九死に一生! マンション4階から転落した猫 複雑な手術が必要だったが、支援の輪が広がった
ベンガル猫の榎(えのき)くんは今年6月、“九死に一生”の経験をしました。マンション4階のベランダから転落したのです。
「ちょうど日付が変わる頃、外は雷が鳴っていました。仕事をしていてふと気づくと、えのくんがいない。部屋中探してもどこにもいなくて…一緒に飼っている椛(もみじ)の鳴き声が外から聞こえてきたんです。網戸が開いていました。慌ててベランダへ出ると、いつもと違う、叫ぶようなえのくんの声が下から聞こえました。すぐ見に行くと、1階の部屋の軒下、すのこのような上にえのくんがいて、下半身の下には血だまりができていました」
当日の緊迫した様子を話してくれたのは飼い主の喜岡桜さんです。愛猫たちに「木へん」の名前を付けたのは、「きょうだいのようになりたいと思ったから」(喜岡さん)。もともと椛ちゃんを飼っていたのですが、仕事でお留守番が多く、2匹目を考えていたときのこと。あるペットショップのHPに椛ちゃんとそっくりなベンガル猫の写真を見つけました。それが榎くんです。会いに行き、調べてもらうとブリーダーが同じでした。道理で似ているはずです。その日はそのまま帰りましたが、しばらくして再訪すると…。
「店頭にいなくて、あの子は?と聞くと、病気でショップの裏にいると。発熱と口内炎があるということでした。ベンガルは珍しいから割とすぐ家族が決まるのに、あの子はなかなか決まらないと聞いて、うちに来てもらうことにしたんです」(喜岡さん)
落下事件が起きたのは、それから約1年半後のことでした。
榎くんの鳴き叫ぶ声を聞いて、階段を駆け下りた喜岡さん。ベランダの真下から軒下へは自分で移動したようでした。少しでも安全な場所へ、という野生の本能でしょうか。
「病院で診察を受けて分かったことですが、ちゃんと足から着地はしたようなんです。血だまりができていたのも外傷ではなく、血尿が出たんだろうと」(喜岡さん)
さすが、猫!とはいえ4階から落ちたのです。その衝撃はすさまじく、最初に行った救急病院では、応急処置だけで6時間を要しました。
「肺が破れて空気が漏れていたのと、骨盤の複雑骨折、周辺の筋肉の挫傷・出血と、膀胱も挫傷していました」(喜岡さん)
救急病院には入院施設がないため改めてかかりつけ医に行くと、即入院。「まず肺の治療が優先で、穴がふさがらないと心臓に負担が掛かるから骨折箇所にボルトを入れる手術もできないと言われました」(喜岡さん)。幸い、5日ほどで手術の見通しが立ち、今度は高度2次以上の病院へ。骨盤4カ所の骨折と左脚の骨が一部割れており、1週間後に手術することになりました。
「かかりつけの病院に入院していたときはごはんも食べられなくて、点滴で栄養を入れていたんです。でも、うちに帰ってくると見違えるほど元気になって、下半身を引きずるようにして動き回るし、たまに立ち上がろうとしてバタッと倒れるし。目が離せませんでした。自力での排泄・排便は難しいかもと言われていましたが、トイレで立たせてあげると自分で出せたので、それはよかったです」(喜岡さん)
1週間後の手術は無事に成功。エリカラにギプス姿で帰ってきた榎くんはしばらく介護が必要でしたが、1カ月半ほどで筋肉も戻り、心配された後遺症もなく、ジャンプ力は以前より落ちたものの、今では椛ちゃんと一緒に部屋の中を元気に走り回っています。
救急病院の受診、かかりつけ医での入院、高度2次医療病院での大手術に加え、当時は車を持っていなかったため、タクシー代やレンタカー代も掛かりました。総額約100万円!幸いだったのはペット保険で一部が賄われたことです。
「ショップで病気をしていたので、この子は保険に入っておいたほうがいいだろうなと思ったんです。あと、インスタでえのくんの様子を投稿していたら、フォロワーさんたちが支援を申し出てくださいました」(喜岡さん)
喜岡さんは猫用の首輪やおもちゃを手作りしてインターネット販売しているのですが、それらを購入することで支援してくださる方たちが現れたのです。中には多くのフォロワーを持つ人もいて、その人が発信してくれたことで支援の輪が広がったのだとか。
「私の体調を心配して、栄養ドリンクやコロナ対策にとマスクを送ってくださる方もいました。本当にうれしかったですね」(喜岡さん)
「榎」の花言葉は「共存共栄」や「支え合い」。喜岡さんはそれを知って名付けていました。
「神社の御神木にもなっていて、“ご縁の木”とも呼ばれるそうなんです。今回のことでたくさんの方に支えていただきましたし、ご縁もありました。榎という名前にして本当によかったです」(喜岡さん)
(まいどなニュース特約・岡部 充代)