ちゃんと遊んでいる姿も見かけますね」
猫たちは人が入れない屋根裏から出入りすることも。飼い主さんは猫たちの健康や安全に配慮しつつ、交通量が少なく、都会の喧騒から離れた自然豊かなこの地で共に田舎暮らしを謳歌しています。
「この古民家は先祖代々、受け継いできました。うちに来たことで猫たちが短すぎる生涯をひっそりと終えるのではなく、のびのびいきいきして過ごしていることが何より嬉しいです」
開放的な作りなので、冬は寒いと感じることもあるけれど、その分、猫たちが寄ってきてくれるので飼い主としてはモフモフを満喫できて幸せいっぱい。そう語る飼い主さんのそばで3匹の猫たちは亡くなったチャメちゃんの分まで、ニャン生を満喫中。
穏やかなその日常には、優しい時間が流れています。
(愛玩動物飼養管理士・古川 諭香)