コロナ第6波「来ると想定して準備をしておく」が必須 豊田真由子が欧州感染再拡大とGoToトラベルを考察<前編>

先週末、神戸で講演するために、東京駅で午前中に切符を購入しようとしたところ、なんと満席でした。これまでテレビ出演のために、よく大阪にうかがってきましたが、新幹線はいつもガラガラでした(もちろんそれも憂慮される事態です)ので、驚きました。

そして、「そうか、緊急事態宣言が解除され、新型コロナの状況も落ち着いている中で、紅葉の季節に観光に行く方が多いのだ」と気が付きました。

そして、もしこういった状況が続くのであれば、果たしてGoToトラベル等の喚起策は、今必要なのだろうか? また一方で、現在、欧州で問題になっているように、今後、仮に日本国内で感染再拡大が起こった場合、国民は再度の自粛生活を強いられることになってしまうのだろうかと、新幹線車内のたくさんのご家族やご友人同士の楽しそうな笑顔を見ながら(わたくしはひとりで出張でしたが…)、いろいろと考えました。欧州感染再拡大とGoToトラベルを考える、今回は前編。

■欧州、韓国でコロナ感染者が過去最多

現在、ドイツ、オランダ、オーストリア、ベルギー、韓国等では、コロナの感染者が過去最多を記録し、欧州各国でロックダウンやワクチン接種義務化等に抗議する大規模なデモが各地で起こり、警官との衝突などが起きています。

欧州での新規感染者急増の理由として、例えば、規制がほぼ撤廃され、マスク無しで大勢集まるイベント等も行われるようになった、抗体価が減少したブレイクスルー感染の増加、寒くなって室内かつ換気をしない環境が多くなった等、いろいろなことが言われますが、私は、こと新興感染症に関しては、「科学がなんでも完璧に説明できる」、そしてまた、「人間が自然を完全にコントロールできる」と考えることが、おそらくは正しくないと、ずっと思っています。

言えることは、「感染の波は繰り返し来る」そして、「収束には一定の時間がかかる」ということであり、それを前提にして、医療体制を確保し、感染防止策と社会経済活動の維持とを両立させていくという準備と心構えが大切だと思います。

「第6波が来るかどうか」ということでいえば、新興感染症対策は、危機管理の問題ですので、「来ると想定して準備をしておく」ことが、行政も個人も必須です。

ただし、だからといって、新型コロナ発生から2年近く経つ現時点において、これまでと同じ厳格な行動制限などの規制を繰り返すべきだとは思いません。

新興感染症対策というのは、ウイルスの性質などの解明状況、ワクチンや治療薬の開発・普及状況や、社会経済の状況、人々の覚悟や受け入れの程度といったことによって、柔軟に変えていくべきものです。これまでのように国民の行動や生活を大きく制限する形での感染拡大防止対策は、状況を見ながら柔軟に変えていく、という検討をする時期だと思います。

第5波では、感染者数は急増しましたが、感染者に占める重症者や死亡者の割合は、それまでと比して大きく減少しました。(もちろん、たとえおひとりであっても、それは耐え難い悲劇であり、その意味では「率の問題ではない」と、いつも思います。また、必要な医療が受けられずに亡くなるといったことは、絶対に避けなければなりません。)

ただ、重症化率・死亡率が下がっていても、極端に感染者が増えればやはり医療は逼迫しますし、ワクチン接種から時間が経ち抗体価が減少すること等で、入院者・重症者が増えるといったことも懸念されます。

欧州の例も参考に、当分の間は、マスクの装着を続ける、手洗いをするなど、感染しない・させないという意識を持ち、行動していただく必要があると思います。

第5波までの教訓も踏まえ、病床や人的スタッフ等の医療体制の準備は早急に行われるべきであり、それとともに、社会・経済・国民生活を停滞させることなく、どのように維持・発展させていくかという具体的方策を、政治、行政、国民それぞれの知恵を持ち寄り、今のうちに、考えておくべきであると思います。

◆豊田 真由子 1974年生まれ、千葉県船橋市出身。東京大学法学部を卒業後、厚生労働省に入省。ハーバード大学大学院へ国費留学、理学修士号(公衆衛生学)を取得。 医療、介護、福祉、保育、戦没者援護等、幅広い政策立案を担当し、金融庁にも出向。2009年、在ジュネーブ国際機関日本政府代表部一等書記官として、新型インフルエンザパンデミックにWHOとともに対処した。衆議院議員2期、文部科学大臣政務官、オリンピック・パラリンピック大臣政務官などを務めた。

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