オンライン留学費、現地留学の5分の1 欠点は「辞めやすい」 10人いた生徒が3人に
新型コロナウイルスの世界的な流行が続く中、海外留学への門戸が閉ざされてしまった学生たちの間で、今だからこそできる「オンライン留学」が主流になりつつあります。日本にいながらにして、オンライン上で異国の授業を受けることができ、授業料も実際の留学よりも格安で、学位が得られる大学もあります。オンライン留学を経て、現在はベラルーシに移り住み、現地の大学に通う女子大学生(22)に、現地留学とオンライン留学の違いについて聞きました。
■コロナで渡航延期 軽い気持ちでオンライン留学に
神戸市外国語大4年でロシア語を専攻する女子大生(22)。今年9月から休学し、今は留学生としてロシアに隣接するベラルーシの大学で学んでいます。
留学については大学入学当初から想定し、4年生になる今年4月から休学して、1年弱の留学を予定していました。でも、留学を希望するほかの学生と同様、世界的なコロナ流行で、渡航できなくなりました。
仕方なく留学の延期を決めたころ、大学の先生からロシアの大学でオンライン留学ができることを知らされました。ロシアの大学はコロナで留学できない海外の学生たちに向けて、特別授業を開いており、外国語大の提携校だったため、無料で受講できるのも魅力でした。春休みのいい勉強になるかなという軽い気持ちで、2月から受講することを決めました。
■メリット:ネイティブとオンラインで会話、語学力アップ
日本とロシアでは6時間の時差があるため、ロシアの大学の授業は夕方以降。そのため、日本の大学で授業がある日でも、両立はできました。オンライン授業には、日本以外の国からも10人ほどが受講していました。バイトとの兼ね合いで、週3回、1回あたり1時間半、文法と会話を学ぶ授業を選択しました。
もちろん、外国語大でもロシア語の会話を学ぶ授業はありました。しかし、週1回しかなく、間違いを恐れて簡単な質問でも頭が真っ白になって、ロシア語が出てこないこともありました。でも、オンライン留学では、ロシア語しか通じない相手と必ず会話をしなくてはいけません。間違えてもいいから自分の気持ちをできるだけ文章にして伝えるよう心がけました。日本にいるのにロシア語を話す場をより多く設けることができたのは、最大のメリットでした。
宿題も大変な時は2時間以上かかることもありましたが、オンライン留学の期間である5月末までの約3カ月間だけで、自分でも実感できるくらいに語学の能力を伸ばすことができました。
■デメリット:授業以外で学ぶ機会なく、辞めやすい
今夏ごろには留学生の受け入れを再開する国も増え、9月からベラルーシに渡り、現地の大学で対面授業を受けています。「現地」と「オンライン」の両方の留学を経験してみて、オンライン留学のデメリットも見えてきました。
やはり、オンラインでは授業という決められた時間でしかネイティブに触れることができませんが、現地に来れば外食やスーパーなどでも学ぶ機会があります。先日も友達とカフェに行った際、店員から「水」という単語を、私が知らない愛称的な呼び方で使っていて、驚きました。町に出るだけでも勉強できるのは最大の魅力です。
また、オンライン留学は簡単に辞めることができます。実際、私が受けたオンライン留学では当初は約10人だった生徒が、3カ月後には私を含めて3人にまで減りました。高いモチベーションがないと続きません。
現地へ留学する前に、オンラインで経験できたことは自信につながりました。異言語を話すことが怖くないという状態で現地に行けたのは強みです。現地留学へのステップとして利用するのが一番いいのではないかと思います。
■費用:現地留学の5分の1以下
留学支援を手がける「留学ジャーナル」(東京都)によると、新型コロナが本格的に流行し始めた2020年4月ごろから、ロックダウンした海外の大学がオンライン留学のシステム整備を始めたといいます。留学ジャーナルが販売するプランは期間や種類はさまざまですが、語学学校の英語コースを1週間から学べるコースからあります。コロナ以前から留学生でもオンライン受講のみで学位を取得できる大学があり、ある程度の語学力がある学生には選択も可能です。
今年に入ってからはオンライン留学のハードルが下がってきたのか、留学ジャーナルには相談が増えてきているそうです。人気の国や都市は特になく、時差の影響で授業が受けやすい時間帯か、カリキュラム内容がしっかりしているか、などを重視して、選ぶ人が多いそうです。
そこで気になるのが費用面。留学ジャーナルによると、特定の語学学校への留学を例にあげると、1日あたり2時間強、平日の週5日の授業を受けるとすると、オンライン留学は約3万7000円。同じ学校が運営するアメリカ・サンディエゴ校で実際に留学すると、ホームステイ代を合わせて約20万円かかります。単純比較はできないもののオンライン留学では、現地留学に比べて5分の1以下に抑えることができます。また、航空券代や海外留学保険などの出費もかかりません。
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今後、海外渡航の制限がより一層緩和されることで、現地へ赴いて語学を学ぶ学生たちも増えてくることでしょう。しかし、オンライン留学には安価で気軽に取り組めるという利点があり、現地留学と合わせた“ハイブリット型”としても有効だと分かりました。コロナが収束しても、コロナ禍で生まれた新たな選択肢として、今後も残っていくのかもしれません。
(まいどなニュース特約・斉藤 絵美)