交通事故に遭い瀕死の重傷だった子猫、拾われて元気に 今では人間の「弟」にとって頼れる相棒

■顔面血だらけ、瀕死の猫

ひなたちゃん(3歳・オス)は、交通事故に遭って息も絶え絶えになっていたところを保護された。2018年9月10日、愛知県に住む浅井さんは体調が優れなかったため病院を受診、駐車場に向かって歩いていたら誰かが立ち止まって何かを拾い、木陰に置くのが目に留まった。さ最初は「タオルかな…?」と思ったが、なんとなく不審に思い、走ってその場に行ってみると、顔から出血し、ガリガリにやせ細った子猫がいた。

「息をするのもやっとという感じで、ピクリとも動きませんでした。病院に連れて行くためすぐに保護しました」

■先輩猫に見守られて

車に乗ってから動物病院を探したが、ちょうど昼休みの時間帯だったこともあり、診察してくれるところがなかなか見つからなかった。浅井さんは子猫が死んでしまうのではないかと思うと、心配でならなかった。泣きながら「がんばれ!がんばれ!」声をかけると、子猫は小さい声で「ニャア」と応えてくれた。浅井さんはその時、「この子の家族になりたい」と思ったという。

結局、遠方の動物病院に電話しても、お昼は手術の予定が詰まっていて診てもらえなかった。浅井さんは猫を飼っている職場の人が休みだったことを思い出し、「どこか診てくれる病院を知らないか」と電話してみた。浅井さんの体調が悪かったので、その人が子猫を預かり、車で1時間半ほどかかるかかりつけの動物病院に連れていってくれた。

獣医師によると、子猫は交通事故に遭ったようだった。右側の手足に麻痺があり、後遺症が残るかもしれなかった。顔に怪我をしていて口も開けられないような状態だったが、骨折していなかったのがせめてもの救いだった。

当時、浅井さんはペット不可の賃貸住宅に住んでいたので、子猫はそのまま職場の人が預かってくれた。状態が不安定だったので昼間は浅井さんの実家で様子を見て、夜は職場の人が動物病院に点滴に連れていくという日が4日ほど続いた。どうなることかと思ったが、先輩猫たちがずっとそばで見守ってくれたので、猫たちに任せることにしたという。

暑い夏の日に、焼けたコンクリートの上にいたひなたちゃん。身体はとても熱くなっていた。浅井さんは、おひさまを嫌がらない、ひなたぼっこが好きな子になってほしいと思い、この名前にしたという。

ひなたちゃんはみるみる元気になり、手脚の麻痺も残らず、元気に走り回れるようになった。

「人間で言う半側空間無視(左右いずれかにあるものが認識できない)の症状があり、お皿の右側だけごはんが残っていたり、物にぶつかったりします。おもちゃも右側にあると反応できませんが、かわいい個性だと思っています」

■お兄ちゃんになる

2カ月後、浅井さんは、ひなたちゃんと暮らすためにペットを飼える家に引っ越した。一緒に暮らし始めてからは、健康上の問題もなく、ただただ可愛かった。

「うちには猫がいなかったので最初は寂しそうにしていましたが、すぐに慣れました。私は当時妊娠していたのですが、胎動が分かるようになってからはお腹に顔をくっつけてみたり、手でツンツンしたりして楽しそうにしていました」

ひなたはとても優しい子で、人も猫も大好き。抱っこしてもらったり、長男と昼寝したりするのが好きだという。

「息子が生まれると、ひなたはとてもいいお兄ちゃんになりました。息子が赤ちゃんの時、泣いてるとすぐに私を呼びに来てくれたり、駆けつけてそばにいてくれたりしました。ハイハイして窓の方に行くと、ガラスにぶつからないように間に入って守ってくれたこともあります」

浅井さんの夫は海外赴任していたので、妊娠、出産、育児と息子が2歳になるまで、浅井さんはほぼ1人でがんばってきた。コロナ禍も重なる中、ひなたちゃんがいてくれたからがんばれたことが多く、とても頼りになったという。

「心を和ませてくれたひなたには、感謝しかありません」

(まいどなニュース特約・渡辺 陽)

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