巨大な掃除機みたい!高速道路のメンテナンスを救う新型「路面清掃車」登場 価格7000万円以上も省力化期待
車両前方に突き出した巨大なホース…実は車体全体が巨大な掃除機のようになっています。そんな見た目からインパクト絶大な新型「路面清掃車」が、高速道路の建設・管理技術に焦点をあてた「ハイウェイテクノフェア2021」で公開され、注目を集めました。海外の車両をベースに開発しされ、車両価格は7000万円以上…。しかし高速道路の維持・管理にまつわる「切実な課題」を解決する大きな期待を担っています。
開発したのはNEXCO中日本のグループ企業として、東名、新東名、圏央道などの維持修繕にかかわる「中日本ハイウェイ・メンテナンス東名株式会社」です。
高速道路では定期的に交通管理隊や清掃作業員が巡回して、路肩やガードレール脇に落ちているペットボトルなどのゴミを回収していますが、その量は年間約600トンにもなるそうです。近年は一部のドライバーがペットボトルに尿を入れて捨てているケースもあるといいます。
ゴミの回収作業は、いままではゴミを発見するたびに作業員が車両から降りてその都度回収していました。そのため、車両への乗り降りのときの安全確認が必要で、作業員に負担がかかっていました。また止まっている清掃車両に一般車が追突して、その衝撃で清掃車両が動いてしまい、運転手や前方で作業していた作業員が死傷するといった事故も発生していました。
そこで、車両から降りずにゴミを吸引できる路面清掃車が開発されたのです。
■作業員が路上に降りる回数を7割程度削減
今回の車両で特徴的なのが、車両前方から後方にのびるホースです。車両全体が巨大な掃除機になっていて、前方の吸引口からゴミを吸い上げ、キャビン後部にゴミを溜める仕組みです。吸引口のサイズは幅40センチ、高さ10センチで、吸引ホースの直径は20センチ。ゴミを溜めるホッパーの容量は2.3立方メートルで、最大積載量は800キロです。
回収できるゴミの種類は、路肩やガードレール脇に落ちているペットボトル、空き缶、ビニール、ゴム類など。吸引実績では700ミリリットルほど液体が入った、1リットルのペットボトルも吸引が可能でした。ただ吸引口よりも大きな物や、小さくても重量のあるもの(金属類)、動物の死骸は吸引できないため、これまで通り作業員が車両から降りて人力で回収し、キャビン後部にある回収スペースに積み込みます。
ベース車両となったのはドイツHako社のプロフェッショナル・マルチパーパス・ビークル(多目的作業車)のマルチカー「M31」。それを飛鳥特装株式会社が日本の高速道路専用にカスタマイズしました。
マルチパーパス・ビークルとは多目的な用途に対応した車のことで、ピックアップトラックやステーションワゴンなどをベースにし、いろいろなアタッチメントを追加することにより、清掃作業だけでなく、除雪、水撒き、芝刈り、高所作業など拡張性を与えられた車のことです。
このようなマルチパーパス・ビークルとしてはメルセデス・ベンツ社の「ウニモグ」という車が有名で、国内でもいろいろなアタッチメントを装着して高速道路、消防庁、機動隊でも活躍しています。ただウニモグと比べるとHako社のM31はボディサイズがかなり小さく全幅はわずか1.82メートルしかありません。
そのため高速道路の路肩での作業でも邪魔になりにくいというメリットがあります。小さい車体ながらも清掃車の後方には万が一の追突に備えて大きな追突緩衝装置(SAFETY BUMPER)が装着されていて、作業員の安全を確保。ホッパーのゴミを排出するときは追突緩衝装置を観音開きにします。
今回開発された新型車両によって、作業員が路上に降りる回数が7割程度削減でき、作業の省力化と作業員の安全確保といった課題をクリアしたそうです。
似たような路面清掃車は海外の市街地ではすでに活用されていたのですが、作業員が人力で回収した大きなゴミの積載スペースがないことに加え、高速走行ができないなどの課題があったため、日本向けに新たに開発されたとのことでした。
今後は試行導入として10月からC4圏央道、海老名ICから相模原IC間の路面清掃作業をして本格導入に向けた検証を進め、2023年度以降に車両の本格導入の予定とのことです。働くクルマが大好きな人にとっては気になるところですが、作業風景に遭遇しても脇見運転は危険なので絶対にしないでくださいね。
【新型路面清掃車のスペック】
車両サイズ:全長7.0メートル×全幅1.82メートル×全高2.53メートル
車両重量:5.7トン
吸引口サイズ:幅40センチ×高さ10センチ
吸引ホースサイズ:直径20センチ
ホッパー容量:2.3立方メートル
最大積載量:800キロ
(まいどなニュース特約・鈴木 博之)