あみだくじのようなキャットウォーク、専用ロフトにトンネル…猫と人が笑顔で過ごす「にゃんだふるハウス」
こんな家なら、猫も人も笑顔で暮らせそう。iihitsujiさん(@iihitsuji)が建てた「にゃんだふるハウス」には、そう思わせる魅力がたくさん。iihitsujiさんはこだわりをたくさん盛り込んだ、この注文住宅でりんりんちゃん、梅子ちゃん、海凜くん、珊瑚くんという4匹の猫たちと賑やかな日々を送っています。
■多頭飼いならではなキャットウォークの工夫
iihitsujiさんはもともとメゾネットタイプのアパートに住んでいましたが、当時一緒に暮らしていたりんりんちゃんときょんきょんちゃんが家中を楽しそうに走り回る姿を見て、いっぱい走れる新築を建てようと決意。書籍や猫ブログを参考にしながら、猫が楽しめて安全管理や掃除などもしやすい家づくりのイメージを固めていきました。
ところが、いよいよ着工準備となった時、きょんきょんちゃんが猫白血病を発症。時間とお金を治療に割くことにし、工事は一時中断。残念ながら、きょんきょんちゃんは逝去。深い悲しみにくれたiihitsujiさんは体調を崩し、再び工事は延期に。にゃんだふるハウスが完成するまでには、2年もの月日がかかりました。
そんな出来事もあり、様々な思いが込められた自宅には猫を想うユニークな工夫が盛りだくさん。例えば、あみだくじのような梁ウォーク。
直線でないのは猫が同時に使用した際、通行止めや塞がりが発生しないようにするため。「キャットウォークは窓辺に作るか壁に寄せるか悩みましたが、間取り的に猫にも人にも都合がよさそうだと感じたので、梁を歩いてもらうことにしました。太い梁は構造上の梁、細いものは飾りの梁です」
梁の本数や場所は天井に頭をぶつけずに歩ける位置を計算してもらい、決めていきました。
「細かったり、高かったりしないかなと心配でしたが、意外と大丈夫でした。猫たちはあみだくじのようになっている部分は直角に曲がらず、斜めに突っ切っていきます(笑)」
■平屋でも階段遊びができるように本棚を活用
数多くのこだわりの中で、iihitsujiさんが最も気に入っているのは階段にもなってくれる本棚。
「メゾネットに住んでいたことから2階建てはもういいやと思っていたので、平屋にすることはすぐ決まりましたが、猫たちが大好きな階段遊びができなくなるのでどうにかしたいと考えた結果、本棚が階段になりました(笑)」
猫たちはこの本棚からリビングの天井までキャットウォークで歩いていき、梁ウォークへ移り、リビングを横断。本棚を上がった先にある小窓から、キッチンの様子を伺うこともあります。
「勢いよく階段を登ってもUターンしないとキャットウォークには行けないようにしてあるので、スピードを出しすぎる心配はありません」
なお、キャットウォークやキャットステップにはアパート時代に使用していたニトリのタイルカーペットを切って張り、滑り止めにしているそう。
「アパートのにおいがあれば、新居に慣れてくれやすいかもという期待もありました。敷いてあると爪が立つので、走りやすいみたいです」
■大工さん泣かせの「猫専用ロフト」とお気に入りスポットになった「猫トンネル」
iihitsujiさん宅には、なんと「猫専用ロフト」も!
これはキャットウォークと梁の高低差を埋めるために設けられたもの。「我が家はキャットウォークから振り返って一段飛ぶと天井の高さへ行き、そこからさらに飛ぶと梁に辿り着くので、天井の高さのところに猫専用ロフトを設けました。階段の踊り場のような感じです」
ロフトは梁側に壁があり狭かったため、大人の手が奥まで入らず、工事中、大工さん泣かせだったそう。しかし、実際に住んでみると隠れながら下を見下ろせるロフトは猫たちのお気に入りスポットに。
そして、おうちにはもうひとつ、猫たちの心をくすぐる仕掛けが。それが猫専用の出入り口である「猫トンネル」。
猫たちはこのトンネルを使い、自由に寝室やトイレなどへ行き来。「デメリットは玄関や窓を開ける時に猫を完全隔離できないこと。みんなを寝室に入れ、箱などでトンネルを塞いでいます」
猫トンネルは、ちょっとした隠れ家にもなっているよう。4匹の猫たちは階段の役目を果たしてくれる本棚と猫トンネルを上手く併用し、夜な夜な大運動会を楽しんでいるのだとか。
なお、iihitsujiさん宅ではベランダを完全に囲い、脱走防止対策を徹底。
にゃんだふるハウスにはいたるところに、猫の心身を守る工夫が盛り込まれているようです。
■メインテーマを明確にした家づくりを
しかし、どれほど熟考しても家は実際に住んでみると「想像とは違った…」と感じることが見えてくるもの。現に、iihitsujiさんにもいくつか心残りがあるようです。
「猫砂を保管するスペースを上手く確保できませんでした。人間用のトイレに猫トイレと猫砂をストックするつもりでしたが、ハウスメーカーへの伝え方が悪かったのか十分なスペースがなく、結局猫砂は物置に山積み。物置は広いのですが、トイレから離れているので少し不便です」
そして、小窓選びにも後悔が。「大きな窓には脱走防止のための網戸を自分で設置しましたが、小窓は既製品で対応したかった。最近の小窓は内側に網戸があるものが多く、網戸を開けないと窓が開けられないので、脱走してしまうのではとヒヤヒヤすることがあります」
また、猫たちがキャットウォークから思わぬところへ跳んでしまったり、大きくなった愛猫のジャンプ時の着地に耐え切れず、キャットステップが壊れてしまったりしたことも。
こうした経験をしたからこそ、iihitsujiさんはこれから猫と暮らせる共生住宅を建てようと考えている方に対し、こんなアドバイスを贈ります。「色々な情報を見ているとやりたいことが増えていきますが、どんな家にしたいか、猫とどんな暮らしをしたいか、猫に何をしてほしいかなど、メインテーマを決めておくといいと思います」
iihitsujiさん宅のメインテーマは、「猫が楽しいにゃんだふるハウス」。迷った時はどうしたら愛猫が楽しんでくれるか、何度も初心に返り、考えたと言います。
「とはいえ、人間の利便性も大切。ここは人間優先、ここは猫優先と分けて考えるのもあり。我が家も猫が立ち入り禁止の部屋が一室だけあります。その代わり他の部屋は、完全フリー。猫用トンネルを使えば、立ち止まることなく走り回れます」
猫と人、どちらか一方の快適さを優先した暮らしは一方がもどかしさや不満を感じてしまうこともあるもの。お互いが笑顔で暮らし続けるためにはまず、自分が望む猫ライフを具体的にしていき、取り入れたい工夫を考えていくことが大切です。
猫が猫らしく、人が人らしく暮らせるこだわり。それが、にゃんだふるハウスには盛り込まれています。
(愛玩動物飼養管理士・古川 諭香)