魚と一緒に漁港に捨てられていた子猫 目が不自由な兄猫に優しくしてもらったからか、後輩猫に恩返し

 兵庫県神戸市に住む原口友梨子さんの家には保護した猫たちのための「猫部屋」があり、今は12匹の猫たちと暮らしています。知人が引っ越しで飼えなくなった猫を引き取ったり、捨て猫を抱き困っている子供たちから譲り受けたり、地域猫として世話をしていた子猫が骨折しているのを見つけて家猫にしたり…経緯はさまざまですが、とにかく原口さんのもとには救いを求めるかのように猫たちが集まってくるのです。

■ 段ボール箱に子猫1匹と魚1匹

 15歳になるしじみちゃんもそうでした。2006年10月、原口さんが経営するお店のスタッフが、兵庫県明石市の林崎漁港で段ボール箱に入った子猫を発見。猫好きで知られ、すでに8匹の猫を飼っていた原口さんに相談の電話を掛けてきました。

「散歩中の犬がリードを引っ張るからついて行くと、そこに段ボール箱があって、子猫が1匹と同じ大きさの魚1匹が入っていたらしいんです(苦笑)」(原口さん)

 魚は子猫を捨てた人物が入れたのか、漁港の釣り人がかわいそうに思って“釣果”の中からおすそ分けしたのか…それは分かりませんが、原口さんはすぐ連れて来るよう伝えました。

 やって来たのはまだ離乳できていない子猫。原口さんは毎日お店に連れて行き、4時間置きにスタッフと交代でミルクをあげ、排泄も補助して育てました。しじみちゃんという名前は漁港にいたから、ではなく、「うちに来たときは何か黒っぽい“物体”のようで、まだら模様がしじみみたいだったから」(原口さん)だそうです。どのくらいの時間、段ボール箱に入っていたのかは不明ですが、健康状態は良好で、しじみちゃんはすくすく成長していきました。

■ 2代目たまちゃんとだけ仲良くなれた

 先住猫8匹とは「それなりにうまくやっていた」(原口さん)と言います。ただ、仲良くなれたのは2代目たまちゃんだけ。

「他の猫にはよく怒っていたけど、2代目たまちゃんには何をされても怒らなかった。たまちゃんが半年くらいお兄さんだったのかな。よく面倒を見てもらって、しじみも慕っていました」(原口さん)

 残念ながら2代目たまちゃんは若くして旅立ったそうで、しじみちゃんは信頼できる“アニキ”を失うことに。その後、次々と新しい猫が原口家に加わりましたが、しじみちゃんはニューフェイスを紹介されるといつも“シャーッ”。「母性は全然ないですね」と原口さんは笑います。

 そんなしじみちゃんが唯一、受け入れているのが、ぶどうちゃんという片目が見えない猫です。実は、2代目たまちゃんは保護される前、虐待を受けていたようで、目と体に接着剤がついた状態で小学生の男の子に拾われました。登校途中に見つけ、そのときは何もできなかったものの、気になって下校時に戻ってみると、同じ場所にうずくまっていたそうです。

「その男の子は助けを求めてペットショップに行ったんですけど、けんもほろろ。たまたまそこにいた私が引き受けました」(原口さん)

 体の接着剤は毛を刈ることで取れましたが、目は無理やり開くわけにいかず、去勢手術で麻酔をかけたときに切開しました。

「幸い視力はありましたが、目やにがひどかったので1日6回、2種類の目薬をずっと差していました。そんな過去を持つ2代目たまちゃんによくしてもらったから、しじみは目が不自由なぶどうにだけ優しくしているのかもしれません」(原口さん)

 しじみちゃんなりの恩返しなのでしょうか。

(まいどなニュース特約・岡部 充代)

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