日本で唯一!サーバルキャットと触れ合える異色のカフェ 実は「保護活動」の拠点、オーナーに聞いた「次の一手」
大阪にサーバルキャットと触れ合えるフクロウカフェがあるという。サーバルキャット(以下、サーバル)といえば、さながら小型のヒョウを思わせる精悍な姿の大型猫。これまでにカフェのオーナーは8頭のサーバルを飼育してきたが、その中には昨年の動物愛護法改正の余波で行き場がなくなり、保護した子どもも含まれていたという。保護活動の拠点にもなっている異色のカフェを訪ねてみた。
大阪府堺市にある「フクロウCAFE Cure Owl」。お店の本来のコンセプトはフクロウカフェだが、堺市長が交付する「特定動物飼養・保管許可証」を取得してサーバルキャットも飼っている。オーナーの登田裕三さんに話を聞いた。
「もともと動物とかかわる仕事はしていなくて、ダイビングのインストラクターをやったり整骨院をやったりしていました。当時ペットで1羽だけ飼っていたフクロウをお客様に見せたら、皆さん大変喜ばれるわけです。それがきっかけで10年前、大阪・日本橋にフクロウカフェを開店しました。あるとき、フクロウの買い付けに行ったお店にいた年老いたサーバルキャットをペットとして買ったのが、サーバルとかかわった最初ですね」
サーバルキャットは、主にアフリカ大陸のサハラ砂漠以南に分布する大型の猫。ウサギやネズミなどの小動物を捕食するほか、ときには3メートルもジャンプして、飛んでいる鳥を捕まえるという。寿命は、飼育下で20年ていど、野生で10年ていどといわれている。
「自分でサーバルを飼ってみて分かったのは、動作が犬的なんです。棒を投げたら拾ってきます。イエネコは、やらないですよね。それから『お手』『おすわり』もします」
最初の1頭を買ったあとも1頭ずつ買い足して、8年ほどで7頭に増えた。保護した1頭を合わせて8頭飼っていたが、最近1頭を里子に出して、今はまた7頭になっている。お店で触れるのは生後8カ月のオス・メス2頭だけで、他の5頭は野性味が強すぎるため、お店に出していないという。
触ることができる2頭は、お店の奥にある飼育部屋にいた。そこへ案内され、ケージが開けられる。すぐに寄ってきてスリスリしてくる動作はまさに猫だ。人慣れしているせいか思いのほかおとなしく、時々「ふにゃっ」という鳴き声を出す。
■動物愛護法の改正で…
登田さんが初めてサーバルを買って、市の動物指導センターへ登録申請を出したとき『繁殖させない』という誓約書を書かされたという。以前からそんな制約があったのだ。
「でもブリーダーなら、その都度許可が必要ですけど繁殖させることができるので、ブリーダーをやろうと思っていたんです。ところが昨年、動物愛護法が改正されて、サーバルを含む特定動物をペットとして飼えなくなりました」
そんなとき、サーバルに子どもが生まれたけれど、役所から飼育の許可が出ず困り果てた飼い主が、横浜から伝手をたどって登田さんに保護を求めてきた。このとき保護したサーバルが8頭目だったというわけだ。
「サーバルの飼育が難しい最大の理由は、対応できる獣医が非常に少ないことです。うちからいちばん近い獣医さんでも、大阪市の本町に1人です。この先生が休みだったら、動物園に勤務する獣医さんに無理をいってお願いしています」
エサ代もかかりそうだが?
「うちでは一般的なキャットフードなので、1頭あたり月に1万円くらいです。肉を食べさせていたら、10万円単位にはなるでしょう」
■サーバルに触れるお店としては日本で唯一
国内でサーバルがいるお店は、登田さんが知る範囲では沖縄にある1軒の猫カフェだけで、柵とアクリル板越しの展示のみ。しかも法改正の前に手放したため、今はふつうの猫カフェになっているという。だからサーバルがいて、しかも触れるお店としては、登田さんのお店が日本で唯一だという。
フクロウカフェなので、もちろんフクロウがいる。取材に訪れたときは、3羽のフクロウが店番(?)をしていた。ほかに30羽以上いるという。
店頭にフクロウが3羽いるだけでもインパクトがあるのに、さらに異彩を放っているのが、機動戦士ガンダムに登場するザクの巨大フィギュアだ。高さ150cmくらいあるだろうか。
「10年ほど前に出た限定品です」
本棚に目をやると、少年マンガの単行本がぎっしり並んでいる。数えたことはないが、1万冊はくだらないという。お店にあるのは、ほんの一部だそうだ。
「ザクとマンガは、まったく個人的な趣味です」
昔からマンガ好きなので、同じ趣味をもつお客さんが来られたら想いを共有したり、気に入ったマンガを読んだりしてもらえたらいいと思っているそうだ。しかもザクのフィギュアは、もう十分楽しんだので、いずれオークションに出すつもりだという。
■災害時にはペットの避難所にもなる民泊を準備中
登田さんのお店には、サーバルとフクロウのほかに、ペットとしてフェネックとミーアキャットもいる。これまで、さぞかしいろんな動物を飼った経験がありそうだが、ほかに飼ったことがあるのはコモンマーモセットとピグミーマーモセットという、いずれも小型のサルぐらいだそうだ。
フクロウカフェを経営する傍ら、サーバルの保護活動にも取り組んでいる登田さん。8頭のサーバルを飼育していたことは、いわゆる「サーバル界」では知られている。そのため、サーバルに関して困りごとや保護の相談がよく寄せられるそうだ。
「事業者として許可を得て飼っている人が全国に15人くらいいるんですが、その人がいなくなったり飼えなくなったりしても、個人で飼えないから他人に譲れないのです。引き取り手がないために残念な結果にならないようにしたい。行き場をなくしそうなサーバルがいたら、動物園へつないであげることもできます」
そして今、庭付き一戸建ての家を改装して「動物と触れ合える民泊」の準備を進めていて、コロナ禍で延び延びになっているが11月以降のスタートを目指している。民泊に隣接して飼育スペースも設けるので、サーバルをあと5~6頭は受け入れられるという。
「民泊のお客さんに庭で動物たちと遊んでもらって、落としてもらったお金でサーバルをはじめ動物たちを養えるサイクルをつくろうとしています。もし自分がいなくなっても、ノウハウを引き継いだ人たちで保護活動を継続してもらえたらいいなと」
その民泊施設は、災害発生時には動物たちの避難場所にもなるそうだ。また就労支援の一環として、動物にエサをやったり散歩させたりする人を雇うことも計画しているという。
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【ふくろうカフェ Cure Owl(完全予約制)】
大阪府堺市堺区南旅篭町西1-1-10
予約はこちらまで 090-9623-7171
(まいどなニュース特約・平藤 清刀)