「病気は断る理由にならない。うちに迎えよう」譲渡話が消えた三毛猫姉妹に親近感、かけがえのない家族に

あさりちゃん(1歳半・メス)としじみちゃん(1歳半・メス)は、2020年5月、生後1カ月くらいのときに保護された。ボランティアのところに母猫と子猫数匹がいるという連絡が入り、保護に向かったら、2階に玄関のある家の、階段下の物置にいたという。

母猫は捕獲機で、子猫は手づかみで保護した。その時、あさりちゃんかしじみちゃんが保護主に噛み付くくらい元気だったが、猫風邪がひどく、目はぐちゅぐちゅ、お腹からはコクシジウムも検出された。その後、治療をして元気になったので、里親を募集したという。

■コロナ自粛で「もう限界!」

神奈川県に住む田畑さんはとても猫が好きで、いつかまた猫を飼いたいと思っていた。次女も猫が好きで、ペットショップに行くたびに抱っこさせてもらっていたが、コロナでその機会もなくなってしまった。

田畑さんと二人の娘は、コロナの自粛で引きこもり生活を続けるのに嫌気がさして、本気で猫が飼いたいと思うようになった。しかし、夫はあまり猫が好きではなく、「飼うなら犬!」とずっと言っていた。

結局、昼間面倒をみるのは田畑さんなので、「飼うなら猫!」と話し合いをしていたが、ずっと平行線だった。ただ、ある時、田畑さんが子供を寝かしつけながらまだ仕事中の夫に、「もうほんとにコロナ勘弁だ。私にも癒しが欲しい。猫飼っていい?」とLINEを送ったところ、「いいよ~ただし保護猫ちゃんね!」と返信がきた。今までの話し合い(言い合い?)はなんだったのかというくらいあっさりOKをもらえた。

■人見知りの三毛猫姉妹

保護猫を探すといってもどう探したらいいのか分からなかったが、ジモティーに里親募集中の猫が掲載されていたことを思い出し、探し始めた。すぐに「この子たちがいい!」という子を見つけ、即連絡したが、既に里親候補が決まっていた。しかし、「他にも猫がいるので見に来ませんか?」と言われ、後日会いに行くことにした。

2020年8月5日、保護主の家に、田畑さんと夫と次女が行った。

「お見せしたかったのはこの子たちなんです」と見せてもらった猫は、三毛猫姉妹。とてもおびえた表情で、ケージの端っこで固まっていた。

「『うちに来たとして、この子たちは慣れるのだろうか』と思いました。昔、猫を飼っていたし、何回か猫を保護したこともありますが、あんなにおびえた顔をした猫は見たことがありません」

三毛猫姉妹は、お土産に持参したチュールをあげると、恐る恐るだったが食べて、そのあと猫じゃらしで遊んだ。田畑さんは、「多分大丈夫かな」と思った。

その後、最初にこの子がいい!と言っていた子猫がまだ保護主のところにいたので見せてもらった。あまりの可愛さに次女は、「この子がいい、この子がいい」と言い、帰宅しても「三毛ちゃんじゃない、あのかわいい子がいい」と駄々をこねた。

「もう今回はどの子ももらわない、お断りしよう」と、保護主に電話をしたら、「実はあの三毛ちゃんたちは他に里親さんが決まっていたのだけれど、1匹にてんかんのような症状がでて、里親さんが不安になってしまったので、譲渡できなくなったの」と言われた。

■病気は断る理由にならない

田畑家の長女は、先天性の遺伝子疾患で、さまざまな病気と障害を抱えているが、元気に一緒に暮らしている。 

「保護主さんからそのような話を聞いたら、なんだか一気に親近感が湧いて、すぐに夫に連絡しました。夫も同じく『病気だからって断る理由にはならない、うちに迎えよう』と言ってくれて、当時4歳だった次女にも丁寧に説明しました」

次女は、「うん!あの三毛ちゃんたち、うちにきてもらおう!」と言った。

8月8日、三毛猫姉妹を迎えたが、数日間ケージの中で固まっていた。ご飯も人がいると食べず、トイレもしなかった。ケージから出したら、目をつぶって寝たふりをしていたのか、怖くて動けなかったのか、特にしじみちゃんは大人しくしていた。

「一週間くらい経って、目の前でバクバクとご飯を食べてくれた時は、とても嬉しかったです」

しかし、それから数カ月は、せまい家具の下に隠れたり、逃げ回ったりして、田畑さんは、最初に思った「この子たちがうちに来たとして、慣れるのだろうか」という不安が何度も頭をよぎった。

名前は、娘たちがお腹にいた時に呼んでいた呼び名(胎児ネーム)にした。お姉ちゃんがしじみちゃん、妹があさりちゃんだ。

■成長を見守る喜び

あさりちゃんは、欲に負けてしまうマイペース猫。嫌なことがあっても眠かったら寝てしまう、遊びたくなったら遊ぶ、チュールは何をしていても飛んでくる。

しじみちゃんは、素直になれない甘えん坊。あさりちゃんに比べ、ものすごくビビリで、インターフォンが鳴ったらすぐさま逃げていく。甘えたいのに、素直に甘えられない、ツンデレ女子だ。

「家にきて数カ月、なかなか慣れてくれず、本当にうちに来たことがこの子たちにとって幸せだったのかなと思うこともありました。つかまえようとした時に、シャーと言いながらゲロのようなものを吐きかけられたこともあります。でも、ある時、いつものようになでていたら、ゴロゴロゴロゴロと喉を鳴らす音が聞こえてきて、顔を近づけて鼻にチュっとしてくれたんです」

「最初からものすごくなついている猫も可愛いけど、慣れていない保護猫を飼うと、ドキドキハラハラしながら成長を見ることができるし、いきなりズキューンと射抜かれることもあるのかと!これはたまりません!」

■なくてはならない存在

あさりちゃんとしじみちゃんがを迎えて1年あまり。2匹がいないと田畑家は家族が完成しないという。

夫は疲れて帰ってきても、必ず出迎えてくれるあさりちゃんとしじみちゃんにデレデレ。「俺は猫はあまり好きじゃない」と言っていた人はどこへやら。

娘はますます動物好きになり、進んで猫の世話をしてくれる。

田畑さんは、コロナ自粛でイライラが募っていたが、あさりちゃんとしじみちゃんのおかげで少し和らいだように感じている。

「あさりとしじみのいない生活なんて想像もできません。あの時出会えて、縁あって我が家にきてくれて、本当にありがとうと毎日思います」

(まいどなニュース特約・渡辺 陽)

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