怖がりで、兄弟で独り取り残された子猫 急病で瀕死の姿に「留学はあきらめて、私が里親になる」結婚式も一緒に

■イケメン3兄弟カフェデビュー

うなぎちゃん( 11才・オス)は、2010年6月、山梨県にあるスポーツ公園で保護された。生後数週間で、3兄弟だった。犬猫合わせて100匹ほどいるシェルターに行き、2010年8月、横浜市の保護猫カフェミーシスで兄弟揃ってデビューした。横浜関内というオシャレな場所に似合うようなイケメン3兄弟が選ばれたという。

東京都に住む石川さんは、会社のスカラシップ留学が最終選考まで進んでいたので猫を飼う気は全くなかった。ただ、全ての猫が幸せになるために自分にできることをしようと、うなぎちゃんたちがいた保護猫カフェを手伝っていた。

■私が里親になる

2010年8月、山梨から車で運ばれてきた3兄弟。うなぎちゃんは中でも一番ビビリで、ソファの下に隠れていた。他の2匹は人懐っこく、人の首に乗ったり膝に乗ったり、すぐに里親が見つかっていなくなった。うなぎちゃんは、子猫なのに遊ぶこともなく、独り残され寂しそうにしていた。

ただ、うなぎちゃんは保護猫カフェ1番の食いしん坊で、ご飯をくれないお客様のところには行かず、ご飯をもらえるキッチンの入口ばかりにいた。「お腹すいた~」と、声を出さずに可愛くエアニャーをするので、石川さんはみんなには内緒でおやつをあげていた。

「後に、他のスタッフも『えっ?私もうなちゃんにおやつあげてた!』と告白。シフトでスタッフが変わるたびおやつをもらっていたことが発覚しました(笑)」

保護猫カフェの客で、アンパンマンのアニメーターが、「尻尾が長くてうなぎみたいだね~」と、うなぎと名付けたという。

うなぎちゃんはスタッフに懐き、フロアに出ないので、里親が見つかることなく12月になってしまった。

■慣れない環境に夜鳴き

2010年12月1日、石川さんが店頭でクリスマスツリーの飾りつけをしていたら、「うなぎがゼーゼーして死にそうだ!!」と他のスタッフが来た。慌ててフロアに戻ると、高熱で瀕死の状態だったので、すぐに病院に連れて行った。

「うなぎのぐったりした様子を見た時、『私が里親になろう』と決心して、翌日、退院したうなぎの里親になりたいと店長に言いました。留学はあきらめようと決めたら、スカラシップの最終選考に落ちたと連絡がきて、良かったと思いました」

一人暮らしの人の里親審査は厳しいが、うなぎちゃんはご飯の時しか人間に甘えないし、ひとりでいても大丈夫な性格だったので、OKしてくれたという。

猫カフェでは全く鳴かず、声を聞いたことはなかった。石川さんが里親になり、タクシーに乗せ家に向かいだすと「ニャーニャー」とずっと鳴き出してびっくりしたという。

家に着くと物陰に隠れていたが、ご飯を出すと食いしん坊なのですぐに出てきて食べた。

「うなぎは今まで30匹の猫と暮らしてきて、ゆっくりご飯を食べられなかったので、はじめて自分のお皿で、自分のペースで食べられたことが嬉しかったみたいです。意外とすぐソファの上に寝床を見つけ、くつろぎはじめました」

しかし、夜中になると仲間たちを探して「ニャーニャー」鳴き止まず、石川さんもどうしていいか分からず、ずっと起きてそばにいた。

■結婚式にも出席

石川さんは一人暮らしをするのは初めてで、仕事と家との往復の毎日だった。しかし、仕事も「うなぎちゃんのため」と思うと生き甲斐になった。休みなると旅行ばかり行っていたが、家でうなぎちゃんと過ごす時間がとても幸せだと感じるようになった。

2015年6月、猫好きの男性と結婚したが、石川さんにとってうなぎちゃんは大切な子供。自宅に友人のシェフを呼び、家族とうなぎと一緒に結婚式をしたという。

その後、2015年9月にはSNSでうなぎちゃんにそっくりな子猫の里親募集を見て家族に迎えることになり、はなびと名付けた。石川さんは3匹の猫を迎え、うなぎちゃんはいつのまにか「うなにぃ」としてみんなのよき兄貴となっていた。現在11才になったが、妹弟と走り回り、プロレスをし、食欲は相変わらず一番の食いしん坊、おやつおねだり隊長でもある。

(まいどなニュース特約・渡辺 陽)

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