「今年も年越しできそうですね」獣医師の言葉励みに 難病ガングリオシドーシスの猫に愛情注ぐ飼い主一家
埼玉県で暮らす3人の娘の母であるうしなおさんが2019年5月に子猫を用水路で救出した。だが、同年10月に獣医師から子猫は難病であると告げられた。当サイトは、ハルと名付けられた子猫(メス)とサポートするうしなおさん一家の話を『難病と闘う猫のハル 「ずっと元気でいてほしい」家族が一つとなって懸命の介護続ける』(2020年8月20日配信)と紹介した。それから1年以上経ったが、飼い主のうしなおさんから、ハルは“余命”を過ぎても必死で生き続けているという、うれしい連絡が届いた。
その難病の病名は「ガングリオシドーシス」。人間にもある病気だが、猫には珍しく、痩せ細り、全身硬直や痙攣発作、呼吸障害などの症状が出る。遺伝性の病気で、産まれて1年ぐらいしか生きられないという。ハルは耳が聞こえなくなり、寝たきりになったが、ずっとうしなおさんと娘たちが面倒を見てきた。うしなおさんにハルの近況を聞いた。
--一時は体重が2キロまで落ち、てんかん発作を繰り返し脳炎にかかったそうですね。
「今年8月くらいから顎の力が低下し、ご飯を食べなくなってしまいました。それから徐々に痩せていき、ある日よだれを垂らすようになりました。9月になると夜中から朝方にかけ、激しいてんかん発作が7回続き、暴れたりギャーギャーと悲鳴など今まで見たことない姿でした。もうダメかと思ってしまいました。脳炎を起こしていた早朝、すぐにかかりつけの先生に連絡をして、診てもらいました。てんかん薬をすぐに処方してもらい注射器で飲ませた後は発作はおさまりましたが、そのてんかん薬はとても苦いらしく、喉の奥に注入しなければならず、それはそれはとても大変でした」
--獣医師からはなんと言われましたか?
「てんかん発作薬を飲ませていたときは週に一度病院に通院していました。そのときは体重が2キロまで落ち、これ以上体重が落ちると本当にもう週末期です、と言われました。さすがにその時は覚悟しなくてはいけないと、家族はみんなそう思っていました」
--今も薬は服用を続けているのですか?
「今、飲んでいる薬はありません。10月に入ってから発情期がきたのですが…普通のメス猫は発情期になると食欲が低下するらしいのですが、ハルの場合は逆で発情期がくると食欲が凄いんです。それをきっかけに体重が戻りました。獣医師さんからは、発情期は猫にストレスを与えるなどあるので、避妊手術が望ましいのですが、全身麻酔に堪えられる身体ではないので、発情期が来ると食欲が増すなら『このまま行きましょう』と言われました」
--体重を落とさないようにするために、毎日の食事が大変ですね。
「カリカリ(ドライフード)も食べれなかった子がウェットタイプの柔らかいキャットフードとカリカリを混ぜて、一生懸命食べています。現在は回復し体重が、2.6キロまで増えました。好物は、やっぱりCIAOチュールですね」
--いまもハルのお世話は家族で分担を?
「長女は仕事の関係で、仕事先近くに引っ越ししました。次女は結婚してもうすぐ第1子が生まれます。私にとっては孫が誕生することになります。そういう状況ですから、社会人になった三女と私でお世話をしています。普段食事の係は、朝が三女、夜が私。オムツ交換は2人で。お尻が汚れシャンプーするのは私です。2人とも帰宅すると必ずハルを抱っこします、グルグル言いますよ」
--ハルは大事な家族の一員なのですね。
「治る病気ではないので、いつなんどきハルの身体に異変が起こるかわかりません。ハルが辛いときも寄り添い、ハルが安心して眠っているときも見守っていきたいです。娘たち2人が巣立っても、うちには人間の赤ちゃんがいる感覚です。ハルのおかげで毎日を忙しく過ごしております」
◇ ◇
ハルの存在は、長女、次女が巣立ち、寂しくなった一家を明るく照らし続けているようだ。先日、かかりつけの獣医師から「病気は重いですが、今年も年越しできそうですね」という言葉をもらったという。
(まいどなニュース・佐藤 利幸)