紙の「遅延証明書」がどんどん消える…もらうための「長蛇の列」は過去のものに 鉄道各社で進むペーパーレス化

近畿日本鉄道は11月1日、12月1日より駅での遅延証明書の配布を廃止することを発表しました。また阪急電鉄も12月1日から同じく紙の遅延証明書の配布廃止を決めました。これからは遅延証明書もペーパーレスの時代になります。

■最後の頼みの綱?遅延証明書

そもそも遅延証明書とは何でしょうか? 本当に効力がある書類なのでしょうか?。遅延証明書は鉄道会社やバス会社が自社が運営する列車・バスの遅延を公式に認める証明書です。証明書のレイアウトは各鉄道会社によって異なりますが、定義は共通しています。

ビジネスパーソンや学生は鉄道会社、バス会社が発行した遅延証明書を職場や学校に見せ、遅刻を回避しようと試みます。しかし職場での遅延証明書の効力には注意が必要です。

法律では労働をしていない時間は賃金が発生しないのが原則です。遅延証明書を見せても遅刻扱いになり、給料なしでも法律的には文句は言えない、ということになります。

もっとも、多くの企業では認められた遅延分を差っ引くことはありませんが、これはあくまでも会社側の判断という意識が大切です。

特に就職や転職により入社したばかりの場合は遅延証明書の取り扱いについて確認することをおすすめします。

またWeb遅延証明書の発行方法は鉄道会社によっても異なります。事故当日に慌てないためにも、鉄道会社のウェブサイトで遅延証明書の入手方法を確認しましょう。

■遅延証明書もペーパーレスに

JR各社や大手私鉄では以前からWebを使った遅延証明書の発行をスタートしていますが、今年になり関西ではWebに統一する動きが加速しています。

たとえば阪急では阪急電鉄公式ウェブサイトや11月1日から配信を開始したアプリ「阪急沿線アプリ」からWeb遅延証明書を発行できます。Webですと当然のことながら24時間いつでもアクセス可能。また過去45日分の始発から終電まで掲載され、2時間以上の運転見合わせ時に見合わせ時間が表示される仕組みになっています。

近鉄でも2014(平成26)年からWeb遅延証明書の発行を開始し、月間38000人が利用しているとのことです。また8月24日からはWeb遅延証明書の時間帯区分を2区分から4区分(初列車~9時、9時~12時、12時~17時、17時~終列車)になり、より使いやすくなりました。このように鉄道会社は遅延証明書を単にWeb化するのではなく、使いやすいものにするために創意工夫をしています。

■アフターコロナ時代の遅延証明書はどうなるのか

約10年前、筆者が学生バイトとして某大手私鉄の駅で働いていた時は「遅延証明書=朝ラッシュ時の風物詩」という印象がありました。感覚的に列車の遅延は朝ラッシュ時が多いということもありますが、通勤・通学に向かうビジネスパーソンや学生が一列に並び紙の遅延証明書を取る、といった光景を何回も見ました。

列に並ぶ時間がもったいなく思うと同時に、数分の遅延のために駅員に遅延証明書の発行をせがむ乗客も見かけ、前々から遅延証明書の在り方に疑問を持っていました。

Web遅延証明書の普及により列に並ぶロスが解消されるだけでなく、遅延証明書の発行をせがむ乗客もなくなることから、駅員の負担もいくぶんか減ると思います。遅延証明書を求めて一列に並ぶ、という光景は新型コロナウイルス感染症前の一風景として記憶に残ることでしょう。

(まいどなニュース特約・新田 浩之)

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