愛犬を亡くした夫婦のもとに、次々とやってきた保護猫たち イケメンからお嬢様まで…個性豊かな6匹との日々

愛犬を亡くした深い悲しみを癒すため、家族に迎えた1匹の子猫から始まったストーリー。その子が寂しくないようにと2匹目を迎えたところ、その後も不思議な縁で猫たちが次々とやってきて、今では6匹の猫と暮らしているという。個性豊かな猫たちが仲良く暮らす、にぎやかな「保護猫ライフ」とは。

■額の生え際が似ていたから、名前は「鶴瓶」に

奈良県御所市で納棺師をやりながら「びわの葉温熱療法講師」を営む、主婦の亀田空見(かめだ・くみ)さん。猫ちゃんたちとの出会いは、4年前にさかのぼる。16年連れ添った愛犬のソウ君を亡くして、空見さんは悲しみのどん底にいた。ソウ君にそっくりな人形までつくって、散歩で通った道を歩きながら泣き暮らす毎日だったという。

そんなある日、旦那さんが「知り合いのうちで、野良猫が子どもを生んだ。引き取る?」という話をもってきた。

「そのときは断ったつもりだったんですが……」

旦那さんが、イケメンで甘えん坊な子猫を連れて帰ってきた。

「悲しみからなかなか立ち直れずにいる私を見かねたのかも」

もともと動物が好きという空見さんは驚きながらも、すぐ「きゃわいー!」という感情が湧いてきた。

「ゲージもトイレも何も用意していなかったので、慌てて買いに走りました」

子猫は「鶴瓶」と名付けられ、空見さん夫婦の家族になった。

「柄が笑福亭鶴瓶さんの額の生え際のM字に似ているなぁと。多くの人から愛されている鶴瓶さんのお名前がいいよねーって、勝手にいただきました」

■ビビりの小瓶に、弱視の瓶くんも家族の一員に

鶴瓶を迎えてから2カ月ほど経って「1匹じゃ寂しいよね」と、ネットで里親募集サイトを見るようになったという空見さん。大阪府富田林市で保護された4姉弟の猫を見つけた。劣悪な環境に置かれ、白癬菌に感染して体毛が剥げてしまっていたが、手当の甲斐あって毛が生えそろってきたという情報が載っていた。

「そのうちの1匹が“ビビり”だという情報を見たんです」

ビビりとは、関西で「怖がり」を表す言葉。辛い日々を乗り越えたであろうこの子を、我が家に迎えたいと思ったそうだ。

「じつは、そのとき見た写真がめちゃくちゃブサイクで、それも興味が湧いた理由でもあります」

こうして「小瓶(こびん)」と名付けられた「ビビり」な男の子は、今では6匹の中でボス的なポジションにいる。

後日、小瓶を譲り受けた同じ保護活動家さんを訪ねたとき、目がほぼ見えない男の子がいた。弱視だという。それでも手探りで段差を越えようとしたり、障害物をよけたりする姿が愛らしくて、空見さんはすっかり心を奪われてしまった。

この子は「瓶(びん)」と名付けられ、今では空見さんの膝の上を定位置にしながら、よく動き回って活発な一面も見せているという。

■イタズラする直前にみつかった茶瓶と、アライグマにいじめられていた貯瓶

2020年7月のある朝、空見さんが外へ出たら、集積してあったゴミの上に、まるで「今からこのゴミを荒らすにゃ!」と言わんばかりの子猫がいた。空見さんと目が合っても「ヤバイ、見つかった」といった素振りを見せたが、逃げる様子はなかった。出会ったときから人懐っこく、捕獲機に入ってもごはんを完食。その後お皿の上にウンチまでしたという男の子だ。人を怖がらないマイペースで甘え上手なこの子は「茶瓶(ちゃびん)」と名付けられて、4匹目の家族になった。

それから5カ月経った12月、おそらく2~3歳と思われるオス猫が、自宅の庭に現れるようになった。もう大人だったので家には入れず、去勢手術をした後、外に寝床をつくってごはんをあげていた。

ところが防犯カメラに、他の野良猫に寝込みを襲われたり、アライグマにいじめられたりしている様子が記録されていた。空見さんの自宅周辺では、アライグマの親子連れやタヌキを見かけることがあるそうだ。

「去勢してリリースしていたので、もしかしたら野生の世界では弱いのかもしれないと感じました」

そこで今年7月、5匹目の家族になって「貯瓶(ちょびん)」と名付けられた。野良生活が長かったせいか人と距離を取るものの、最近では触らせてくれるようになったという。

「まだ抱っこは無理です。猫ちゃん同士では仲が良く、優しい子です」

■紅一点、末っ子の侶瓶(ろびん)ちゃんはお姫様オーラ全開!

今年8月、空見さんの自宅近くで、どこからか赤ちゃん猫の声が聞こえるようになった。ご近所の人たちも気づいて心配していた。

9月に入ると声が聞こえなくなり、最悪の事態を心配していたところ、近所にある倉庫の前で倒れている子猫を発見。弱々しい声を出したので、病院へ連れて行って保護したという。侶瓶と名付けられたこの子は、6匹の中で唯一の女の子だ。

「今はすっかり元気を取り戻して、お姫様オーラ全開です。5匹のお兄ちゃんたちも、この子にはメロメロです」

   ◇   ◇

こうして4年間で6匹を家族に迎えたが、保護猫を引き取るのは、この6匹で限度だという。

「今後同じようなご縁で保護した場合には、保護団体と連携を取って、里親を募集する予定です」

また、空見さんは人の命と日々向き合う納棺師という仕事柄、この子たちの最期も考えるという。

「看取るまでが飼い主の務めだと思っています。最後の1匹を見送るときまで、私たちも健康で暮らさないといけません。ペットと一緒にいることが、健康を保つ役に立っているのかもしれませんね」

ペットの最期を考えることを「縁起が悪い」と避けるのではなく、前向きに考えているそうだ。だが、それが現実になるのはまだ少し先のこと。亀田家の「瓶s」は、毎日元気いっぱい走り回っている。

(まいどなニュース特約・平藤 清刀)

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