甲府の住宅放火、逮捕の19歳少年が逃走中に残した血痕は50代夫妻襲撃時の負傷か?小川氏が推測

 山梨県甲府市内で住宅が全焼し、住人の井上盛司さん夫妻とみられる遺体が見つかった放火事件で山梨県警南甲府署捜査本部は13日、井上さんの10代の娘2人のうち次女を背後から何らかの凶器で頭部を殴打し怪我を負わせたとする傷害容疑で、出頭した甲府市の少年(19)を逮捕した。捜査関係者によると、少年は「人を殺してしまった」「1人でやった」と供述しており、同県警では放火との関連があるとみて調べている。元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏はこの日、現場を取材し、当サイトに対して事件の詳しい状況や今後の焦点などを解説した。

 同県警の調べによると、12日午前3時45分ごろ、甲府市内で4人暮らしの井上さん宅に不審な男が侵入し、2階のベランダから逃げた娘が110番通報。その約5分後に出火して木造2階建て住宅が全焼した。現場から性別不明の2人の遺体が発見され、警察では50代の井上さん夫妻とみて調べている。娘2人のうち、1階で鉢合わせして襲われ、頭を負傷した次女は少年とは「面識がない」という。その後の調べで、少年が長女の知人であることが分かった。

 出火後、少年は逃げる途上で不審人物として警察官に呼び止められたが、そのまま逃走。12日午後7時ごろ、甲府市から離れた県内の当時無人だった駐在所を訪れ、自ら電話で警察に連絡した。捜査本部によると、少年は「間違いありません。1人でやった」と容疑を認め、放火への関与をほのめかしている。顔にやけどをし、指に骨折の疑いがあり、病院で治療を受けた。

 小川氏は「通常の火災とは違って、一箇所だけが強く燃えているのではなく、全体的に焼失している。また、非常に燃え方が強いといえる」と現場の状況から「油」を使ったことを指摘した。

 現場から約800メートル圏内の路上には少年のものと推測される血痕が付着していた。小川氏は「大通りではなく、住宅街の中を徒歩で逃走していることから、土地鑑がある人物であると考えられる」とし、少年が指を骨折していたことについては「凶器を手に持つと滑って自分もけがをする。路上に落ちた血痕も返り血ではなくて、負傷箇所から落ちた自分の血だということがいえる」と分析した。

 さらに、小川氏は現場を確認したことで「昨日の時点では、居直り強盗の可能性もあると考えていたが、現場に来て、これは泥棒が狙う家ではないと感じました。余りにも周辺からの視界がよすぎて、泥棒が好むような現場ではないと言えます」と補足した。

 今後の捜査ポイントについて、小川氏は「最大の点は動機ではあるが、他に、殺害されてから放火したのか、放火をしたことによって亡くなったのかも重要」と指摘。「捜査関係者に聞くと、ご遺体は顔の判別がつかないくらいの損傷だということです。器官に煤(すす)が残っているかどうかによって、詳細が分かる。その確認のために捜査に時間を要していると思われる。現場の土を分けて見ているが、これはどのあたりに油があるかを調べていると思われる」と付け加えた。

 少年が姉の知人であること、油がまかれている可能性が強いことから犯行には計画性がうかがえる。

 小川氏は「現場は都内よりは涼しいが、まだストーブを使う時期ではないことから、灯油などが自宅にあったとは考えにくいので、事前に凶器や油などを準備していた可能性がある。家を燃やすのは通常、証拠隠滅を図るため。司法解剖の結果を待つしかないが、現時点で、殺害後に火を付けた可能性が強いと思われる」と推測。「長女の知人なのか、知人以上なのかまだ詳細には分からないが、知人であることは間違いないということです」と補足した。

 近隣住民の証言によると「40か50、60代くらいの女性が『やめて、やめて』という声が繰り返し聞こえた」という。小川氏は「通常、被害者が複数いる場合、犯人は強い者から攻撃しますから、ご主人に対して犯行に及んでいる時に、奥様が『やめて』と声を上げたのではないか」と推察した。

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