「きれいに折れてるやん」34年前の悪夢の旧道を再訪 崖崩れに路肩崩壊「のっけから、ひどい道」
国道424号は紀伊半島西部を南北に、紀の川市と田辺市を繋いでいる一般国道です。総延長124.9km、1982年に国道に指定されました。2021年現在、ほぼ全線にわたって改良が進み、海南から金屋までなど一部の拡幅工事中の区間を除いて、概ね快適に走れる「国道らしい国道」です
■あの日転んだ場所を再訪してみたい
筆者がバイクに乗り始めて間もない頃。1987年4月のある週末に、バイクショップのツーリングで高野龍神スカイラインに行った帰り、当時まだ酷道だった国道424号で転倒、鎖骨を折るという痛い目に遭いました。
飛ばしていたとかではぜんぜん無く、一車線幅の急な下り坂をそろりそろりと下っていて、道路中央に溜まっていた砂利に乗り上げて滑ったのです。「なんか肩が痛い」と思いましたが、先導していたお店の人の「ちょっと手ぇ動かしてみ、うん、折れてはない。大丈夫!」という言葉に騙されて、そのまま西宮まで運転して帰りました。
翌日、念のためにかかりつけのお医者さんに行ったら、診察室に入るなり「ああ、きれいに折れてるやん」と言われて。後にも先にもバイクで骨折したのはこのときだけです。
転倒したのは有田川町宇井苔というところでした。ういこけ。初コケ。なんていうか、出来過ぎだと思います。ということで34年ぶりのリベンジ、今回は転ばない四輪車で「あの時」の現場を訪ねてみました。
■現在はトンネルが開通して旧道になっています
いきなり個人の黒歴史を語ってしまいましたが、国道424号。問題の箇所はその後まもなく、1993年に白馬トンネルが開通したことで「旧道」になっています。なのでいわゆる「酷道」には該当しませんが、ほんの二十数年前(ほんの?)までここが国道だった、ということでお楽しみ頂ければと思います。
阪和道を海南東ICで降りて、県道18号に左折、国道424号に入ります。道路の左端には「長尺車通行不可」「4t車以上通り抜けできません」の看板がいくつも立っています。この先、金屋までは国道424号に残された最後の(なのかな?)未改良山越え区間、ちょっと楽しくなってきました。
進んでいくと今度は「2t超車両通行止め」の看板。さっきは4tって言ってたのに、と3t車の人が困りそうです。その先は道路の拡幅工事中で、県道184号に迂回させられました。交通整理のガードマンは親切な人で、手描きの地図をくれたのですが、これがなかなか達筆(?)で解読困難でした。
さて、金屋を過ぎていよいよ今回の目的地、白馬トンネルの旧道です。快適な二車線の国道424号を行くと、左手に道の駅しらまの里があります。道の駅の敷地の端にコンクリート造りの建物があるのですが、ここには「宇井苔へき地集会所」という表札が出ています。そして、国道を隔てた対岸の斜面に、猛烈な傾斜の細い細い旧道がへばりつくように伸びているのです。
■一人だったら泣いてしまいそうな山道を…
修理川という、なんとなく意味深な名前の川を橋で渡って、いよいよ旧道に入ります。初っぱなから完全一車線、コンクリート舗装の上に砂利や落ち葉が覆っていて、もう普通のバイクでは通りたくない感じの道です。最初の左ヘアピンカーブを曲がると、見覚えのある景色。そうです、あの日ここで転んだのです。下界までほんの数百メートル、あとちょっと耐えてれば……、という辺りです。
昼なお暗い、一人だったら泣いてしまいそうな山道をどんどん登っていきます。時折ものすごく狭い行き合い用の待避所の看板があるくらいで、人の気配がありません。急カーブのところでちらちらっと見える路肩は、コンクリート舗装の下の土がごっそり無くなってる感じだったりします。
■通行止め、迂回路もまたひどい道
そんな道を20分ほど登り切ったところで十字路に出ました。交差しているのは白馬林道なんですが、この旧国道よりも少し広くて立派です。これを横切って旧国道の続きに入ります。「弥谷方面へは行けません(崩土のため)という表示がありましたが、通行止めでは無さそうなので、おそらくどこかへ抜けられるんだろうと進んでいきます。
十字路から先、さらに路面は荒れています。注意深く下っていくと、不意に国道424号のおにぎりマークが現れました。ここがかつて国道だった頃の名残がまだ残っていたのです。そしてその先、バリケードで通行止めになっていて、右手に分岐する道がありました。どうやらこれで抜けられるようです。
この道がくせ者でした。最初こそ狭いながらも整備された感じの路面だったのですが、ほどなく崖から崩れた土砂が覆っていたり、路肩が崩壊していたり、アスファルトからぼこぼこと下の岩が顔を出していたりという、大変な様相を呈するようになりました。がけくずれつうこうどめでげろのみち。思わず「おくのひど道」というフレーズが思い浮かぶ、そんな道でした。
白馬トンネルをくぐればたった5分の道のり。およそ1時間、酷道と戯れてしまいました。
(まいどなニュース特約・小嶋 あきら)