仕掛け罠で切断?後ろ足のない子猫 今では玄関で大好きな飼い主の帰りを待つお利口さん
後ろ足がない三毛猫のゆきちゃん(雌、推定8歳)は8年前の7月、東京都に住むふみさんのところにやって来ました。ふみさんの知人に保護されたといいます。
保護された場所は、千葉県内にある知人の職場。敷地内で知人が野良猫に餌をやっているところに、血を流しながら後ろ足を引きずる子猫が現われました。その子猫がゆきちゃんでした。ガリガリにやせ細っていて、後ろの両足がありませんでした。他の野良猫が残した餌を必死の形相で食べていたそうです。
「後ろの両足が切れてなくなっていて、出血もひどい子猫をかわいそうだと保護した知人。すぐに猫好きの私のところに持ってきたんです」
あまりにも悲惨な状態でほっとけなかったというふみさん。ゆきちゃんをかかりつけの動物病院に連れて行きました。ゆきちゃんは当時生後4カ月ほど。後ろの両足ともに同じところから切断されていたため、獣医師からは「畑を荒らすタヌキなどを捕まえようと仕掛けたわなにかかったのではないか」と言われました。そして、5日ほど入院。切れた足の部分を消毒してもらったほか、避妊手術、耳ダニやお腹の虫も駆除してもらいました。ゆきちゃんは元気になって退院できたといいます。
■認知症の先住猫がいたが…後ろ足のない三毛猫を飼うことを決意
しかし、当時ゆきちゃんを飼うことを迷っていたというふみさん。それは、おばあちゃん猫のトラコちゃんを飼っていたからです。トラコちゃんは認知症でした。
「トラコちゃんは、近くの駐輪場で真冬の寒い中、ぶるぶると震えながらじっとしていた猫です。かわいそうだったので保護して病院に連れて行きました。10歳を超えていた高齢猫でした。アメショだったのでどこかで飼われていたようでしたが、迷い猫の届出もなく、私が引き取りました。甲状腺の病気があり、徐々に頭もぼけてきてしまって…部屋のあっちこっちでおしっこやウンチをしたり、餌をあげても何度も欲しいとねだられたり。そんな状況で子猫を受け入れる自信がなく、子猫の里親さんを探そうと考えていました」
とはいえ、後ろ足のない子猫の里親が見つかるか不安だったというふみさん。そんなふうに悩んでいたふみさんの背中を押したのが、かかりつけの獣医師からの言葉でした。
「こんな足を切った子猫を助けたんだから、絶対いいことがある」
獣医師の言葉が胸に響き、ふみさんはゆきちゃんを飼うことを決意。おうちに迎えたといいます。ただ、おうちに迎えたばかりのころ、トラコちゃんのゆきちゃんに対する態度に困惑したことがあったそうです。
「認知症のトラコちゃんがゆきちゃんにちょっかいを出して意地悪するようになって。嫌がるゆきちゃんは、しばらく押し入れにこもり出てこなくなりました。夜中になってトラコちゃんが寝ているすきに、押し入れから出てきて、後ろ足を引きずりながら餌を食べたり、トイレをしたりして肩身の狭い思いをしていたんです。でも、2カ月ほど経ち、ゆきちゃんは押し入れから出てきました。肝が据わったのか、今度はトラコちゃんにちょっかいを出されても気にしなくなり、ひと安心しました」
それから1年後、トラコちゃんは虹の橋に渡りました。
◇ ◇
■余命1年と言われた震災猫は3年半生きた 今は三毛猫2匹と暮らす
トラコちゃんがこの世を去ってから数年後、ふみさんのおうちにやって来たのが長毛猫のゴージャスくん(雄)。千葉県内の公園でゆきちゃんを保護した知人が、具合が悪くなって行き倒れているゴージャスくんを発見しました。ふみさんが病院に連れて行ったところ、慢性腎不全の末期であと1年の命と宣告されたといいます。
「ゴージャスくんは、高齢猫でした。知人の話によると、東日本大震災で被災して仮設住宅に移った人が飼えなくなって、手放したという震災猫だと聞いています。どういういきさつで千葉県内の公園に来たかは定かではないのですが…飼われていたせいか、とても人懐っこくてボランティアさんたちの間でも人気があったそうです。獣医師さんから『あと1年の命』と言われ、点滴治療をしながら看護を尽くしました。今年7月に死去。私のところに来て3年半生きて頑張ってくれました」
現在、ふみさんのおうちにいるのは、ゆきちゃんと2年前にゴージャスくんがいた千葉県内の公園で保護された三毛猫のボケツンちゃん(雌、推定5歳)の2匹です。ボケツンちゃんも腎不全。野良猫時代が長かったせいか今だ懐かず、点滴の治療を拒否。薬をくだいて餌に混ぜると全く食べないといいます。
「ボケツンはゴージャスくんのように治療をさせてくれないので、どれくらい生きてくれるかどうか…今だに家庭内野良猫なんです。びびりで、触らせてくれません。ただ、ゆきちゃんと三毛猫同士気が合うようで、仲良くやっています。仕事から帰ってくると2匹とも玄関で並んで待っててくれて。とってもかわいい三毛猫コンビです。でも、ボケツンだけは帰宅するととても餌を欲しがるので、お腹を空かせて待っていただけかもしれませんが(笑)」
また、ボケツンちゃんと違って、ゆきちゃんは子猫のころにふみさんのところに来たからか、とても甘えん坊さんで抱っこされるのが大好き。高い所は登れませんが、後ろ足を引きずりながらも元気に過ごしています。
こうして猫たちとの出会いと別れを繰り返してきたというふみさん。小さいころから、家族が捨てられた猫を拾いかわいがっていた家庭で育ったといいます。
「猫はみんなかわいい。いろんな性格や鳴き声があって。なんで捨てられるのか、全く理解できません」
今は60代で一人暮らし。老人ホームに勤務しながら元保護猫たちの面倒を見ています。これから自分の身に何か起きたとしても、近所の猫仲間のボランティアさんに猫たちのことをお願いできるようにしているそうです。
(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)