「音楽のない世界はあり得ない」 コロナを乗り越え、プロもアマも障がい者も熱唱できる「歌謡祭」がスタート

 こんな日が戻って来るのを待っていた。この13日、コロナで活躍の場を失った歌手や発表の機会を奪われたカラオケ愛好家ら総勢120人が大阪・守口文化センター(エナジーホール)に集い、チャリティー歌謡祭が開かれた。主催者として音頭を取ったのは一般社団法人「日本アーティスト倶楽部」(光岡洋代表)。会場をのぞいてみると視覚障がい者の熱唱もあり、チャリティー企画てんこ盛りの心温まるイベントだった。

 歌う喜びがはじけた1日となった。午前11時に開演したイベントはトップバッター、三宅静夫さんの「魂」(北島三郎)でスタート。ゲスト歌手による歌謡ショーや新舞踊をはさみながら最終93人目の鬼龍院ヨネキチさんの「恋しくて」(BEGIN)と続き、午後7時半にお開きとなった。

 さすがに観客は150人程度と決して多くなく「黙観戦」を呼び掛ける中だったものの、歌う方も聴く方もステージに立っての熱唱を楽しんだ。関係者によるとコロナ前は、このような歌謡イベントは全国各地で頻繁に開催されていたとのことだったが、ほとんどの参加者にとって、このような本格的な舞台で歌うのは1年半ぶり。これまでのうっぷんを晴らすかのように、心なしかマイクを握る手にも力が入っているように映った。

 そんな中、兵庫県宍粟市の観光大使を務める歌手の奏みち子も特別な思い出で駆けつけた1人。というのも、デビュー公演がコロナにより延期となり、いわばこの日が初舞台のようなものだったからだ。

 「コロナでデビューも遅れ、挙げ句に安富町で予定していた初めての公演もキャンセル。せっかく自分でプロデュースまでしたのに歌えなくなってしまったんですよ」

 それだけに持ち歌「津軽三味線~夫婦応援歌」を歌い上げると感無量の様子。続いて神戸出身の歌手、西ルリエも同じように「1年半は歌う機会も場所もありませんでした」と話し、自曲「昔馴染みの縁やから」をしっとりと歌い終えた。

 今回の歌謡祭を主催したのは一般社団法人「日本アーティスト倶楽部」で代表を務めるのは歌手でもある光岡洋。組織そのものは立ち上げたばかりだが、趣旨として「コロナで世界はすっかり変わってしまったが、音楽や芸術のない世界はあり得ない。歌手同士はもちろん、他の分野のアーティストとも力を合わせ、もう一度立ち上がり、はばたけるようにしたい。その上で社会貢献できれば、と考えています」と話した。参加費を5000円の低額にしたのも幅広く参加してもらいたいがためだ。

 そんな思いを表すように歌謡祭には視覚障害者の方々も参加し、井上陽水の「夏の終わりのハーモニー」、やしきたかじんの「大阪恋物語」などを熱唱。その際には「上手すぎや!」とばかりに拍手喝采となる1コマもあった。

 さらに、会場前には協賛者による様々なブースを出展。参加者全員に対し、障害者作業所で作っている「YELL COFFEE」を2個ずつ土産として配った。また、盲導犬チャリティー基金や犬猫の殺処分ゼロを目指すための募金箱を設置。合わせてイベント参加費から小児がんと闘う施設の子供たちに文具をプレゼントする企画も実施された。

 「歌で恩返しし、社会貢献、地域貢献をしようじゃないか、という思いです。みんなでできることを少しずつやって、このようなイベントを定期的に開催できれば」と光岡代表。三方良しの心温まる歌謡イベントは、いまようやく一歩を踏み出したところだが、この先どんどん広がって行くような予感がする。

 なお、このイベントは守口市の「FM-HANAKO」も共催。毎週土曜日午後5時から光岡代表とともに歌手の蘭樹未季が「絆サンシャイン」にパーソナリティとして出演している。ちなみに開局は1993年7月。全国のローカルFM局では函館に続いて2番目に古い。

(まいどなニュース特約・山本 智行)

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