「なにあれ、野良犬?嫌やわ~」同じ飼い犬なのに…元野犬に浴びせられた心ない声に、応援メッセージ続々
「ドッグランや道でこんな犬いたら怖いですか?」というテロップを添え、TikTokに投稿されたある動画。
そこには、首輪と服を身に付け、元気にドッグランを駆け回る1匹の犬が映っています。「凛太郎」と名付けられたこの犬は、2年半前に動物管理センターから引き取られた元野犬。生後2カ月の子犬だった彼は、その日から飼い主さんの愛情を一身に受けてすくすくと育ちました。
ところがある日のお散歩中、すれ違いざまに悲しい声が聞こえてきたのだとか。
「なにあれ、野良犬?噛まれそう。嫌やわ~」
動画には「2年間お散歩練習がんばって、人に迷惑かけないように端っこ歩いてるだけなのにね。野良犬もおうちの子になれるよ」というコメントと共に、「怖がらせてごめんなさい」というテロップが。
この投稿を受けてコメント欄には、
「謝る必要ない」
「そんなこと無神経に言える人の方が逆に怖い」
「マナー守って散歩しているなら問題ない。どんなワンちゃんもかわいい」
「飼い主さんの大切な犬なんでしょ?誰かに愛されているなら立派な飼い犬だよ!」
「飼い主にとって犬種とか関係ない!可愛いし大切な家族ですよね」
と応援のメッセージが多数寄せられました。
「凛太郎は息子のような、旦那さんのような存在。大切な家族です」と話す飼い主(@rintaro0401)さんに、お散歩中の様子や、凛太郎君を迎えてからの日々について伺いました。
--お散歩中に聞こえてきた声、悲しいですね。どんな状況だったのですか?
車1台がギリギリ通れるくらいの道で端の方を歩いていたところ、道を挟んだ向かい側から柴犬を連れたご夫婦が歩いてきました。犬好きの凛太郎が近づかないようにリードを短く持ち、迷惑にならないように気をつけていたのですが、すれ違いざまに、「なにあれ、野良犬?噛まれそう。嫌やわ~」という声が聞こえてきたんです。ワンちゃんに挨拶をしたくて近づこうとする凛太郎のリードを引っ張っていたので、それが怖かったのかもしれません。
--その言葉が聞こえたとき、どんなお気持ちでしたか?
悲しかったのと同時に、「私の育て方がいけないのか?」と悩みました。これまでにも、お散歩中に凛太郎が座っているだけで、あからさまに一度立ち止まって避けられたり、ドッグランで他のワンちゃんに近づくと飼い主さんに嫌な顔をされたり…といったことが多々ありましたので。
--雑種犬というだけで、同じ飼い犬でも偏見にさらされるのですね。一方でコメント欄には、応援メッセージもたくさん寄せられました。
心優しいコメントばかりで救われました。「犬が嫌いな人もいる」という意見もありましたが、それは本当にその通りで、犬そのものを怖いと感じる人がいるのは仕方がないことだと思います。ただ今回は、お相手もワンちゃんをお散歩されていました。純血種やミックス犬はいいけれど、雑種犬は無理というのは差別だと感じます。こうしたことはなくなってほしいなと願います。
--凛太郎君との出会いについて教えてもらえますか?
高校を卒業したら犬を迎えたいと思っていて、里親サイトで凛太郎を見つけました。野犬から生まれ、乳離れのタイミングで子犬のみが収容されたようです。センターの収容期間が1週間しかないと知り、「こんなに可愛い子が殺処分になるなんて」とボランティアさんにご協力いただいてお迎えしました。
--お迎え当時の凛太郎君はどんな様子だったのでしょう?
とにかく怖がりで、迎えた当初は人がいる場所では怯えて動かず、壁に顔をうずめていました。主にお世話をしている私にも2~3カ月は慣れてくれず、私以外の家族は触れ合えるようになるまで1年近くかかりました。
--お散歩の練習も、2年かけてがんばったそうですね。
大きな音や車、初対面の人が苦手なので、外でのお散歩に慣れるには時間がかかりました。だけど凛太郎も、おうちの子になろうとがんばってくれた。突然大きな音などがすると今でも稀にパニックになりますが、基本はまっすぐ普通に歩けるようになりました。それでも念のため、人の少ない時間帯を選んでお散歩しています。
--お散歩自体は楽しめるようになりましたか?
はい!今ではお散歩もドッグランで遊ぶのも大好きです。両親にも高校生の弟にも慣れて、家では家族が大好きな甘えたさんです。
--うれしいこと、楽しいこと、大好きなこと、これからもいっぱい増えていくといいですね。
そうですね。毎日たくさんの時間を一緒に過ごして、もっともっとたくさんの楽しいことを凛太郎に経験させてあげたいと思います!
センターに収容された頃とは別犬のように、穏やかで安心した顔を見せるようになった凛太郎君。飼い主さんのTikTokやInstagramには、そんな凛太郎君の幸せそうな日常がたくさん投稿されています。たっぷりの愛情で包んでくれるご家族と一緒なら、きっとこれからも楽しい毎日を積み重ねていけるはず。偏見に負けず、どうかお幸せね、凛太郎君!
(まいどなニュース特約・鶴野 浩己)