豊洲へ市場が移転して3年…東京・築地のいま 飲食店支援のために生まれた「築地KATTE鍋」
かつて「東京の台所」とも言われた築地市場。3年前の2018年10月にその役割を果たし、市場が豊洲へと移転しました。移転前後、築地界隈の話はおおいに報道されたたものの、近年は豊洲市場がすっかり定着し、築地にまつわるニュースはあまり耳にしなくなりました。市場が去った後も、築地近隣には多くの小売店、卸売業者、飲食店がいまだ数多く残っていますが、この3年間でどんな変化があり、どんなことが起きているのでしょうか。奇しくも重なったコロナ禍による打撃はどれほどのものだったのでしょうか。
また、そんな中で登場した地域の飲食店を支援する取り組み「築地KATTE鍋」というもの。築地にあるサービスデザインを手掛ける会社・ニューロマジックが展開するサービスですが、「築地で今起きていること」「築地の苦悩や課題」と合わせて「築地KATTE鍋」の取り組みを同社のイノベーション担当執行役員・藤本さんと、築地・魚政の高崎さんに聞いてみました。
■豊洲に市場が移転してからは、毎日が『市場休み』のようになった築地
今から3年前、連日のように報道された築地から豊洲へと市場が移転する動きと、そこから考えられる様々な問題。完全に豊洲に市場が移転してからは、報道は年々減っていきましたが、その裏で築地界隈の人たちは様々な変化に翻弄される日々をおくっていたようです。
「築地市場は、最盛期には1日の入場者数が4万2千人を超え、訪日外国人の人気観光スポットでもありました。しかし、豊洲へと市場が移ってからは、飲食店の仕入れや、買い物客の足並みが遠のき、毎日が『市場休み』のような日々が続きました。
さらに2020年からはコロナ禍となり、築地近辺のサラリーマンさんもリモートワークとなり昼間のランチ客もめっきり減ってしまいました」(築地・魚政 高橋さん)
「築地に本社を持つ弊社でも地域に何か貢献できることがないかを考え、まず近隣の飲食店支援サービスを開始。この一環で、築地界隈の24店舗の商店の方々に協力していただくようになりました。今後も趣旨に賛同した商店の方が参加予定ですが、こういった取り組みに加え、なおかつ近隣の飲食店支援の効果も期待した『築地KATTE鍋』という鍋を販売するようにしました」(ニューロマジック 藤本さん)
具体的には築地の目利き衆がセレクトした旬の絶品鍋を通販で販売するというもので、これまでに「ほおばるブリしゃぶ」「天然とらふぐ鍋」「築地はしご鍋・とろけるタラ白子鍋」「はまぐりと新わかめのしゃぶしゃぶ」「17種春の魚河岸おでん盛り」「コク尽くし地鶏と合鴨のすき焼き」「新生姜香る鯨のはりはり鍋」「大人の海鮮BBQ」「炙り鱧出汁で味わう 鱧きのこ鍋」といった他ではなかなか味わうことができない鍋ばかりをプロデュース。この販売によって、築地界隈の商店、飲食店支援につなげるという試みなのだそうです。
■セットの全てを築地で厳選したもので構成した「築地KATTE鍋」
前述の通り、その季節ごとに様々な絶品鍋ばかりを展開してきた「築地KATTE鍋」ですが、この年末年始は冬の鍋の王様でもある「天然とらふぐ鍋」を展開するとのこと。主役のとらふぐはもちろん、旬の野菜、豆腐、薬味などに至るまで、全て築地で厳選したものなのだそうです。
「2022年の『ふく』を呼ぶような自慢のお鍋です。新しい年を、新たな気持ちで迎えるにふさわしい贅沢な美味しさが詰まっています。是非ご賞味ください」(築地・魚政 高橋さん)
■今後も築地の商店・飲食店を支援し続ける「築地KATTE鍋」の取り組み
「築地KATTE鍋」の「天然とらふぐ鍋」、実にさっぱりとした味わいで体が優しく温まるような印象を覚えました。同時に一つ一つの素材の良さを強く感じることができるもので、まさに築地ならではの鍋といって良いでしょう。鍋の後半でいただくお餅やそばなどもあり、満腹感も十分でした。
「築地の食の知識や信頼を全面にだせるよう、仕込み要らずでただシンプルに季節を感じられ美味しい鍋料理を追求しています。手間要らずで、ご家族やご友人との食の時間を楽しめると評判です。
今回の『天然とらふぐ鍋』だけでなく、今後も築地の商店・飲食店を支援できるような簡単で美味しい鍋を展開していきたいと考えています。食の街・築地の季節ごとに違う鍋料理を多くの方に味わっていただきたいですね」(ニューロマジック・藤本さん/築地・魚政 高橋さん)
昔ながらの風情を残す築地を、このまま後世に残っていくことを願うばかりですが、この「築地KATTE鍋」ような、様々な取り組みが増えると良いなと思いました。「築地KATTE鍋」の「天然とらふぐ鍋」は、コロナ禍の翻弄されたこの1年を癒してくれるような、本当に滋味深い味わいでした。是非チェックしてみてください!
(まいどなニュース特約・松田 義人)