女子高生が、保護猫のボランティア団体を立ち上げ「殺処分を減らしたい」活動の思いを聞いた
「職場に目の開かない小さい子猫がいる。どうしたらいいのか分からないので助けてほしい」
9月下旬、そんなレスキュー依頼が全国でも珍しい高校生ボランティア団体「にゃんこおたすけ隊」(滋賀県草津市)代表の高校3年・鎌田優花さん(18歳)のところに入りました。駆け付けたところ、現場にいたのは2匹の子猫。依頼者の事情もあり、団体で子猫たちを保護し、引き取ることになりました。
保護した2匹は当時生後3日ほど。このうち1匹があまり元気がなく、翌日にへその緒が取れたばかり。その子猫が突然の血便・・・食欲も低下し、鎌田さんは病院に急いで足を運びました。
「病院で『弱ってるね』と告げられましたが、『私諦めたくないんです』と伝えたら、『その覚悟あるなら一緒に頑張ろう!』と言ってくださって。この子もこんなに頑張って生きているんだから全力でお世話をしたいと思いました」
これまでも目の開かない小さい子猫を保護した経験のある鎌田さん。容体が急変することも多く、ある程度体重が増えるまでは安心できないといいます。
「体調を崩した子猫は、そもそも親の初乳が飲めず免疫力がなかったためか、腸自体が荒れやすくなっていたのではないかと思います。おそらく腸の炎症から血便が出たのかと。そこで、ミルクを飲まなくなってしまうと脱水症状を起こすなどいつ命に関わってもおかしくない状態になってしまいます。ですので、点滴をお願いするなどほぼ毎日2回くらい病院に通い続けました」
鎌田さんの懸命な看病のおかげもあり、回復に向かっている子猫。男の子と分かり、「空明(くうめい)」くんと名付けられました。保護時は85グラムだった体重も、1週間ほどで100グラムを超えたそうです。
■保護活動のきっかけは、中学3年のとき捨てられた猫を拾ったこと
鎌田さんが保護活動に関心を持つようになったのは、中学3年生のとき。近所の駐車場に捨てられた猫を拾ったのがきっかけでした。
「猫がかわいそうだと思って、何も分からずに学校の帰り道にずっとご飯をあげていました。あるとき『(猫を)殺処分にするからいなくなるよ』と言われて…『殺処分って何だろう?』と思い調べたら、保健所など身近なところで罪のない動物たちの命が奪われることだと初めて知りました。そこで、急きょ猫を家に連れ帰ったんです」
それから犬猫などを収容する「滋賀県動物保護管理センター」(滋賀県湖南市)に足を運んで殺処分の現状などの話を聞いたり、保護団体の活動を手伝ったりといった活動を開始。さらに同じ志を持つ高校生と一緒に活動しようと2020年1月、賛同してくれた友人とともに学生中心の保護団体「にゃんこおたすけ隊」を立ち上げました。
現在のメンバーは14人。保護活動をはじめ、TNR(Trap/捕獲し、Neuter/不妊去勢手術を行い、Return/元の場所に戻す)の活動、動物愛護の啓発、保護猫の里親さんを探すため譲渡会の開催などに取り組んでいます。これまで保護した猫は70匹以上、TNRをした猫は120匹以上。運営費は支援金などでまかなうほか、不妊手術の費用に関してはどうぶつ基金のさくらねこ無料不妊手術事業を受けている病院を利用しているとのこと。ただ、学校に通いながらの活動のため、平日は預かりボランティアに授乳が必要な子猫などのお世話をお願いしているそうです。
「預かりボランティアの中には大人のボランティアさんの協力もあります。また、大人のボランティアさんのことをサポートメンバーといい、預かりのほか、搬送ボランティアなどのご協力をいただいております。搬送ボランティアの方々には捕獲器などを運んでもらったり、猫ちゃんを運んでもらったり。サポートメンバーなくしては、私たち学生団体は成り立ちません。本当に感謝しています」
鎌田さんが活動するのは主に放課後です。毎日学校帰りに地域を見回り、TNRで戻した猫たちの様子や不妊手術済みの印である耳先カットの野良猫がいないかどうかなどをチェック。いつもカバンにはキャットフードが入っているとか。学校帰りに保護現場に行く際には、ユニホームと捕獲器を持って行くことも。
また自身の部屋は保護部屋に。普通に生活を送りながら保護猫のお世話をしているといいます。そして、保護活動を始めるきっかけとなった猫のみーちゃんは今や先住猫。保護されてくる猫を静かに見守っています。
■殺処分される猫を減らすために、不妊手術を訴える
殺処分をされる不幸な猫たちを減らしたいという思いから始まった保護活動…学生中心の団体を立ち上げてから「やめたい」と思ったことも何度かあったという鎌田さん。それは、団体の活動を理解してもらえないことや代表としての責任感からでした。
「私たちの活動は、団体としての意見を聞いてもらって、どれだけ円滑に猫ちゃんを安全に保護できるような形で活動を進めていけるかが一番の課題だと思います。特にTNR活動というのは、地域の方の理解が必要です。そこで猫嫌いの方であったりとか、TNR活動の反対派の方たちと意見が対立してしまったとき、どういうふうにしたら、うまく伝わるんだろうと、本当に悩みました。学生という身分もあるので、『学生のくせに』とすごくバカにされたり…学生であることの難しさも感じたりしました。
また、寄付をしてくださる方がたくさんいるので、そこで支援金や物資をいただくというのはそれに見合うような活動をしなければならないというプレッシャーも。猫のことでというよりも、人との関係とか、自分の代表としての責任感というところに何回か押しつぶされそうになって、やめたいと思ったことが何回もあります」
でも、猫たちのことを思うと活動をやめることはできなかったという鎌田さん。活動を通じて訴えたいことをこう話します。
「保健所などで殺処分される猫の大半は乳飲み子、小さな子猫たちです。これ以上子猫が生まれないようにすることが殺処分数を減らすことにつながります。だからこそ、TNRをすることが重要だと思うのです。自分たちが今住んでいる地域で、例えば餌やりをしている猫ちゃんがいるとか。家によく来る猫ちゃんがいるとか。そんな子たちだけでも手術をしてもらうだけで野良猫の数は減っていきます。少しでも関心を持ってもらって、地域でTNR活動が進んでいけばいいなと思います。お近くの方であれば、私たち団体がサポートしますし、捕獲器の貸し出しなどもできます。活動を通じて、これからも不幸な猫を増やさないことを訴えていきたいです」
現在、鎌田さんは大学進学を考えており、受験勉強と両立しながら活動を続けています。進学後も、高校生ボランティア団体から学生ボランティア団体と名称を変えるとのことですが、これまで通り高校生を中心としたメンバーを募りながら活動を継続するそうです。
(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)