戦隊ヒーローが乗るバイクのよう?災害現場でも活躍できる!3輪スクーター「サバイバル・モデル」提案
自然災害に備えて防災ツールの準備は必要ですが、いざというときに使えない、使い方がわからないというのでは困りますよね。10月20日~22日に東京ビッグサイトで開催された「危機管理産業展(RISCON TOKYO)2021」で、ヤマハ発動機が悪路対応防災コミューター「ラフロード トリシティ コンセプト」を発表し、防災ツールの日常使いを提案していました。
■ベースモデルのトリシティとの違いは?
ヤマハブースの出展テーマは「PLAY SURVIVE 遊んで 備える」で、「平時に楽しみ、有事に役立つ」という、新しいコンセプトを与えられたコミューターなのが「ラフロード トリシティ コンセプト」です。ベースモデルはフロント2輪スクーターの「TRICITY(トリシティ)125/155」です。
トリシティはヤマハ独自のLMW(Leaning Multi Wheel)テクノロジーが搭載されています。これはフロントが2輪でありながらも通常のバイクのようにリーン(傾斜)させて曲がることができ、左右のサスペンションはそれぞれ独立した動きをするため、運転操作はスクーターと同じでありながらも、安定感のある走りができるというもの。
コンセプトモデルでまず目を惹くのが派手なカラーリング。炎のような柄のオレンジとイエローは遠くからでも視認性が高く、車体には「SURVIVE」のロゴが。まるで戦隊ヒーローが乗るバイクのようです。
悪路走行でもタイヤが滑らないようにブロックタイヤに変更され、ホイールはノーマルに力強い加飾を施したものを使用。段差を乗り越えることを想定しているためサスペンションのストロークを長くして車高をアップさせています。フロントまわりにはガードパイプを装着することで、保護だけでなく転倒したときにバイクを掴むためのスタックバーとしても使え、リアシートには後席の人が掴みやすい大型のグラブバーも心強い味方になるでしょう。ハンドルには枝や飛び石が当たっても手を守るナックルガードも装備。
マフラーにつながるエキゾーストパイプに障害物が当たるのを保護するためアンダーガードを装備。またベースモデルのアンダーカウルは腹打ちする可能性もあるため取り外し、悪天候でも乗車姿勢を安定させるアンチスリップフットボードに変更。ボードに空いた複数の穴によって靴底に泥や雪が付いていても滑らないようになっています。
さらにリアには大型キャリアを装着することで左右、テールにバッグを3つ積載可能。災害時の単独行動は危険なためにタンデム走行もできるように2人乗れるだけのシート面積もしっかり確保されています。フロント、サイド、リアにはLEDフラッシュライトが点滅し、消防団や地域の見回りといった用途のために参考で警告灯とサイレン、スピーカーも装着されていました。
「ラフロード トリシティ コンセプト」は、安定感のある3輪スクーターをヘビーデューティーなオフロードバイク仕様にし、災害救助に必要な防災ツールをたくさん搭載可能で、2人乗りもしやすいため、普段の街乗りだけでなく防災ツールをキャンプギアに入れ替えればツーリングにも最適なバイクになるでしょう。
■災害時のバイクの機動性はセローで実証済み
ヤマハは「セロー250」をベースにした災害救援活動二輪車を開発・販売していて、東京電力リニューアルパワー松田事業所やKDDI、石巻赤十字病院が導入しています。
セローは35年間も販売されていたロングセラーモデルで、足つきの良さから初心者から上級者まで愛されていたオフロードバイク。
東京電力リニューアルパワー松田事業所では、静岡県小山町と神奈川県山北町、南足柄市、箱根町の1市3町内15カ所の水力発電所を管理していて、平常時は設備の点検・確認作業などの移動手段として使い、災害時には2輪車の機動性を活かし現場に真っ先に駆けつけるといった使い方をしています。
2019年10月の記録的な大雨を降らせた台風19号発生のときには、河川の増水により15カ所すべての発電所が自動停止。そのため発電設備や周辺状況の確認のためにセローのバイク隊が出動し、車で9時間かかったところをバイク隊はわずか3時間で戻ってこれたそうです。
車と比べてオフロードバイクは悪路走行においては圧倒的な機動力を誇るのですが、セローの場合はクラッチ操作があり、シートにまたぐことやライダーの運転技術も必要だという課題がありました。
そこで前2輪のスクーターであるトリシティであれば、乗る人を選ばずに安定した走行ができると考え、今回の「ラフロード トリシティ コンセプト」が誕生したのです。
セローはすでに生産終了していることもあり、今回のコンセプトモデルを展示して、反響が大きい場合は発売も十分に考えられるとヤマハのブース担当者は言っていました。装備品によっても違いますが、車両価格はベースモデルのセローよりも30~40%高いので、トリシティもそのくらいの価格で出ると予想できるでしょう。ヤマハが提案する「平時に楽しみ、有事に役立つ」という危機管理の考え方を具現化した「ラフロード トリシティ コンセプト」は、災害時だけでなく平時の街乗り、ツーリング、オフロード走行も楽しめそうですね。
(まいどなニュース特約・鈴木 博之)