新卒だと手取り15万円以下も!?臨床検査技師の収入事情 夜勤もオンコールもあって責任重いのに…待遇に悩みも
検査室に籠りがちで医師や看護師とのコミュニケーションが少ない、孤高の職人気質が多いという臨床検査技師。気になるお仕事の中身や収入について、フリーランスの臨床検査技師で「くまのこ検査技師塾」塾長の熊木裕輔氏(33歳)に聞く。
■昨今よく聞くあの検査も…臨床検査技師のお仕事
臨床検査技師とは、医師から指示を受け、採血や生物学的な諸検査を行い、適切な検査データを医師に提供する医療従事者のこと。医師はそのデータをもとに、患者の治療方針を決めるため、いうなれば「縁の下の力持ち」的な重要な役割。コロナ禍でよく耳にするようになったPCR検査を行うのも臨床検査技師だ。
臨床検査技師になるには、国家試験に合格して資格を得なければならない。
「国家資格を得るためのメインルートは、大学、短大、専門学校があります。また、大学を卒業したあと、大学院へ進む方もいます」
熊木さんは高校生のときに医療関係の道を志し、さまざまな職種を調べていくうちに臨床検査技師の存在を知ったという。技師歴は今年で11年。病院やクリニックに勤めた後、現在はフリーランスの臨床検査技師として活動している。
「まだまだ臨床検査技師のフリーランスは少ないと思いますが、レントゲン撮影を行う放射線技師はフリーランス人口が多く、ネットワーク構築もきちんとできている印象があります」
■相場のないフリーランスの報酬は上下の波が大きく
熊木さんはフリーランスだが、医療機関に勤める臨床検査技師の勤務体制はどうなっているのだろうか。
「朝出勤して夜に帰宅する日勤のほか、夜勤やオンコールがあります」
オンコールとは、夜勤とは違って帰宅はできるけれど、呼ばれたら対応しなければならない。深夜に病院へ出向くこともあるという。
「やりがいといえば、自分の検査データをもとに医師が治療方針を決める責任の大きさです」
プレッシャーもあるが、医療従事者として働いていることを実感するそうだ。
そのような勤務をこなす臨床検査技師の収入を訊いてみた。
「単純に臨床検査技師に絞れば、手取りで25万~35万円くらいでしょうか。仕事量や質を考えたら、見合っていないと感じることもあります」
新卒だと、手取り15万円以下という例も珍しくないそうだ。
「給料もほとんど経験年数で決まります。病院勤めだと、役職につかないと厳しいと思います」
一生懸命に努力しても、対価として報われにくいと嘆く。
ではフリーランスの場合はどうだろう。熊木さんはエコー検査をメインに仕事をこなすほか、クリニックに勤務していたときに事務長を兼務した経験を活かして「院内マネジメント」をやっている。
「依頼先から金額を提示される場合もありますが、いわゆる相場のような数字は難しいです。依頼先によって、報酬額にはかなりの差があります」
報酬額に大きな波があるのは、業界を問わずフリーランスの宿命かもしれない。
ちなみに熊木さんは、東京都との県境に近い埼玉県南部に在住し、奥さんと息子さんとの3人暮らし。来年2月にはもう1人生まれるそうで「フリーランスで、生活は成り立っています」という。
■検査が自動化されても…年収1千万も夢でなない
待遇が恵まれているとはいいがたい臨床検査技師のあり方を変えようと、熊木さんは今年1月から「くまのこ検査技師塾」を立ち上げて臨床検査技師同士の輪を繋げるコミュニティサロンを運営している。ベテランやフリーランスの臨床検査技師のほか、この仕事に関心をもつ学生や看護師など68人(2021年11月現在)が参加。オンラインでセミナーを開いたり、フリーランスを目指したい、あるいは転職を考えている技師のサポートを行ったりしている。
「まだまだマイナーな存在だと思うので、臨床検査技師の普及活動にも力を注ぎたいと思っています」
知識や技術と並んで、フリーランスとして疎かにできないのが「人の繋がり」だという。
「くまのこ検査技師塾が、臨床検査技師の輪を広げていける窓口になればいいなと思っています」
患者のために多くの職種とコミュニケーションをとってチームで輝ける技師が、熊木さんが理想とする臨床検査技師象だ。
最後に、臨床検査技師は今後、医療現場でどのような立場になっていくのか、展望と理想を尋ねた。
「これからは検査の自動化が進んでいきますから、配置スタッフの削減は否めません。ただ、臨床検査には、絶対に人の手を使わなければいけない部分が必ずあります」
これから臨床検査技師を目指す学生に対しては、
「いろいろなジャンルに対応できるスキル、そして、ひとつの分野のスペシャリストを目指してください。年収1千万は夢ではないと思っています。思い立ったら、まずアクションを起こしてみましょう!」としめくくった。
(まいどなニュース特約・平藤 清刀)