物置にたった1匹でいた子猫 「出して~!遊んで~!」たまたま参加した譲渡会で運命の出会い

■民家の物置にいた子猫

しらすちゃん(2歳・オス)は、民家の物置の中にいたところ、レスキューの要請を受けたボランティアが保護した。子猫だったが、たった1匹でいたという。

静岡県に住む猿渡さんは、いとこが保護した捨て猫のいくらちゃんを飼っていたのだが、落ち着いてきたので2匹目を飼いたいと思っていた。いくらちゃんのごはんをペットショップに買いに行くと、たまたま譲渡会が開かれていたという。

「すぐに飼おうとは思っていなかったのですが、ちょっと覗いてみよう、と軽い気持ちで立ち寄りました。たくさんのケージが置いてあって、だいたいひとつのケージに2、3匹入っていました。1匹だけでケージにいる子がいたのですが、その子は1番大きな声で鳴いていて、ケージの間から手を伸ばしていたんです」

「出して~!遊んで~!」…猿渡さんには、子猫がそう訴えているように感じられた。

「やんちゃでかまってちゃん、そこがいくらとよく似ていたので気が合いそう!と思い、その場でトライアルの手続きをしました」

猿渡さんは、祖父の家で飼っていた猫たちが全員保護猫だったので、それが普通だと思っていた。かわいそうな子を助けたいという思いはもちろんだが、ミックスの猫が欲しいという気持ちもあったという。

「血統書付きの猫も可愛いけれど、ミックスはどんな種類が混ざってるのかな?とか大きくなるにつれて毛の色が変わったり毛の量が変わったり…そういう変化が楽しくて可愛い。それが保護猫を選んだ理由のひとつです」

■先住猫いくらちゃん、シャー!

トライアルの初日、先住猫のいくらちゃんはシャーシャー怒って警戒。しらすちゃんがいるケージに近寄らなかった。トイレはケージの近くに置いてあったので使えず、別の部屋にあるトイレに行っていた。

「それがかわいそうでトイレの位置を変えて、留守番のときはケージに布を掛けていました。その状態が3日ほど続いて…このまま慣れなかったらうちでこの子は飼えないなと悩んだし、不安でした」

しかし、いくらちゃんは4日目から少しずつケージに近付くようになり、その日の夜にはついにケージの目の前に。布は被せていなかったのでケージ越しにしらすちゃんと対面した。5日目にケージからしらすちゃんを出して会わせてみると、シャーシャーしたが手を出すことはなく、子猫に追いかけられたり追い返したりの運動会が始まった。

「これは大丈夫そう!と確信しました。その日の夜までにしらすを飼えるか連絡をくださいと言われていたので、すぐに譲渡をお願いしますと連絡をしました」

■猫だけど、人間の子どものよう

しらすちゃんはトライアルの間ずっと元気でご飯もりもり!何の心配もなかった。小柄な子だったので毎日体重測定をするのが大変だったが、手がかかったのはそれくらいだった。

好きな食べ物の中から名前を決めたのだが、いくらちゃんに合わせて海鮮物で3文字、「しらす」にした。

「黒い部分が多いのになんでしらす?とよく言われます(笑)」

猿渡家には3匹の猫がいるが、しらすちゃんは唯一のツンデレくん。甘えたいときはべったり、嫌なときは触ろうとしても逃げたり、名前を呼んでも無視したりする。人が苦手で、インターホンが鳴ったりお客さんが来たりするとベッドの下に隠れて出てこない。高いところが大好きで、冷蔵庫の上によく乗っている。

しらすちゃんが来てから猿渡さんの家族は、猫たちを人間の子どものように呼ぶようになった。

「長男、次男と言ったり、上の子、下の子と言ったり、もう人間の家族と一緒ですね」

(まいどなニュース特約・渡辺 陽)

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