大混乱のポーランド・ベラルーシ国境 旅行者にも厄介…強面の国境審査官に感じた、旧ソ連諸国との「壁」
現在、ポーランド・ベラルーシ国境にて難民問題による混乱が発生しています。実は筆者自身もポーランド・ベラルーシ国境で「ひやり」を体験しました。一旅行者の立場から両国の国境をお伝えします。
■何が起きているポーランド・ベラルーシ国境
最初にポーランドとベラルーシの位置と概略を確認します。ポーランドは中央ヨーロッパにあり、人口は約3800万人です。2004(平成16)年にEU(欧州連合)に加盟しましたが、ユーロは導入していません。
ベラルーシは1991(平成3)年にソビエト連邦から独立しました。ロシアの隣にあり、同国との結びつきが強いのが特徴です。人口は約940万人です。ベラルーシはEUやNATOに加盟せず、ルカシェンコ大統領が25年以上も権力の座に座っています。そのためEU諸国やアメリカとは基本的に対立関係にあります。
なおポーランド人もベラルーシ人もスラヴ民族ですが、前者は西スラヴ語群、後者は東スラヴ語群に属します。
イラクやシリアの人々はドイツに行きたいわけです。そこでEU諸国と比較すればビザが取りやすいベラルーシに行き、陸路でドイツを目指すことになりました。なおビザは滞在を前提としたものではありません。
11月上旬、数千人と言われる難民がポーランド・ベラルーシ国境に押し寄せましたが、本来の正規の越境ポイントではなく、森を抜けて不法入国しようとしました。しかもベラルーシの治安当局者がいたこともあり、一気にベラルーシへの疑念が高まりました。
ポーランド側は難民流入対策として、国境に有刺鉄線を構築。越境を試みる難民に対し、あらゆる手段を用いて押しとどめようとしています。このように両国の国境は緊張をはらみ、世界が注目するスポットになっています。
■日本人旅行者にとっても厄介な国境
難民問題で注目が集まっているポーランド・ベラルーシ陸上国境は日本人旅行者にとっても厄介な国境です。ポーランドはEU加盟国かつシェンゲン協定域内国です。同国への渡航に際しては180日間で90日以内の滞在であれば日本人はビザは必要ありません。またシェンゲン協定域内国から入国した場合は基本的にパスポートチェックもなく、実に快適です。
一方、ベラルーシへはロシア以外の国からミンスク空港経由の入国に限り、日本人はビザなしで30日以内の滞在が認められます。一方、ロシアから、もしくは隣国から陸上国境を通過して入国する場合はビザが必要です。しかも陸上でベラルーシを通過するだけでも通過ビザが求められます。
短期滞在が認められる観光ビザ(滞在10日以内)を取得するにはパスポートや申請書、海外旅行保険証書の他に現地ホテル発行の予約確認書を大使館に送ります。このうち、現地ホテル発行の予約確認書は予約サイト発行の書類はNGで、ホテル側の担当者のサインが必要です。筆者も観光ビザを取得しましたが、特に現地ホテル発行の予約確認書の入手に苦労しました。
このように難民とは逆コース(ポーランド→ベラルーシ)になりますが、注意が必要な越境ポイントに変わりはありません。
■ソビエト連邦をほうふつとさせる国境
筆者は2018年にドイツ・ベルリンからモスクワ行き列車に乗り、ポーランド・ベラルーシ国境を通過しました。ポーランド側の出国審査は記憶に残っていないほどあっさりしたものでした。
一方、ベラルーシ側の入国審査は緑色の制服を着た強面の女性国境審査官がパスポートを「これでもか」というぐらいにチェック。しかもベラルーシで宿泊するホテルの予約確認書の提示も求められました。
筆者はロシアなどの旧ソ連諸国に何回も訪問したことはありますが、入国審査でホテルの予約確認書の提示を求められたのは初でした。幸いかばんから出しやすい場所にあったので、すぐに提示できましたが、内心はものすごく緊張しました。
この緊張感を通じてEU諸国と旧ソ連諸国の間には見えない「壁」があることに気づかされることに。この時はまさか数年後に国際問題が起きるスポットになるとは思いませんでしたが。
(まいどなニュース特約・新田 浩之)